終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年1月3

　猫。猫だ。しかも子猫。しかも二匹。
　久しぶりにさわった。しかも子猫。やっぱり猫はいい。猫にさわりたかった。禁断症状に苦しんでいたよ。
　私にくれるって。飼ってもいいって。ありがとうレイサス。ありがとうシルヴィオ。本当にうれしい。猫はいい。

　オスとメスか。二ヵ月ちょっとってところかな。私は人の子供の月齢なんてまったくわからないけど、猫の子はほぼわかる。二ヵ月なら自分で固形物を食べられるし、親から猫として必要なことも学んでいるからちょうどいい。

　だけどこれから、長生きすれば二十年近く面倒を見続けなくちゃいけない。そこまで私の甲斐性があるかな。そして将来どうなっているのか。
　なによりも不妊手術はどうなってる？　対策がないと鼠算ならぬ猫算で恐ろしい増え方をする。

　実家の猫も思い出し、たぶんいろいろな感情で興奮しすぎたせいで涙が出た。おばさんは涙もろい。涙腺がゆるくなる。
　みんなものすごく慌ててる。そりゃそうか。わけがわからないよね。申し訳ない。

　ハンカチは貸してくれたけど、赤く腫れた目で、この皆さんの前で話し続けろと。そういうところまでは気遣いは至らないか。まあ私の目が何色だろうと問題はない。

　レイサスがここにいたくないのかと聞くけど、私は何度も言っているようにそんなに長い期間はいないつもりだから。
　早期引退して田舎に住む。こういう忙しなく華やかな世界は疲れる。
　日本に帰れれば一番いいけど、それは無理だろうからイユリスの田舎に住むんだ。

　不妊手術はあるそうです。よかった。
　ただ麻酔はあるけど抗生物質がないらしく、あることはあるみたいだけど伝説の薬みたいな扱いらしく、動物は手術をしても人間は滅多にやらないらしい。

　そうか。危険性が高いな。手術をすることで殺してしまうかもしれない。
　しかし、責任を持って飼うためには不妊手術が不可欠だ。そこは断固たる決意を持ってお願いしよう。もし死んだら仕事中も泣くかもしれない。