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8章 幸せになろう
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しおりを挟むSide.ミラ
私は母から全てを聞いた。
彼は私の意思を尊重して放っておいてくれていた訳じゃなく、この一ヶ月ひたすら私のために動いてくれていた。それも世論を変えようとするだなんて信じられない程に規模の大きい事を、たった一人で果たそうとしていたのだ。
違う、私はそうしてもらうために出て行ったんじゃない。ミラ・イヴァンチスカという存在が周りにも自分自身にも足枷になってしまうのが耐えられなかったからだ。
その足枷はあまりにも重く、それを覆そうなんて思いもしなかった。だから逃げるという選択をしたのに、代わりに彼が行動を起こすなんて誰が予想出来ただろうか。
しかも相手は王族だ。彼が捕まってしまったらどうしよう。誰かに恨まれてしまったらどうしよう。あの人はあの暖かな場所で朗らかに笑っていてくれれば良かったのに。私が出て行かなければこんな事にはならなかった。
いや、私なんかと出会わなければ──
彼の話を聞きながら母に着飾られ、用意してくれたという馬車に乗って整理がつかないまま首都へやってきた。どこもかしこも花や色とりどりのガーランドで飾られていて、今日があの二人の結婚式だという事を知る。
馬車が止まると母に持参していたフードが着いたマントを着るように言われた。それを着て母に連れられどこかへ向かう。てっきり彼の所へ連れて行ってくれると思っていた私は、どんどん酷くなっていく人混みに困惑して母に思わず声をかけた。
「彼はどこなの?」
母は微笑むだけで何も言わなかった。何も分からない私は母に従うしかない。やがて首都の中で一番大きな広場に出た。ここはこれまで様々な催しが行われてきた場所で、今日は主役の二人が城から儀式様のランドー型馬車に乗ってこの広場にやってきて、ここでスピーチをする事になっているはずだ。二人を祝うために集まった沢山の人達がここに集まっている。
母は更にそこを掻き分け前に進んでいく。私は母の手を握り人にぶつかりながらも、何とか着いていった。そして母が足を止めたのは、ケビン様がスピーチを行う舞台にほど近い場所だった。
「ミラ…ごめんね」
突然母は悲しそうな表情でそう言った。
「どうして謝るの…?」
「自分を責めているのでしょう?」
私が静かに頷くと、母が私の肩を優しく掴んでそっと抱き寄せた。
「…私達はあなたに人の愛し方を教えてあげられなかった。だからあなたは彼から離れる事を選んでしまった。
あなたは誰かを巻き込んでしまう事をひどく恐れているけれど、愛する人ならばどんな形でも関わりたいと自ら望んで思うの。色んなやり方があるけれど、彼は行動で示す人だった。もしあなたが出ていかなかったとしても、あなたを幸せにする為にきっと彼は同じことをしていた筈だわ。
だからもう自分を責めないで。誰かを愛する事は自分も愛するという事。だってあなたが愛している彼は、あなたを愛しているんだから。
逆に彼が苦しんでいたら、あなたはどうしたい?新しい事業を立ち上げ、絶対に成功させたいと思ったのはどうして?」
母の言葉で何かが掴めた瞬間、歓声が上がった。主役の二人が広場に到着した様だった。
「さあ、よく聞いて。彼が用意したあなたへの愛のしるしよ」
「…え?」
私が母から聞いたのは、ミーシア・マイアスの悪評を流したのは私だと偽った事を彼女達に認めさせて記事にした事、ケビン様と私の父に意見してくれた事。まさか彼がした事はこれだけじゃないというのだろうか。
もしかして、そう思った時に歓声は更に大きくなり、舞台上に二人が現れた。そしてケビン様が演台に立つと徐々に静まり、「皆様」という言葉でここにいる全ての人間がケビン様の声に耳を傾けた。
「本日は私達の為にお集まりいただき誠にありがとうございます。先程城内にて婚姻の儀を執り行い、無事終了致しました事をご報告致します」
再び大きな拍手と歓声が上がる。その間二人は頭を下げ、まばらになってきたタイミングで顔を上げた。
「こうしてこの日を迎える事が出来ましたのは、この国を愛し支持して下っている皆様のおかげと思っております。本当にありがとうございます。
…ですが、私達には手放しでこの状況を受け入れてはいけない事がありました」
