終生飼育は原則ですから 被保護編

337年4月6

　邸に連絡をし、私の昔の服を用意させた。
　彼女は面白い。本当に面白い。
　男として扱えと自分で言い出すとは思わなかった。
　目立たないように髪まで染めようとするとは。目的の為に手段を選ばないというのは共感できる。

　改めて見ると美しい女性だ。黒い髪、黒い瞳。考えを読めない深い色の瞳だ。
　レイが戻った時は立ち上がれない状態でわからなかったが、背が高い。そして細い。

　レイが近寄ると少しでも遠ざかろうとするのが笑える。
　レイはとにかく大好きだと隠す気もなく表しているのに、彼女には届いていないようだ。少し迷惑そうなのが笑える。

　結局食事も一緒に取りたくないと締め出された。
　何て人だ。仮にも一国の王太子に好意を寄せられているのに一人がいいとは。一生面倒を見ると言われて自分から期限を切るとは信じられない。

　レイは女に苦労した事はない。
　感情を表さないので「銀雪の君」と言われているが、その氷のような王子は見つめるだけで女を落とせる。
　女と付き合う期間は短いか、若しくは無い。自分からアプローチする事はなく、女から来ると煩くなるらしい。ひどい男だ。

　そのひどい男がひどい扱いをされている。
　あんなに自分から近寄り、触り、心配しているのに迷惑がられている。こんなに面白い事はない。

　クリスティアナを見てどんな反応をするか楽しみだったが、彼女は純粋に楽しんでいた。
　クリスティアナは誰もが認める美人だ。その美人がレイの隣にいる場面を惚れ惚れと見ていた。
　彼女は本当にレイの事を何とも思っていないのだ。

　レイと彼女は私の家に滞在する事になる。
　レイはもちろん彼女の部屋を自分の部屋の隣にする事を望むだろう。それは彼女にとっては迷惑だろうが。
　私の部屋の隣にしてみたい。レイがどんな反応をするか、想像すると笑える。

　楽しい。これからが楽しみだ。