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7章 ミラ・イヴァンチスカの独白

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 そうと決めてからは着々と準備を進めた。ほぼ休みなしで毎日稼働していたのを、知名度が上がってきた事を理由に週二日休みにした。そしてニイナと私で仕事を半分に分配し、積極的に話をして私の考えを教え込んだ。そのおかげでニイナのデザインの仕方がかなり理想通りになってきて、元々の能力値が高い事もあって任せても大丈夫なレベルにまですぐに到達した。

 でも一番のネックは彼だった。体制を整えるのに忙しくしていたというのもあるが、さりげなく彼と距離を置く。私はまた彼を坊ちゃんと呼ぶ様にした。

 どんなに彼を愛していようと、結婚は出来ない。ミラ・イヴァンチスカの呪いはこの国にいる限り一生ついて回る。その呪いが愛する人達に降りかかって欲しくないし、私自身もうこれ以上苦しみたくなかった。

 ここを出たら当初の予定通りまず母に会いに行こうと思っている。その心残りを解消したら、この国を出て新たな自分として再スタートを切ろうと決めていた。

 ここを出ていく気持ちが固まってきた頃、洗濯物を干していたら、私の姿を見て彼が目を丸くしていた。週二日休みにした事を忘れていたらしい。

「俺もやる」
「他に仕事は?」
「あるけどやる」 
「別にいいのに」

 私が少し距離を置いていたせいか、彼が久しぶりに私と二人きりになれた機会を逃したくないのが分かった。そんなの当たり前に私だって嬉しくなる。

 私が洗濯物を叩いて皺を伸ばし彼に渡す。石鹸の香りが風にのって香った。暖かな日差し、鳥もさえずいでいる。

 私だと目一杯背伸びをしなきゃいけない位置に彼は手を伸ばすだけで届いていた。その広い背中も、洗濯物を干す慣れた手つきも、私の心臓の鼓動を早くして、彼を好きだと教えてくれる。

 今朝マリアとウィンターは旅行に出かけた。その話をした時に、私は自然と口から出ていた。私達もデートをしよう、と。一瞬驚いた表情を見せた彼だったけど、喜んで了承してくれた。

 今日言おう。そう決めた。彼に求婚される前に先に手を打たなきゃ。何より私が彼から離れられなくなる前に。

 馬に乗って彼のおすすめの場所に来た。地面に敷物を敷いて、二人で足を投げ出して座る。ローラさんが使ってくれたお弁当は本当に美味しかった。これも食べられなくなるのか、と考えそうになってすぐに頭の片隅に追いやった。そんな事を考えていたらきりがない。

「君のおかげで新しく始めた事業が軌道に乗って大分楽にはなったけど…恐らく君が以前暮らしていた様な暮らしには一生届かないだろうな」
「ふふ…どこと比べているのよ。うちは一応上位貴族なのよ?」

 そう笑っていたら、彼が私の名前を呼んだ。彼の顔を見ると、まっすぐな瞳で私を見つめていた。もしかして、という言葉が浮かぶ。

「ずっとこの先も裕福な暮らしは出来ないと思う。俺は君より随分と歳上で、君が死ぬまで一緒にはいられないと思うが」

 彼が今から言おうとする事が分からない程、鈍感ではない。どうしよう、彼の話を止めなきゃ。じゃないと私は

「どうした?」

 私の様子に気付いて彼が話を止めた。

「…何が?」
「いや、何か様子が」
「ねえ、私から話してもいい?」

 早く言わなきゃ。

「坊ちゃん、私ね」

 彼の顔を見れなくて、前を向きながら告げた。

「ここを出ようと思う」

 案の定、しばらく沈黙が続いた。恐る恐る彼を見ると、見た事のない悲痛な表情を浮かべて「…だめだ」と言った。

「坊ちゃん…」
「だめだ」
「あのね」
「君を愛してるんだ」

 絶対に反対される事は分かっていたけど、こんなにストレートに気持ちを告げられるとは思わなかった。彼は鞄から小さな箱を取り出し私に差し出した。

「結婚して欲しい」

 彼も私と同じ様に覚悟を決めてきていた事を知る。

 動揺して何も言えずにいると彼の語気がどんどん強くなった。出て行く理由を言っても彼は聞く気なんてなく、強く抱きしめられていた。私の肩口が濡れている。彼は泣いていた。

