終生飼育は原則ですから

被保護編 337年

337年8月1-1

　ともやは今は給与計算をしているはずだ。

　まず厨房から始めた。いつでも職員を募集しているからそこがいいと彼女が言った。
「食堂は本音が出やすいところなんだよ」
　彼女は髪を染めた。クリスティアナに用意してもらったという。余計な事を。
　染め戻す黒い染め粉も用意してもらった。クリスティアナにものすごく迷惑をかけたと言うが、最初に染めなければよかったんだ。

　厨房は髪を隠す帽子を被る。少し深めに被れば目の色もごまかせるしちょうどいいそうだ。
　そう言われれば相変わらず正しいが、仕事はきつい。力仕事だ。夕方に帰ると疲れている。

　一週間もやれば充分だと言ったのだが、1ヵ月間続けた。少し痩せた。ただでさえ細いのに。
　お蔭で納入価を把握できた。納入業者もわかったと満足そうだ。

　次は勿論下働きだ。
　王妃の宮までは入れないが、王宮と私の宮、国王室の入室許可は出せたので、他の下働きと同じように働いていた。仕事の分担で深夜に帰る時も、泊まる時もあるので心配が尽きない。
　エラン一人では警護できないので、エランが選んだ者達で当番を組ませた。
　下働きは三週間続けた。

　その次は陳情局に行った。各地方から届いたり訴えに来た陳情を書類に起こす仕事をしていた。
　ようやく動かなくていい仕事かと思ったが、彼女は地方毎、陳情種類毎にまとめるために倉庫に入り浸り、埃まみれになっていた。これも三週間続け、分類を終わらせた。

　今度こそ動かなくていい仕事をしている。彼女は暗算も早い。少し安心できる。
　近々給料も決められるだろう。早く渡したい。
　だが金があれば彼女は自由だ。それを一緒に喜べない。自分で稼ぐ喜びは痛感したのだが。