終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年3月5-3

　男が逃げていくと、監査室の女達が口々にオーサー様ありがとうございます、かっこいいと言い出した。
　片手を挙げて賞賛を受けると、対処法について講義する。

「反撃できるのは明らかな力の差があるときだけなので、普段はお勧めしません。敵を作ります。普通は、育ち損なった躾の悪い子供が騒いでいると、生温く見守るのが一番いいと思います。もし言い返すなら慇懃無礼に謙るをモットーに、必要以上に丁寧で回りくどい言い方をすると、後から考えても笑えるのでお勧めです」
　そんなことを考えてるのか。ファリオン王子と目が合った。ほんとに姫さんは怖ええ。

　姫さんは人に会うときは大抵笑顔だけど、いかにも話に興味があって大好きで会いたかったって笑顔だけど、親しくなるごとに笑顔がなくなる。
　それでいくと俺はまだまだだな。毎日ついているから心配されて休みをくれる。
　いや休みでも行くとこないし。

　それでいくと、一番親しいのは王子様か。
　王子様は姫さんを見続けているけど、姫さんは王子様をあまり見ない。王子様が近寄ったら露骨に体を引く。
　迷惑そうだけど、夜に自分の部屋に来るのは許す。けど何もない。あったらわかる。毎日見ているし近くにいるからな。なんで同じ部屋で寝て何にもないんだ？

　わからねえ。一度姫さんに王子様をどう思っているのか聞かないといけない。
　俺は姫さんに仕えているから、姫さんの意思に従う。
　王子様が嫌なら守ってやらないと。