365 / 365
B.T.
2
しおりを挟む
ともやがうんざりしているのはわかっている。
昔と変わらない。私が縋りつき、ともやが諦めて溜息をつく。
しかし昔よりも、もっと私に身体を預けてくれる。
昔よりも細くなった身体で、昔よりも抱きついてくることが多くなった。
ここには誰もいない。いつでも彼女をベッドに連れて行ける。ともやはレンツォーリを気にするが。
彼女の身体はまだ回復していない。昔でも疲れていた。今は無理をさせられない。
せめて夜、一度は許してほしい。
<ともや、ともや>
後ろから抱きついて服の中に手を入れる。
ともやが振り返った。
<レイサスは・・・嫌じゃないの?>
<何が?>
<私が・・・>
気にしなくていい。ともやが気にしなくていい。
ソウシュウを許すことはできない。ともやを傷つけた。ともやを、この身体を、私のものを。しかしともやが気にする事ではない。
<あなたが選んだのは私だ>
ソウシュウからは逃げ、私を受け入れた。今も。息が荒い。
ともやの上で脱力する私の耳元で呟いた。
<レイサスとなら気持ちがいい>
そうなのか? 苦痛だったのか? ならば尚更許せない。だが私は喜んでいる。ともやが捨てようと思うのも無理はない。
<ひどい事をされたのでは>
<それはない。あの人はいい人だった。だけどだめだった。なぜかはわからないけど、レイサスじゃないとだめだった>
背中の下に腕を通し強く抱き締める。ともやの素肌を触り、触れ合うとなぜこんなにも幸せなのか。
いい人だという評価は面白くはない。だが彼女は公平な人だ。常に客観的であろうとする。
外から見ればあの男は優秀で、そして彼女の事も丁重に扱いはしたのだろう。
しかし彼女は愛しはしなかった。抱かれるのが嫌だった。私の事は受け入れたのに。
<私を愛していると言ってくれ>
<・・・愛しているかはわからない。単に肉欲が勝ったのかもしれ ない し>
再び動き出すと彼女の声が乱れ、普段は聞けない声が上がる。必死に抑えているが、私は彼女の全てを知っている。容赦はしない。
<私だけだと。愛していると言え>
ともやは絶対はないと思っている。
全ての物事の基準は比較の上で成立すると。同じ状況であれば相手が私でなくても同じだったと。
私でなくても拾い、異世界に来て国の為に働き、縋る男を受け入れ、婚約者になる。私が相手でなくとも。
比較して、より有利な道を選ぶ為にソウシュウを選んだ。
愛は絶対だ。
比較ではない。誰かと比べて愛しているのではなく、ともやでなくては駄目なんだ。
ともやだから離したくないと思い、ともやだから欲しいと思い、ともやだから離れられないと思う。
あなたも少しはわかっただろう。あなたの信じる比較の上で。
誰でもいい訳ではない。私だけだ。あなたがそう言った。
理由もなく一人を選ぶのは愛だ。
あなたは私を愛している。それを認めてくれ。
そして、とうとう彼女に、とうとう一言を言わせた。
この為なら、あの苦しさも悪くはなかったかもしれない。
昔と変わらない。私が縋りつき、ともやが諦めて溜息をつく。
しかし昔よりも、もっと私に身体を預けてくれる。
昔よりも細くなった身体で、昔よりも抱きついてくることが多くなった。
ここには誰もいない。いつでも彼女をベッドに連れて行ける。ともやはレンツォーリを気にするが。
彼女の身体はまだ回復していない。昔でも疲れていた。今は無理をさせられない。
せめて夜、一度は許してほしい。
<ともや、ともや>
後ろから抱きついて服の中に手を入れる。
ともやが振り返った。
<レイサスは・・・嫌じゃないの?>
<何が?>
<私が・・・>
気にしなくていい。ともやが気にしなくていい。
ソウシュウを許すことはできない。ともやを傷つけた。ともやを、この身体を、私のものを。しかしともやが気にする事ではない。
<あなたが選んだのは私だ>
ソウシュウからは逃げ、私を受け入れた。今も。息が荒い。
ともやの上で脱力する私の耳元で呟いた。
<レイサスとなら気持ちがいい>
そうなのか? 苦痛だったのか? ならば尚更許せない。だが私は喜んでいる。ともやが捨てようと思うのも無理はない。
<ひどい事をされたのでは>
<それはない。あの人はいい人だった。だけどだめだった。なぜかはわからないけど、レイサスじゃないとだめだった>
背中の下に腕を通し強く抱き締める。ともやの素肌を触り、触れ合うとなぜこんなにも幸せなのか。
いい人だという評価は面白くはない。だが彼女は公平な人だ。常に客観的であろうとする。
外から見ればあの男は優秀で、そして彼女の事も丁重に扱いはしたのだろう。
しかし彼女は愛しはしなかった。抱かれるのが嫌だった。私の事は受け入れたのに。
<私を愛していると言ってくれ>
<・・・愛しているかはわからない。単に肉欲が勝ったのかもしれ ない し>
再び動き出すと彼女の声が乱れ、普段は聞けない声が上がる。必死に抑えているが、私は彼女の全てを知っている。容赦はしない。
<私だけだと。愛していると言え>
ともやは絶対はないと思っている。
全ての物事の基準は比較の上で成立すると。同じ状況であれば相手が私でなくても同じだったと。
私でなくても拾い、異世界に来て国の為に働き、縋る男を受け入れ、婚約者になる。私が相手でなくとも。
比較して、より有利な道を選ぶ為にソウシュウを選んだ。
愛は絶対だ。
比較ではない。誰かと比べて愛しているのではなく、ともやでなくては駄目なんだ。
ともやだから離したくないと思い、ともやだから欲しいと思い、ともやだから離れられないと思う。
あなたも少しはわかっただろう。あなたの信じる比較の上で。
誰でもいい訳ではない。私だけだ。あなたがそう言った。
理由もなく一人を選ぶのは愛だ。
あなたは私を愛している。それを認めてくれ。
そして、とうとう彼女に、とうとう一言を言わせた。
この為なら、あの苦しさも悪くはなかったかもしれない。
5
お気に入りに追加
104
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる
シェルビビ
恋愛
ランキング32位ありがとうございます!!!
遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。
ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。
ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。
この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。
「やっと見つけた、俺の女神」
隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。
サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
【R18】聖女のお役目【完結済】
ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。
その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。
紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。
祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。
※性描写有りは★マークです。
※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ようやっと二人が幸せになれそうでホッとしました。これからどうなるのか楽しみです。ソウシュウもっと不幸になんないかな...。
お読みいただきありがとうございます。
本当に、あと少しで終わります。
だらだらと引きずって申し訳ない。
200話おめでとうございます。
いつも楽しみに拝見しています。
これからも頑張ってください。
まだお読みくださっていたんですね。ありがとうございます。
ぜんぜん話が進まないので続きます。
完結はさせるので、お付き合いください。