終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 337年

337年4月4-1

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 ともやは夜着で、濡れた髪で、二人きりでシルヴィオと部屋にいた。
 顔色は悪くない。
 だがなぜ彼女はこう警戒心に欠けるんだ。
 ベッドの毛布で包むと、彼女は明らかに面倒そうだ。

<あなたには申し訳ない。連れてきてしまった。本当にすまない。だが私が一生責任を持つ。一生面倒をみるから安心してほしい>
 ともやは微笑んだ。
「一生なんて、大丈夫ですよ。しばらくの間、私がこの世界を学び、自活する手段を見つけるまでお世話になります。ん~最長四年。いくら長くても四年たったらどうにかするので、それまでお願いします」
 なぜ敬語? 四年?

「無理に急ぐ必要はない。むしろ側にいてほしい」
「大丈夫ですって。それよりこの恰好じゃだめですか? 皆さんは事情を知っているし、邸から出ないなら大丈夫でしょう」
 大丈夫ではない。男物だから、彼女には襟の開きが大きい。たぶん下着も着けていない。どうしてこうなんだ。
「それは夜着だ。着替えを用意する」
「ああ、やっぱりそうなのか。これを着ているのは失礼に当たりますか?」
 確かに事情を知っている彼らの前なら失礼ではない。だがそういう問題ではない。

「そういう問題ではない」
「・・・どういう問題なのかは措いて。皆さんに紹介していただけないでしょうか?」
「そうだな。皆、彼女は私の恩人、大佐屋ともやだ。これからこの国で、私と共に生きてもらう」
 マクシミリアン・ヌゼラス、シルヴィオ・ロゾイゾ、エラン・ロ・リーラントを紹介した。

「大佐屋ともやです。けれどオーサーと呼んでいただいたほうがいいと思います。長くはご迷惑をかけないようにするつもりですが、お世話になっている間オーサーとお呼びください」
「なぜオーサーと?」
「英語圏の人だとおうさやは発音し難いからオーサーと呼ばれていました。ここでもその方が、この国の名前に近いでしょう」
 私はともやと呼び続ける。ともやはオーサーではなくともやだ。
 変わらなくても、無理にこの世界に合わせなくてもいい。
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