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第20話 秘密のやり取り
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ポケットのスマホが震えた。
2年になってからあまり震えなくなったスマホが、本日ラストの6限に震えるなんて相当珍しい。
どうせ広告メールかなんかだろうと思いながらも、こっそりスマホを見ると。
「優乃……?」
彼女からLOINでチャットメッセージが届いていた。
チラリと優乃の席を見ると、授業を受けている雰囲気を醸し出していた。
それを見て、クスリと笑ってLOINを開いた。
なんだか久しぶりに誰かからLOINが来た気がするな。
もう開くこともないかもと思っていまLOINを開いて届いたメッセージを確認する。
『カフェのバイトというのはいつでしょうか?』
俺的には今日の気分だったのだが、その文字を見て、そういえば日程は言っていなかったことに気が付いた。
『今日カフェのバイトなんだよ。だから今日とかどうかな?』
メッセージを送ると、数秒後に返事が返ってくる。
『今日ですね。わかりました。なにか必要なものとかありますか? あれば放課後のカフェまでの時間に揃えておきます。それと大変恐縮なのですが、わたしはカフェのアルバイト、いえ、アルバイト自体が初体験です。ですので、よろしければ京太くんより優しく手解きしていただきたく思います。あ、京太くんの興が冷めぬのならそのまま夜の方も手解きしていただいて構いません』
なっがっ!
長い、長い。この数秒でどんだけ長い文字打ち込んでんだよ。ガチ勢か! てか、最後下ネタじゃねぇか! なにをサラッと下ネタ挟んできたよ。おっさんかっ!
『特に必要なものはないから手ぶらで大丈夫』
下ネタは余裕でスルーをして、必要な文だけ送ると、数秒で返信が来る。
『わっかりました♪───O(≧∇≦)O────♪
わたしにできることがあれば言ってくださいね(*≧∀≦*)
わたし、せいっぱいがばるんば( ̄▽ ̄)
ああ、緊張しますねぇ( ゚д゚)
でも、京太くんがいれば
大丈夫ですよね(´・ω・`)』
世代!! お前本当に同世代なの!? 使い方が紫藤先生世代だぞ!
と、とりあえずこれもスルーで良いか。
『ほんじゃ放課後一緒に行こっか』
そのメッセージを送った時だった。
「でゅえっ!」
ふと、優乃の席辺りから変な声が聞こえてきた。
相変わらず変なリアクションをする高嶺の花なこって。
そう思うのと同時にクラスの奴等は、「いま、東堂さんから変な声しなかった?」みたいな雰囲気が出ている。
英語の女性教諭も黒板に書いていた手を止めて、優乃の方を見ていた。
高嶺の花の東堂さんが変な声を出せば、そりゃ注目を浴びるのも当然か。
さぁ、どう切り抜ける。
「先生」
意外にも優乃は冷静に英語の先生を呼んで一言。
「デュエットのスペルが少し違う気がします」
そしてクールに言い放つ。
「あ、あら、そう?」
英語の先生は、彼女の冷静な指摘に従い黒板のデュエットよスペルを書き直した。
「なんだ。スペルが間違っていたのか」
「流石。高嶺の花の東堂さん。頭も良い」
「ふつくしい」
そんな声が聞こえた気がして優乃の評価が勝手に上がった。
ちなみにだが、先生はデュエットのスペルは間違えていない。正しいスペルであった。
これが高嶺の花の効果。
その立場を利用しての指摘。あたかも自分が正しいと言わんとする自信。周りは高嶺の花の東堂さんが間違えるはずないと錯覚する。
あいつ、自分のことをわかってやがる。なんて女だ。恐ろしい女だぜ。
東堂優乃の恐ろしさに誰も気が付かずに、授業の雰囲気は通常に戻る。
優乃にとっての危機は過ぎ去ってから数十分が経過した時だ。
彼女からの返信はなく、既読スルーされている状況。
もしかしたら、また情緒不安定が発動してしまい、いきなり行きたくなくなったのかもしれないな。