突然のケビン様の言葉に空気が張り詰めたのが分かった。
「皆様がご存知の通り、私は元々ミラ・イヴァンチスカ氏と婚約を結んでおりました。しかし様々な事象が起こり、とある事件をきっかけに私はミラ・イヴァンチスカ氏との婚約を破棄致しました。ですが訂正をさせて下さい。私の元婚約者であるミラ・イヴァンチスカ氏が、ミーシア妃を突き落としたという事実はありません」
静かだった辺りがざわつき始める。
「これは第三者への聴取により発覚致しました。当時ミーシア妃はミラ・イヴァンチスカ氏に大変負い目を感じておりました。その様な状況で声をかけられ、その驚きで階段を踏み外したのです。
この状況を一番ややこしくさせてしまったのは、私がその現場を目視していないにも関わらず、他人からの声を鵜呑みにして騒ぎ立ててしまった事です。そのせいで目撃していた方達が言い出せない状況を作り、本人達もその瞬間の記憶が曖昧だった為にそれが事実とされてしまいました。
そもそも私がきちんとミラ・イヴァンチスカ氏と向き合い、きちんと順序立てておけばこんな事故は起こらなかった筈です。どんな理由があろうとも、私がミラ・イヴァンチスカ氏を裏切った事実は変わりません。その事実から目を逸らし、自分を正当化していたのです。そんな私の度重なる浅はかな行動で大々的に報じられてしまったミラ・イヴァンチスカ氏は、今も苦しんでいます。よってあの事件は故意に行われたものではなく事故であったと訂正させて頂くと共に、ミラ・イヴァンチスカ氏に心から謝罪いたします」
これが彼が最終的に果たしたかった事。王子に公の場で私に謝罪をさせるという信じられない事を実現させた。その事に足が震えてその場に立っているだけでもやっとだった。
ケビン様とミーシア妃は深く礼をしていたが、拍手はまばらだった。王子からの突然の告白にここにいる全員が動揺しているのが分かる。すると後ろに控えていたミーシア妃がケビン様の横に立った。ケビン様は続ける。
「今回の件で私は自身の思慮の浅さと視野の狭さを痛感致しました。この話を聞いて私達にこの国の未来を担わせていいのかと、疑問を持った方が多くいらっしゃると思います。
私達は将来この国の主として相応しい器になるべく、この国を巡り見聞を広める事に致しました。勿論公費は使いません。もてなしも必要ありません。どうか未熟者の私達にご教授下さいませ。この経験は必ず糧にし、皆様に返せる様努力していく所存です」
一層ざわめきが強くなった。様々な疑問が飛び交う。その時、ミーシア妃が口を開いた。再び静まり返る。
「本日は私達のためにお集まりいただきありがとうございました。そんな中突然この様なご報告となってしまい、深くお詫び申し上げます。
この全国行脚の提案は私からさせて頂きました。私は今、ミラ・イヴァンチスカ氏の立場を奪ってここに立っています」
思わず息を呑む。誰もが心のどこかで思っていた事を本人がはっきりと言葉にした、そんな空気が漂う。ミーシア妃は覚悟を決めた目をしていた。
「この様な強い表現をしたのは、それが事実だからです。それなのに何故か被害者の様な顔をして、ミラ・イヴァンチスカ氏一人だけに全てを押し付け逃げていました。
彼女は立派な淑女でした。そんな彼女に恥じぬ様、またこの国の未来を背負っていく者として、もう下を向いている場合ではないと気づきました。
私はこの国に生まれ育ったにも関わらず、知らない事ばかりの未熟者です。その土地の特徴、暮らしなどたくさん話を聞かせて頂けたらと思っています。私達だけの主観にならないよう記者にも同行してもらい、そこで何を学んだのかなど全てを開示したものを記事にして皆様にもご覧頂く様に致します。
ただ、普段の公務を行いながらになりますので全て回るのには長くかかってしまうかもしれません。ですが必ず果たすと約束をさせて頂きます」
そう言った後、二人は頭を下げた。私は誰よりも先に大きく手を叩いた。まばらだったものが段々と広がり、最後は二人の覚悟を応援する様にたくさんの拍手に包まれた。勿論拍手をしていない人、呆れたように立ち去る人もいた。だけど私も初めて村の人達と顔を合わせた時、全員が私を認めてくれた訳じゃなかった。二人はちゃんと誠実に今回の事と向き合ってくれた。その姿勢を忘れなければ、きっと分かってくれる人は分かってくれる。
「お母さん…彼はすごいわ。私だけじゃなく国の行く末も変えたのかもしれない。ねえ…」
