終生飼育は原則ですから

保護編

16-1

　初めて、自分の力で収入を得た。
　考えればイユリスでもなかった。賃金を支払われる仕事をした事がない。
　イユリスでは決められた額が支給される。それは仕事をしてもしなくてもだ。しなければ降格か廃されるかだが。

　今私は自分で稼いだ現金を手にしている。
　こんなに嬉しいとは。自信が金から湧くようだ。大商人や裕福な貴族の尊大さに、今の私は納得できる。

　この金でともやに何かを買いたい。いや全て渡した方がいい。それはわかっているが、何かを、特別な何かを買ってプレゼントしたい。
　彼女が喜ぶのは本だ。有体に言うと本しかない。

　菓子類も好きだが食べた後に「食べ過ぎた」と反省しているから、プレゼントするのは止めた方がいいか。

　痩せているのだからもっと太ってもいいし、むしろもう少し太った方がいい。
　だが彼女は通常は節制し、時々行事があった時に本気を出すという。
「私の本気はすごいよ。一緒に食べた人は感心というか呆れる」
　一気に大量には無理だが、ずっと食べ続けることができると少し自慢げに言っていた。その後すぐにそれが何の自慢になるのかと自分に言っていた。

　ともやは服や靴も好きだが、もう買いたい物は買った。これ以上増やせないと言っているから止めよう。

　本か。本であれば、この家に無い本であれば何であれ喜ぶのはわかっている。だがそれは普通の喜びだ。何か特別な本を見つけたい。難しい。