10歳差の王子様

めぇ

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第2章 碧斗、中学1年生。あさひ、社会人3年目。

6.

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「熱っ!」

「気を付けろよ、焼き立てなんだからっ」

さっそく食べようとしたあさひが熱々の焼き芋と戦ってる。それを見て兄貴がぬらしたおしぼりを渡していた。

あと家の前でたき火して焼くのかと思ったら家のレンジで温めるだけだった。焼き芋しようなんて言うから、庭でするのかと思っただろ!自宅かよ!テーブルに座ってただのおやつの時間じゃねぇか!

「あさひは変わらないな」

「あーっ、また笑った!」

焼き芋を口いっぱいに頬張りながらあさひがムッと目を細めた。

これと言って何かあるような会話じゃないはずなのに、どうしてにも2人の会話には入っていけなくてもくもくと焼き芋を食べるだけになってしまう。

あの時のオレンジジュースと一緒で。

「変わってるからね、ちゃんと!」

「どこが変わったんだよ?」

「毎日キレイに爪磨くようになったとか」

「確かにツルツルだな!」

最近のあさひはツメをキラキラさせるのにハマっていて、でも会社で派手な色は塗れないからってオイル?だかなんだかでピカピカにするのに必死になってる。そんなに磨いてどーすんだって思うけど、意外にも手は人に見られてるからってさ。

「そっか~、じゃあ指輪買ってやろうか?あの指輪。そんだけ手磨いてるなら」

「いらないし!くれるなら本物にしてよ」

「本物?」

「うん、大きなダイヤのついたやつ♡」

「俺の給料じゃあ無理だな、それは」

 

………は?何言ってんの?

 

なんだよそれ。

オレもいるのに2人だけで話しちゃってさ、何なんだよ。


オレもいるのにオレの知らない話するなよっ。

 

あの指輪って…

何だよ。


指輪の話なんか…!

 

もくもくと食べていた焼き芋も全然飲み込めなくて、ただ焼き芋を持つだけになってしまった。

 

あさひは兄貴のことが好きだったのかな?


オレが知らないだけで、好きだったんだろうか。



じゃあ、兄貴は…

どうなんだろう。


あさひのことどう思ってたんだろう?

 

「ねぇ碧斗、焼き芋に塩とバター付けるとお菓子みたいでおいしいよ!」

ぼーっとしてたオレにあさひがバターを見せた。そして有無を言わせないまま、食べかけの焼き芋の上に塩入りのバターを乗せた。

「食べてみて!」

言われるがまま一口かじった。

「…ほんとだ!うまっ!」

「でしょ!焼き芋と塩とバター!」

「なんだそりゃ、それはもっと他の言い回しはなかったのか…」

「拓海くんみたいに物知りじゃないの!」

「焼き芋と塩とバターってまんまか」

呆れた兄貴を見て、つんっとあさひが横を向いた。

「……。」

焼き芋と塩とバターはうまかった。

きっとあさひからしたら大発見だったんだよ、焼き芋と塩とバター。だから教えてくれたんだよ。

 

俺は将来絶対いい会社で働こう。

いっぱい稼いで、いつかあさひが喜ぶ大きなダイヤのついた指輪買ってあげるんだ。
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