14 / 20
第14話 去り際に尊死させようとしてくる東都詩音
しおりを挟む
週末は東都と図書館で勉強会。
待ち合わせは図書館近くにある公園。噴水の前で待ち合わせ。
これってもしかしなくてもデートだろうということで、待ち合わせ時間の三〇分前に到着。
したんだけど……。
「あ、千田くん。やっほー」
俺より先に東都がいた。彼女のレトロワンピース姿は非常にかわいかった。
「早いねー。約束の時間、まだだよ」
「そりゃこっちのセリフだ。何分前に来たんだ?」
「んー? 一〇分前くらいかな」
四〇分前行動か。くっ、負けたぜ……。
負けた悔しさから、彼女を少しからかってやる。
「こんなに早く来て、そんなに俺とのデートが楽しみだったのか?」
「なっ……」
ボフッと赤くなる東都は、あわあわと言い訳を開始する。
「や、やや、い、家にいるとおねぇがうるさいから、さっさと出て来たの」
「あ、なるほど」
あのお姉さん、からかうの好きそうだもんな。
「そ、それを言ったら千田くんだって、三〇分前に来てるし、しかも勉強会のことデートとか言うし。千田くんの方が楽しみだったんじゃないの?」
あ、やっべ、普通に心に思ってたこと言ってしまっていたな。
「あ、はは」
「笑って誤魔化してる」
「それにしたって、この時間じゃまだ図書館は開館してないな」
大きく話題を逸らすと、これ以上突いても東都てきにメリットもないと思ってくれたのか、話題変更に乗ってくれる。
「早過ぎるのも問題だねー」
「ちょっとそこのベンチに座る?」
「そうだねー」
ふたりしてベンチに腰掛ける。
横目で東都を見てみる。
「かわいいな」
「ふぇ!?」
「似合ってるよ、その服」
「ぁ、なんだ、服か……」
「図書館にぴったりな服装だな」
「えへへ。そうでしょ。おねぇが選んでくれたんだぁ」
嬉しそうに言う彼女。お姉ちゃんが好きなんだなぁと微笑ましくなる。
「羨ましいよ。俺にはファッションセンスがないから」
「そんなことないと思うけど」
「ファッションセンスがないから、上下チェーンの安物の服装なんだよ」
「だったら、テストが終わったら服、買いに行こうよ」
「選んでくれるのか?」
「このファッションリーダー詩音に任せてよ」
「へぇ、東都ってファッションリーダーなんだ」
「あ、や、自分で言っといてなんだけど、あんまり期待しないでぇ」
「なんだ、それー」
あははー、なんて俺達の笑い声が公園に響いた。
♢
その後、東都と公園で喋っていると──。
ぐゅるるぅぅうう。
もの凄い腹の音が響いた。
「……」
「東都。腹減ったか?」
「もう! 女の子にそんなこと聞いちゃだめなんだよ!?」
怒られてしまった。
「こういう時は男の子のお腹が鳴ったことにしないと」
「お腹の音を聞かれるの恥ずかちい」
「うう、おちょくられてる気がするぅ」
ぷぅと怒った東都は、腕を組んだ。
「罰として、千田くんは私をランチに連れて行かないといけません」
「ランチな。そういえばもう昼か──」
言葉の途中で俺の脳内があることを思い出す。
「なぁおい東都、大変だ」
「え? なに?」
「俺ら大事なこと忘れてる」
「大事なこと? ファミレスのクーポンとか?」
この子、食べることしか考えていないな。
「図書館、とっくに開いてる」
スマホを見せると、もう昼の一二時前であった。
「あ! やっばっ! 千田くんとのお喋りが楽し過ぎて忘れてた!」
無意識にそんなこと言ってきて、俺を尊死させようとしてくるが、なんとか踏ん張る。
「ど、どどど、どうしよう、千田くん」
「落ち着け。今からでも間に合う。ランチは残念だが諦めて、今日はコンビニ飯にしよう」
「そ、そうだね。うん」
俺達は急いでコンビニに行き、おにぎりを食べてから図書館で勉強を開始した。
♢
「なん、とか、全科目やり遂げたな」
図書館の閉館時間までみっちり勉強した。
「そう、だね……」
お互い、へろへろの状態で図書館を出る。
「なんとかなりそうか?」
「赤点は回避できそう」
「そうか。なら、良かったよ」
「か、帰ろう」
「だな」
今日は慌ただしい一日だったため、お互いに疲労困憊だ。
帰り道はあまり会話もなく、東都を家まで送る。
「きょ、今日は本当にありがとう」
「お互いテスト頑張ろうな」
そう言って手を振り合って別れようとしたところで、とことこと東都が俺の方まで近寄ったくる。
そして、耳元で囁いた。
「テスト終わったらデートの続き、しようね」
「ふぁ!?」
セリフもそうだが、彼女の吐息が俺の耳にダイレクトに当たってなんとも言えない高揚感に包まれた。
「じゃ、じゃぁね!」
そう言って団地の階段をくのいちみたいに上がって行く東都。
「去り際に尊死させようとしてくるなよ」
そう呟いて、耳元に残る彼女の吐息の感触を確かめながら家に戻った。
待ち合わせは図書館近くにある公園。噴水の前で待ち合わせ。
これってもしかしなくてもデートだろうということで、待ち合わせ時間の三〇分前に到着。
したんだけど……。
「あ、千田くん。やっほー」
俺より先に東都がいた。彼女のレトロワンピース姿は非常にかわいかった。
「早いねー。約束の時間、まだだよ」
「そりゃこっちのセリフだ。何分前に来たんだ?」
「んー? 一〇分前くらいかな」
四〇分前行動か。くっ、負けたぜ……。
負けた悔しさから、彼女を少しからかってやる。
「こんなに早く来て、そんなに俺とのデートが楽しみだったのか?」
「なっ……」
ボフッと赤くなる東都は、あわあわと言い訳を開始する。
「や、やや、い、家にいるとおねぇがうるさいから、さっさと出て来たの」
「あ、なるほど」
あのお姉さん、からかうの好きそうだもんな。
「そ、それを言ったら千田くんだって、三〇分前に来てるし、しかも勉強会のことデートとか言うし。千田くんの方が楽しみだったんじゃないの?」
あ、やっべ、普通に心に思ってたこと言ってしまっていたな。
「あ、はは」
「笑って誤魔化してる」
「それにしたって、この時間じゃまだ図書館は開館してないな」
大きく話題を逸らすと、これ以上突いても東都てきにメリットもないと思ってくれたのか、話題変更に乗ってくれる。
「早過ぎるのも問題だねー」
「ちょっとそこのベンチに座る?」
「そうだねー」
ふたりしてベンチに腰掛ける。
横目で東都を見てみる。
「かわいいな」
「ふぇ!?」
「似合ってるよ、その服」
「ぁ、なんだ、服か……」
「図書館にぴったりな服装だな」
「えへへ。そうでしょ。おねぇが選んでくれたんだぁ」
嬉しそうに言う彼女。お姉ちゃんが好きなんだなぁと微笑ましくなる。
「羨ましいよ。俺にはファッションセンスがないから」
「そんなことないと思うけど」