 こんなに取り乱す彼は初めて見た。彼は私よりも随分と大人で、沢山の事を経験してきている。だからもっと冷静に話が進められるものだと思っていた。そんなのは関係なかった。愛はここまで人間を執着させるものなんだ。

 でも元より納得してもらおうとも思っていなかった。どんなに私の事を分かってくれていようと、彼が私を愛してくれようと、あの噂が消える事はない。私は決めたんだ。生半可な気持ちで彼に告げた訳じゃない。

「…分かった。少し考える時間をくれる?」

 そう言いながら、彼に黙って出て行く事を決める。具体的にいつまでと聞かれてはぐらかすも、彼は何とか分かってくれた様だった。それにほっとしたのは一瞬で、彼は私の手を掴んでそこに指輪の箱を置いて言った。

「本当に君を愛してるんだ。ずっと側にいたい。結婚して欲しい」

 そして箱を持っていない反対の手に口付け、その手に頬擦りした後じっと見つめられた。思わず目を逸らすと「逸らさないで」と言われて顔が近付きこめかみに口付けされ、抱きしめられる。

 一瞬で体が熱くなった。目が、手が、体温が、彼の全てが私を愛していると告げている。今までとは比較にならない程の彼の求愛を目の当たりにして、心が大きくざわついた。

 しかもそれはその日だけでなく毎日続いた。彼は必ず私に愛してると告げては手に口付けた。愛する人からの囁きは当然私を揺さぶる。ただ無心で準備を進めた。もはや意地になっていた。

 もしもっと強引に求められていたら、正直私は彼の手を取っていたかもしれない。でもそこが彼の優しさなのだ。少しでも私にゆとりを与えようとしてくれるその優しさに私は甘えた。

 ロレンツォに手紙を出した。身重の奥様が居られるのに申し訳なかったが、頼れるのは彼しかいなかった。もし来なかったらその時は一人で何とかするしかない。それくらいの覚悟を持っていた。

 それから出発する日までに、ここを出て行く際の彼に宛てる手紙を書いた。けれど中々踏み切る事が出来ずに何度も書き直し、完成したのは出ていくと決めた日の前日だった。

 荷物をまとめ、彼からもらった指輪と手紙を机の上に置く。指輪は彼の大好きな穏やかな瞳の色と同じ青の宝石だった。彼が持っている指輪には翠の宝石が埋め込まれているのだろう。それを考えると胸が苦しくなった。

 その時扉のノック音が響き、彼の声がした。どう顔を合わせればいいのか分からなくて、今日は徹底的に避けてしまっていたから来てくれたのだろう。私は手紙と指輪と荷物を念のため隠してから扉を開けると、何も知らない彼が立っていた。

「…どうしたの?」
「お休みって言いに。それと」

 扉のノブを持っていた私の手を引かれ、その勢いのまま抱きしめられていた。お日様みたいな暖かい匂いと体温が私を包む。そして低く落ち着いた声で彼は「愛してるよ」と言って私の頭に口付けた。

「じゃあお休み」
「ローガン」

 扉が閉まりそうになった時に思わず彼の名を呼んでいた。何て卑怯な女だろう。

「どうした?」
「…お休み」

 それだけ伝えて笑む。そして扉を閉めた。

 彼が出て行った後しばらく呆然とした。気付けば約束の時間になっていて、それまで仮眠するつもりだったのに出来る訳がなかった。

 頭が働かないまま荷物を持ち、そっと部屋を出る。この屋敷の人達も村の人達も働き者ばかりだから、深夜はみなぐっすりと眠る。それはこの二週間の間に調べ済みだ。

 屋敷を出るとロレンツォを見つけた。本当に彼は優しい人だ。私は彼を連れて森の中に入る。とにかくここから離れなきゃと無心に歩き続けた。部屋を出た時から涙はぼたぼたと溢れていて、歩いている間も涙は止まらなかった。