今は行かない理由をなんて言い訳しようか考えているのかもしれないな。
それはそれで面白い。どんな言い訳が返ってくるのか期待してしまう。
今の彼女は、先ほどの危機を乗り越えてノリノリの状態。そんなノリに乗っている優乃からどんな面白い言い訳がくるのか期待で胸が躍る。
しかし、待てと暮らせど返信はなかった。
少し過度な期待をし過ぎたか。
仕方ない。いざ何かを行動する時のダルい気持ちはわからなくもない。
なので、こちらからメッセージを飛ばしてやろうかと思った矢先に返信がくる。
『公園で』
さっきとはうって変わって随分と短い文章だ。
長い時間かけて言い訳を考えていると思ったので、なんのこっちゃわからなかった。
『公園のバイト? 役所の人なの?』
そんなわけないと思いながらもそんな文字を打ってメッセージを送ると、また数分のインターバルで返ってくる。
『隣の公園集合でお願いします』
ああ。なるほど。
放課後、俺と一緒に教室に出てしまうと自分の評価が下がるのを恐れての提案だろう。
俺としては一緒に出て学校の奴等にマウント取りたい──のは言い訳で、あんな美少女と一緒に教室を出るなんて普通にやりたい。
まぁあいつにはあいつの野望なあるからな。それを邪魔する趣味もなし。
『おけ』
それで終わりと思われるLOINだが、優乃はスマホを操作していた。
まだなにか俺に伝えたいことがあるのか疑問だったが、そこで終わらせば良かったな。
「東堂さん?」
「!?」
いつの間にか優乃の前に先生が立っており、彼女は肩を震わせた。
「ごめんなさいね。緊急事以外のスマホの使用は禁止なの。今のは緊急だった?」
大翼高校は緊急事以外のスマホの使用は禁止。破れば放課後まで没収の罰がある。
もう6限だが、校則は校則。悪いの優乃なので、「すみません」と素直にスマホを先生に渡した。
「放課後取りに来てください」
「はい」
優乃のスマホが没収されたので、彼女が最後になにを伝えたかったのかわからなかった。
2年になってからあまり震えなくなったスマホが、本日ラストの6限に震えるなんて相当珍しい。
どうせ広告メールかなんかだろうと思いながらも、こっそりスマホを見ると。
「優乃……?」
彼女からLOINでチャットメッセージが届いていた。
チラリと優乃の席を見ると、授業を受けている雰囲気を醸し出していた。
それを見て、クスリと笑ってLOINを開いた。
なんだか久しぶりに誰かからLOINが来た気がするな。
もう開くこともないかもと思っていまLOINを開いて届いたメッセージを確認する。
『カフェのバイトというのはいつでしょうか?』
俺的には今日の気分だったのだが、その文字を見て、そういえば日程は言っていなかったことに気が付いた。
『今日カフェのバイトなんだよ。だから今日とかどうかな?』
メッセージを送ると、数秒後に返事が返ってくる。
『今日ですね。わかりました。なにか必要なものとかありますか? あれば放課後のカフェまでの時間に揃えておきます。それと大変恐縮なのですが、わたしはカフェのアルバイト、いえ、アルバイト自体が初体験です。ですので、よろしければ京太くんより優しく手解きしていただきたく思います。あ、京太くんの興が冷めぬのならそのまま夜の方も手解きしていただいて構いません』
なっがっ!
長い、長い。この数秒でどんだけ長い文字打ち込んでんだよ。ガチ勢か! てか、最後下ネタじゃねぇか! なにをサラッと下ネタ挟んできたよ。おっさんかっ!
『特に必要なものはないから手ぶらで大丈夫』
下ネタは余裕でスルーをして、必要な文だけ送ると、数秒で返信が来る。
『わっかりました♪───O(≧∇≦)O────♪
わたしにできることがあれば言ってくださいね(*≧∀≦*)
わたし、せいっぱいがばるんば( ̄▽ ̄)
ああ、緊張しますねぇ( ゚д゚)
でも、京太くんがいれば
大丈夫ですよね(´・ω・`)』
世代!! お前本当に同世代なの!? 使い方が紫藤先生世代だぞ!
