終生飼育は原則ですから

乃浦

文字の大きさ
上 下
31 / 365
保護編

17-2

しおりを挟む
 私が保護されてから三回目の頭痛が治った朝、ともやに聞いてみた。
<体調が悪い時にご両親は側にいなかったのか?>
<側っていうか、同じ家の中にはいたけど、なぜ?>
<体調が悪い時に一人になりたいのは、昔から一人だったせいなのか、一人ではないから一人になりたいのか>
<う~ん。たぶんひとりじゃないからひとりがいいんだと思う。やっぱり家族が苦しんでいると自分も楽しくなくなるし、それならひとりで誰のことも気にせずに苦しみたいね>

<寂しくはないのか?>
<レイサスもわかると思うけど、日本はとても恵まれている。本当に辛くなったら電話で救急車を呼べばいい。助けてもらえるとわかっているなら大丈夫でしょ>
<けれど本では、具合の悪い時に来てくれない恋人はいらないと>
<あれか。私はそうは思わないけどね。人それぞれなんじゃない。概して男性は具合が悪いと気弱になって頼りたがるみたいだけどね>
 笑って言う。

<人間を二種類に分けるとすれば、具合が悪い時に人恋しいタイプと人嫌いになるタイプ。なんか本で読んだな。とにかく二種類に分けたがる人の話。私は確実に人嫌いだけど、レイサスは人恋しいタイプ?>
 いてほしいと言ってもいいのだろうか。彼女の負担が増える。
<レイサスはこれからレイサスの未知の病気にかかる可能性がある。予防接種はしたけれど、すべての病気の予防ができるわけじゃない。何か体調がいつもと違ったら教えて。人嫌いタイプなら申し訳ないけど、あまり邪魔にならないように観察するから>
 私は人恋しいというよりともやが恋しいのだが。
 一人で大丈夫と言うともやは、なぜともやにいてほしいかをおそらく理解しない。

<人に頼りたくなる事はないのか?>
<ある。常に頼れればなとは思ってるよ。仕事嫌いだから、結婚して専業主婦にしてもらいたいとかさぁ。もう家から出るってだけで疲れるんだよね。だけど私を養ってもいいって人はいないし、人の好意だけが頼りって生活も疲れるよね>
 結婚は人の好意が頼りか。確かにそうだ。貴族の結婚は利害関係が薄れなければ解消されないが、そうでなければ好意だけだ。

<だからレイサスは疲れていると思う。私はいきなり捨てたりはしないから。保護した以上は責任を持つから、私の機嫌を取らなくていいよ>
 機嫌を取る? そうではない。
<ごめん、言い方悪かった。ええっと、私にはそんなに気を遣わないで。掃除やご飯は作ってもらいたいけど、なんて言うかな。それ以外の感情労働はしなくていいよ>
<感情労働?>
<う~ん・・・私が仕事で疲れていると声をかけてくれるけど、放っておいていいよ。自分の不機嫌は自分で処理する。目障りだとは思うけど、レイサスのせいじゃないから気にしなくていいから。本当はそういうのを出すべきじゃないんだけど、人間ができてなくてごめん>

 違う。私はいつも話し掛けたい。話し掛けなくてもいいが抱き締めていたい。
 だがともやはいつも本を読んでいるか何かを作っていて邪魔ができない。
 疲れているときは話し掛ける絶好の機会なだけだ。

<私は話したい。気を遣っているのではなく自分がしたい事をやっている>
<そう・・・それならいいんだけどね・・・>
 納得していないな。なぜ彼女はこんなに自分を過小評価するのだろう。
 希少価値のある人間なのになぜ自分の事をつまらないと考えるのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...