 どうして彼らを裏切らなきゃいけないのだろう。ここにいれば私の幸せは約束されているのに、どうして出て行かなきゃならないんだろう。なんて、元もこうもない事を思い始める。

 でもずっとこの先も何度も私は傷つき続ける。彼を、この地を愛し、愛されれば愛される程に。

 ロレンツォは困惑しながらも私の依頼を引き受けてくれた。ウィリアムズ領から離れると、私は母を探す事に邁進した。大勢の人を裏切り、ロレンツォとその家族にまで迷惑をかけてこの道を選んだのだ。いつまでも引き摺ってはいけない。

 私が発起会で持参金を使った事をきっかけに、彼は私にすべて渡してくれていた。その半分は置いてきたがもう半分は現実を考えて持ってこさせてもらった。おかげでロレンツォに不自由な思いをさせずに済んだ。やっぱり私一人で旅なんて無理だった。

 何も考えずにお金を持ち歩く私にロレンツォは注意した。出来るだけ顔も隠した方がいいと言われ、目深に被れるフード付きのマントを買って移動中は常にそれで過ごした。どうしてそこまでするんだろうと思っていたが、実際に一度ロレンツォが少し離れた隙に声をかけられた事がある。その人物が窃盗を企んでいたのかどうかは分からないが、ロレンツォがすぐに戻ってきてくれたおかげで何事もなくその場から離れる事が出来た。

 ウィリアムズ家の方々のおかげで生活力は身につけたが、こういった事にはあまりにも無知で無力だ。こんな状態で国を出られるのだろうかと不安になる。この旅で学んでおかなきゃと今一度気合いを入れ直した。

 母の捜索は難航した。気付けば三日が経過していて、一度有効な情報を手に入れるも失敗に終わった。食事も宿泊費も十分だったとはいえ、不慣れな旅に体力も精神も削られていく。そんな時に新しい街で立ち寄った食堂で、珍しいメニューを見つけた。それは私の大好物であるローストポークだった。

 母を探している身として何か縁を感じ、それを注文した。私もだが、ロレンツォも無言だった。そろそろ家族の為にも彼を帰さなくてはならない。でもそれが出来ない現実に申し訳なくなって何も言えなくなっていた。注文していた料理が届き、沈黙のまま食べ始める。

 一口含んだ瞬間、母の顔を思い出した。何故だろう、懐かしい味がする。そして気付いた。使われているソースが母が作っていたものと同じという事に。

 私はこれを作った人を連れてきてもらう様に頼んだ。もしかして、いや、そんな訳がない、いやでも、と緊張で跳ねる心臓を抑えていたら、その人は現れた。

 最後に記憶していた姿とは違っていたが、紛れもなく母だった。

 母を待つ間私はロレンツォに感謝を言い続けた。この人がいなければ私はどうなっていた事か。今回の旅でたくさんのことを学び気付かされた。

 ロレンツォは浮かない表情をしていた。そして「…これからどうされるのですか?」と問われた。ロレンツォは私が彼から離れる事に納得していない。私の意志の強さに折れてくれただけて、彼のために私に着いてきてくれたのだ。

 国を出るつもりである事は伏せてしばらく母の所で過ごすと伝える。実際に私は出国に向けて準備をしなければいけない。今度は誰にも頼らず、私一人の力で行ける様に。

 帰りの旅費を渡してロレンツォに別れを告げる。これで、あの人とも本当にさよならだ。

 あれから数日経ったが、彼は私を探しているだろうか。手紙にはそんな事はしないでくれと書いた。なのにあなたを愛してたとも書いた。

 彼は怒っているだろうか。どうかそうであって欲しい。やっぱりあいつは最低な女だったと捨て置いて欲しい。彼はどうなっても幸せになれる人だ。私という厄介者じゃなく、何のしがらみもない素敵な女性とどうか───

 そこまで考えて自分の醜さを思い知る。そんな事少しも思っちゃいないくせに、何という偽善者だ。また私の知らない一面をあの人によって暴かれた。こうして離れても、彼は私に影響を及ぼす。

 私を初めて守ってくれた人、私を初めて愛してくれた人、私が初めて愛した人。

 ローガン・ウィリアムズ。あなたに出会えて本当に良かった。



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