終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年1月13

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 何と言えばいいのか、真剣になるほど表せる言葉は減る。
 傷ついたともやの護衛が執務室に駆け込んできた時。
 血の気が引いた。すぐにシルヴィオとマクシミリアンを呼び寄せた。

 会うと言っていたアーリカンがまったく話を知らなかった時。
 襲った男達の出所を捜しても見つからなかった時。 

 ソサイゾしか犯人はいない。
 ある程度訓練を積んだ男を数人ではなくそれ以上雇えるのは限られている。領地で訓練を積ませるか、あるいは他国から雇うか。金、権力、人脈が必要だ。

 問題はどこに連れて行かれたかだ。
 ソサイゾは王宮から同時に数ヵ所に馬車を走らせた。全てを追えない。
 おそらくはソサイゾ邸だと思われたが確証はない。乗り込んで、いなければ手遅れだ。
 それとももう。

 王妃が外出しソサイゾ邸に行った事に救われた。
 王妃が行った先にはファリオンがいる。ファリオンが一緒ではなくても行き先はわかるかもしれない。ファリオンがともやを裏切っていた場合は許さない。

 ソサイゾ邸の警備が厳しかった事に安堵した。おそらくここだ。

 地下室でともやを見つけた時。
 すべてが綯い交ぜになった感情。
 ともやを抱き締めていたファリオンへの怒り。守れなかった事。触れている事。巻き込んだ事。
 巻き込んだのは私だ。
 何より元凶のソサイゾと王妃。

 全員を拘束し、そのままソサイゾ邸の地下室や部屋に入れてある。
 今はともやの容態だ。
 右腕は確かに折れている。

 ファリオンからどういう暴力を受け、何があったのか聞いた。
 蹴られた場所によって治療が変わるが、全身を蹴られていた。
 服を持ち上げて腹を見ると、前面が、背も濃い薄いはあってもほぼ全面色が変わっている。

 腕は折ったのではなく折られた。何て事だ。何て。
 ここまでされても悲鳴を上げなかったと言っていた。ともやはそうしそうだ。悲鳴は同情や助けを求める言葉だ。ともやはきっと悲鳴は上げない。泣き叫んでくれ。

 幸いな事に腕は単純な骨折で、安静にしていれば治る。
 肋骨や他の骨も折れていない。全て触れて確かめた。それは幸運だった。

 熱が出ている。打撲と骨折と疲れからだろう。
 具合の悪いときに一人になりたいのは知っている。だが今回はどうしてもできない。
 顔が腫れてきている。だが鼻骨も頬骨も無事だった。
 歯も欠けもしていない。口を開けて指を入れて歯を触り、その口にキスをした。
 隣で眠る。キスは気付いていないだろう。
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