「ファッションセンスがないから、上下チェーンの安物の服装なんだよ」
「だったら、テストが終わったら服、買いに行こうよ」
「選んでくれるのか?」
「このファッションリーダー詩音に任せてよ」
「へぇ、東都ってファッションリーダーなんだ」
「あ、や、自分で言っといてなんだけど、あんまり期待しないでぇ」
「なんだ、それー」
あははー、なんて俺達の笑い声が公園に響いた。
♢
その後、東都と公園で喋っていると──。
ぐゅるるぅぅうう。
もの凄い腹の音が響いた。
「……」
「東都。腹減ったか?」
「もう! 女の子にそんなこと聞いちゃだめなんだよ!?」
怒られてしまった。
「こういう時は男の子のお腹が鳴ったことにしないと」
「お腹の音を聞かれるの恥ずかちい」
「うう、おちょくられてる気がするぅ」
ぷぅと怒った東都は、腕を組んだ。
「罰として、千田くんは私をランチに連れて行かないといけません」
「ランチな。そういえばもう昼か──」
言葉の途中で俺の脳内があることを思い出す。
「なぁおい東都、大変だ」
「え? なに?」
「俺ら大事なこと忘れてる」
「大事なこと? ファミレスのクーポンとか?」
この子、食べることしか考えていないな。
「図書館、とっくに開いてる」
スマホを見せると、もう昼の一二時前であった。
「あ! やっばっ! 千田くんとのお喋りが楽し過ぎて忘れてた!」
無意識にそんなこと言ってきて、俺を尊死させようとしてくるが、なんとか踏ん張る。
「ど、どどど、どうしよう、千田くん」
「落ち着け。今からでも間に合う。ランチは残念だが諦めて、今日はコンビニ飯にしよう」
「そ、そうだね。うん」
俺達は急いでコンビニに行き、おにぎりを食べてから図書館で勉強を開始した。
♢
「なん、とか、全科目やり遂げたな」
図書館の閉館時間までみっちり勉強した。
「そう、だね……」
お互い、へろへろの状態で図書館を出る。
「なんとかなりそうか?」
「赤点は回避できそう」
「そうか。なら、良かったよ」
「か、帰ろう」
「だな」
今日は慌ただしい一日だったため、お互いに疲労困憊だ。
帰り道はあまり会話もなく、東都を家まで送る。
「きょ、今日は本当にありがとう」
「お互いテスト頑張ろうな」
そう言って手を振り合って別れようとしたところで、とことこと東都が俺の方まで近寄ったくる。
そして、耳元で囁いた。
「テスト終わったらデートの続き、しようね」
「ふぁ!?」
セリフもそうだが、彼女の吐息が俺の耳にダイレクトに当たってなんとも言えない高揚感に包まれた。
「じゃ、じゃぁね!」
そう言って団地の階段をくのいちみたいに上がって行く東都。
「去り際に尊死させようとしてくるなよ」
そう呟いて、耳元に残る彼女の吐息の感触を確かめながら家に戻った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
学校一のモテ男がドS美少女に包囲されているらしい
無地
青春
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群。あらゆるモテ要素を凝縮した男、朝日空(あさひそら)。彼が道を歩けば、女子は黄色い声援を浴びせ、下駄箱にはいつも大量のラブレター。放課後は彼に告白する女子の行列が出来る……そんな最強モテライフを送っていた空はある日、孤高の美少女、心和瑞月(こよりみづき)に屋上へ呼び出される。いつも通り適当に振ろうと屋上へ向かう空だったが……?!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?
久野真一
青春
2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。
同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。
社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、
実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。
それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。
「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。
僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。
亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。
あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。
そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。
そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。
夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。
とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。
これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。
そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。
しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-
橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。
順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。
悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。
高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。
しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。
「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」
これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる