終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年9月1

　姫さんと王子様の婚約が発表された。外遊もだ。九月二十日から一ヵ月くらいの日程だ。
　結婚式は決まってないが、帰ったらすぐだろう。王子様が待てるとは思えない。
　まだ決まっていないのは、姫さんが抵抗したからだ。特に国外に行くなんて予定もあるのに、何があるかわからないのに日にちを決めて、変更するようなことがあれば迷惑がかかる。
　それはそうだけど、何かあってほしそうだよな。

　王子様は、姫さんのドレスを作っていた。
　見せられた姫さんは引いていた。普通のお姫様なら感激して抱きつくだろうに、あの眉の顰め方、笑える。
　いや、綺麗なドレスだよ。手間と金がかかっているのはすぐわかる。だから、そんな前から用意していたことに姫さんは引いてた。

　姫さんはいろいろ困っているし戸惑っている。
　会う人全員からお祝いを言われ、街に行けば歩く暇もないほどおめでとうと言われ、王宮には小さかったり大きかったり、いろんなところから花が届いているから、姫さんの部屋は花だらけだ。公主や侯爵令嬢に分けることもできないし、猫にはよくない花もあるからって全部自分の部屋に入れているから、大変なことになっている。

　王子様は浮かれ過ぎだ。体力の違いは体格を見るだけでわかるだろうに、もっと容赦してやれよ。
　姫さんはさっさと出発したいらしい。そうだろうな。姫さんは結婚したい人間じゃない。一人が好きなのに、妃になってしまえば難しい。