そう言って隣にいる母の方へ向くと、そこにいた筈の母の姿がなかった。その代わりに背の高い男性がいてゆっくりと顔を見上げると、その人は優しく私を見つめていた。濡れた様な黒い髪に、穏やかな青い瞳。
「ローガン…」
様々な感情が溢れる。周りで歓声があがっている中、私達は静かに見つめ合っていた。余りにも突然目の前に現れたものだから、本当に現実なのか分からなくて無意識に彼の頬に手を伸ばしていた。暖かい。彼が頬に触れている私の手を握ってこう言った。
「やっと見つけた」
その瞬間、堰を切ったよう様に涙が溢れる。
「ローガン!私、私は…」
気持ちが昂って上手く言葉が出ない私を彼は優しく抱きしめた。ずっと触れたかった暖かな体温、匂い、大きな体。ああ、彼だ。そう思っていたら彼が耳元でそっと囁いた。
「…全く、愛する人に愛してると言われているのに探さないでなんて、とんでもない悪女だ」
少し涙声が混じったその言葉に、彼がここに至るまでの葛藤や苦しみが見えて更に涙が溢れた。
「…っ本当に、ごめんなさい…」
「…会いたかった、ミラ」
彼が私を深く抱きしめる。思う存分互いの存在を確認した後、私は精一杯背伸びをして両手で彼の頬を包んだ。
「ローガン…私はみくびっていた。あなたの事も、人を愛するという事も。私だってあなたが苦しんでいたら、どんな手を使ってでも救ってあげたいと思うもの。だってあなたを愛しているから」
「ミラ」
彼が私のフードを取りマントも剥ぎ取る。周りが私がミラ・イヴァンチスカだと気付いてハッとしたのが分かった。そして彼は頬を包んでいた私の両手を彼の肩に置かせ、今度は彼が右手で私の頬を包んだ。
「ミラ、愛してる。もう二度と君を離さない」
「…私もよ。もう絶対に離れない」
私は目を閉じ彼と口付けた。腕を彼の首に絡ませ、周りの声が聞こえなくなるくらい夢中で口付けあった。初めてのキスは、涙の味がした。
「………」
ただこんな所でこんな事をしていれば、自ずと目立ってしまう。しかも私は渦中の人物。主役の二人は随分と前に退席していたからか、ハッとした時には多くの視線が向けられていた。慌てて同じく夢中になっていた彼の肩を叩き中断させる。なぜか不服そうな彼の手を引っ張って、とにかくその場から離れようとした時だった。
「おめでとう」
誰かのそんな声が聞こえた。思わず顔を上げると、たくさんの人が私を暖かな目で見ていた。中には小さく手を叩いている人もいる。ずっと幼い頃から感じてきていた、冷ややかな視線を向けてくる様な人なんて誰もいなかった。
「行こう」
その様子に彼は満足そうにそう言うと、思わず固まってしまった私の肩を掴んでエスコートしてくれた。私は急ぐのをやめ、所々から聞こえてくる祝福の声を浴びながら歩いた。もしかしたら私は、こんなにも前を向いて歩くのは初めてかもしれない。
「ローガン…本当にありがとう」
再び流れてくる涙を拭いながらそう伝えると、彼は返事をする代わりに、私の額に口付けた。
「お母さん!」
「良かった、無事に会えたのね」
広場から抜けると母が立っていた。安心した様な表情を浮かべる母に抱きつく。母は私の頭を撫でながら彼に言った。
「本当にありがとう…あなたに頼んだ時、結局私は人に頼るしか出来ないのかと虚しく思ったけれど、あなたで良かったと心から思っています。お陰で区切りをつける事が出来たし、忘れていた何かを取り戻せた気がします。どうか娘をよろしくお願いします」
「はい、勿論」
そっと母から離れる。母とはここでお別れだ。
「…絶対に会いに行くから」
「ええ…私も、会いに行くわ」
最後に母をもう一度抱きしめて、私は彼が用意してくれた馬車に乗り込んだ。席に座ると、母が少し切なそうな表情を浮かべてこっちを見ていた。
本当は一緒に来てと言いたかった。きっと母だってそうしたいだろう。でも母には母の暮らしがあって、何より私達にはこれまでの経緯がある。私も私で、彼との生活を築いていくのだ。
馬車が出発する。お互い手を振り合って別れた。後ろは振り向かなかった。母が一人ぼっちで立っている姿を見たくなかったから。でもこれは今生の別れではないのだ。もう前と違って母の居場所は知っているし、母にはリヤドさんがいる。必ずまた会いに行こう。そして母に、私と彼が愛するウィリアムズ領を見てもらうのだ。
「帰りましょう、“私達の村”に」
「ああ」
そう微笑みあった後、私たちはもう一度口付けあった。
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