終生飼育は原則ですから

被保護編 337年

337年10月6-2

　翌日ともやとファリオンが軍に行ってから、私もエランと共に行ってみた。シルヴィオもついてくる。
　ともやや兵には気付かれない方がいい。練習場が見える隊長室に案内してもらう。
　兵が並んで見慣れない体操をしていた。足を前に上げ、それをそのまま横に回したりしている。つま先を上げるのではなく踵から上げるらしい。やってみると確かに必要な筋肉が違う。

　ファリオンは武術をやっている者達に混じり、組み手をしていた。
　ともやはその横で剣を振っている。

　ともやの横を通る者達がともやの肩を叩いていく。双方笑っているから挨拶のようだが、その度にともやがよろめく。
　止めたい。だがあれは親愛の表現だとわかる。だが止めたい。あんなに強く叩いたら痛いだろう。私はしばらくともやに触れていないのに、なぜ彼らが触っているんだ。

　組み手をしている者がともやを呼んだり、投げられた者の所にともやが行ったり、いろいろ教えているようだ。上手くやっている事はわかった。

「オーサー殿は何者ですか？」
　アルマ隊長は率直な男だ。質問も他意なく切り込む。
「私にもわからない。教えられる程の腕だとは知らなかった。戦術にも詳しいそうだな」
「教官をお願いしたが断られました」

　ともやは投げ技のコツを聞かれたらしい。大柄な兵士の胸元で襟をつかんでいる。背中を兵に向けたと思うと背負うようにして投げた。
　ともやは男だと思わせたいようだが、彼らには女だと知られているだろう。触れ合ってわからないはずがない。

　ともやは決して認めないだろうが、美しい女だというだけで危険なのだ。一人でいれば不埒な男に襲われる可能性は常にある。私の側にいる女だというだけで狙われる可能性もある。
　私の側であれば守れる。どんな事をしても守る。
　だが彼女は一人でいたい。それであればまだ理解できるが、なぜファリオンと一緒なのか。