と、とりあえずこれもスルーで良いか。
『ほんじゃ放課後一緒に行こっか』
そのメッセージを送った時だった。
「でゅえっ!」
ふと、優乃の席辺りから変な声が聞こえてきた。
相変わらず変なリアクションをする高嶺の花なこって。
そう思うのと同時にクラスの奴等は、「いま、東堂さんから変な声しなかった?」みたいな雰囲気が出ている。
英語の女性教諭も黒板に書いていた手を止めて、優乃の方を見ていた。
高嶺の花の東堂さんが変な声を出せば、そりゃ注目を浴びるのも当然か。
さぁ、どう切り抜ける。
「先生」
意外にも優乃は冷静に英語の先生を呼んで一言。
「デュエットのスペルが少し違う気がします」
そしてクールに言い放つ。
「あ、あら、そう?」
英語の先生は、彼女の冷静な指摘に従い黒板のデュエットよスペルを書き直した。
「なんだ。スペルが間違っていたのか」
「流石。高嶺の花の東堂さん。頭も良い」
「ふつくしい」
そんな声が聞こえた気がして優乃の評価が勝手に上がった。
ちなみにだが、先生はデュエットのスペルは間違えていない。正しいスペルであった。
これが高嶺の花の効果。
その立場を利用しての指摘。あたかも自分が正しいと言わんとする自信。周りは高嶺の花の東堂さんが間違えるはずないと錯覚する。
あいつ、自分のことをわかってやがる。なんて女だ。恐ろしい女だぜ。
東堂優乃の恐ろしさに誰も気が付かずに、授業の雰囲気は通常に戻る。
優乃にとっての危機は過ぎ去ってから数十分が経過した時だ。
彼女からの返信はなく、既読スルーされている状況。
もしかしたら、また情緒不安定が発動してしまい、いきなり行きたくなくなったのかもしれないな。
今は行かない理由をなんて言い訳しようか考えているのかもしれないな。
それはそれで面白い。どんな言い訳が返ってくるのか期待してしまう。
今の彼女は、先ほどの危機を乗り越えてノリノリの状態。そんなノリに乗っている優乃からどんな面白い言い訳がくるのか期待で胸が躍る。
しかし、待てと暮らせど返信はなかった。
少し過度な期待をし過ぎたか。
仕方ない。いざ何かを行動する時のダルい気持ちはわからなくもない。
なので、こちらからメッセージを飛ばしてやろうかと思った矢先に返信がくる。
『公園で』
さっきとはうって変わって随分と短い文章だ。
長い時間かけて言い訳を考えていると思ったので、なんのこっちゃわからなかった。
『公園のバイト? 役所の人なの?』
そんなわけないと思いながらもそんな文字を打ってメッセージを送ると、また数分のインターバルで返ってくる。
『隣の公園集合でお願いします』
ああ。なるほど。
放課後、俺と一緒に教室に出てしまうと自分の評価が下がるのを恐れての提案だろう。
俺としては一緒に出て学校の奴等にマウント取りたい──のは言い訳で、あんな美少女と一緒に教室を出るなんて普通にやりたい。
まぁあいつにはあいつの野望なあるからな。それを邪魔する趣味もなし。
『おけ』
それで終わりと思われるLOINだが、優乃はスマホを操作していた。
まだなにか俺に伝えたいことがあるのか疑問だったが、そこで終わらせば良かったな。
「東堂さん?」
「!?」
いつの間にか優乃の前に先生が立っており、彼女は肩を震わせた。
「ごめんなさいね。緊急事以外のスマホの使用は禁止なの。今のは緊急だった?」
大翼高校は緊急事以外のスマホの使用は禁止。破れば放課後まで没収の罰がある。
もう6限だが、校則は校則。悪いの優乃なので、「すみません」と素直にスマホを先生に渡した。
「放課後取りに来てください」
「はい」
優乃のスマホが没収されたので、彼女が最後になにを伝えたかったのかわからなかった。
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