終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年5月2-2

　コウジュは王太子をかっている。ソウシュウ陛下しか評価しないかと思った。オーサーと一緒にも行動してみたいらしいが、オーサーはコウジュと王太子をくっつけようとしている。なんなんだあの女は。

　昨日は訓練場で投げられた。受身を訓練させたかったらしい。
　突き飛ばされたり突き落とされたりしたときに役に立つかもしれないと言っていたが、そんなことあるか？
　思ったより上手いと褒められた。そしてオーサーの護衛に、オーサーは受身が上手くてそれで命拾いしたことがあると教えられた。だから学べと。なんなんだあの女は。

　今日は農場に行った。
　品種改良をしているところらしい。そんなことまで関わって、わざわざ見に行くのか。
　農場で飼っている猫がオーサーにすり寄り、オーサーがそれを抱き上げていた。
　初めて他意のない笑顔を見た。こんな顔もできるんだな。人間相手には見せたことがない。王太子にはあるのかもしれない。

　ん、農場、畑、猫。
　ああああ！　あの農作業してたおばさん！

　オーサーはオレを見て笑った。猫を見たときと同じ顔だった。
「気づかなくてよろしかったのに」
「いやあの、失礼なことを言ったと思う」
「いえ鋭い質問でした」
「いや、実際は違ったから」
　オーサーは笑ったまま行ってしまった。
　誰が相手でも、話す内容には気をつけようと心から思った。どんな相手でも。