40 / 45
第40話 空っぽの夢
しおりを挟む
夢、なんだと思う。
これは俺が眠っていて、夢を見ているんだと思う。
目の前で気になるあの美人が歌ってくれている。
大阪梅田の歩道橋でストリートライブをしてくれている。
その時、スカートの中からいちごパンツがこんにちはをしてくれた。
かと思っていると、場面は海へと切り替わる。
景色だけが変わって、波打ち際での単独ライブ。
まるで編集が下手くそなMVみたいな光景は、やっぱり夢だと思う。
彼女は周りの景色など気にする様子もなく歌い続けた。
空っぽだ。
この夢にはなにも詰まっていない。
悲しいくらいに、なにも詰まっていない──。
♢
ふと目が覚める。
寝起きは良かった。こんなにもあっさりと意識が覚醒する日なんてのも珍しい。
寝起きだから、断片的に夢の内容が思い出せる。
「歌……」
気になる彼女のストリートライブ。
名前も知らない彼女の単独ライブ。
左目から涙が流れて来た。
しかしそれはなんだか空っぽな気がして。自分でもなんで泣いているのかなんてわからない。
「……って、今、何時よ」
涙を拭いて時間を確認しようとする。
こんなにも寝起きが良いなんて、もしかしたら寝坊の恐れがあるのではないだろうか。
ドキッとしながらスマホの時計を見た。
「五時、って……。五時ってぇ……」
どんだけ早起きなのよ、俺。スマホを握りしめて、ヘナヘナと枕に顔を埋める。
冷静に考えれば、あの未来が寝坊を見逃すわけがない。俺が起きるまで叩き起こすはずだ。
「それにしたって五時起きなんて、早起きが過ぎるぞ、俺」
まだ二度目ができる時間帯だ。でも、完璧に覚醒を果たしているために、二度寝をしようとする気など起きない。
「美人のいちごパンツで世津くん興奮したってか? 小学生かっ!」
自分自身にツッコミを入れてみたりして。本当にいちごパンツで早起きなら自分自身に呆れちまうな。
「シンデレラ効果、か……」
カフェで聞いた彼女の言葉。
気になる美人が言った言葉が気になってスマホを操作する。
次こそはシンデレラ効果を出汁に、彼女とお近づきになってやる。
そんな欲まみれな感情で検索エンジンに、『シンデレラ効果 歌姫』なんて打ち込んでみた。
歌姫だなんてワードはどこから来たのか。多分、夢の内容からだろう。
シンデレラ効果ならなんでも良いかと思いながら、掲示板のまとめサイトに入る。
これは俺が眠っていて、夢を見ているんだと思う。
目の前で気になるあの美人が歌ってくれている。
大阪梅田の歩道橋でストリートライブをしてくれている。
その時、スカートの中からいちごパンツがこんにちはをしてくれた。
かと思っていると、場面は海へと切り替わる。
景色だけが変わって、波打ち際での単独ライブ。
まるで編集が下手くそなMVみたいな光景は、やっぱり夢だと思う。
彼女は周りの景色など気にする様子もなく歌い続けた。
空っぽだ。
この夢にはなにも詰まっていない。
悲しいくらいに、なにも詰まっていない──。
♢
ふと目が覚める。
寝起きは良かった。こんなにもあっさりと意識が覚醒する日なんてのも珍しい。
寝起きだから、断片的に夢の内容が思い出せる。
「歌……」
気になる彼女のストリートライブ。
名前も知らない彼女の単独ライブ。
左目から涙が流れて来た。
しかしそれはなんだか空っぽな気がして。自分でもなんで泣いているのかなんてわからない。
「……って、今、何時よ」
涙を拭いて時間を確認しようとする。
こんなにも寝起きが良いなんて、もしかしたら寝坊の恐れがあるのではないだろうか。
ドキッとしながらスマホの時計を見た。
「五時、って……。五時ってぇ……」
どんだけ早起きなのよ、俺。スマホを握りしめて、ヘナヘナと枕に顔を埋める。
冷静に考えれば、あの未来が寝坊を見逃すわけがない。俺が起きるまで叩き起こすはずだ。
「それにしたって五時起きなんて、早起きが過ぎるぞ、俺」
まだ二度目ができる時間帯だ。でも、完璧に覚醒を果たしているために、二度寝をしようとする気など起きない。
「美人のいちごパンツで世津くん興奮したってか? 小学生かっ!」
自分自身にツッコミを入れてみたりして。本当にいちごパンツで早起きなら自分自身に呆れちまうな。
「シンデレラ効果、か……」
カフェで聞いた彼女の言葉。
気になる美人が言った言葉が気になってスマホを操作する。
次こそはシンデレラ効果を出汁に、彼女とお近づきになってやる。
そんな欲まみれな感情で検索エンジンに、『シンデレラ効果 歌姫』なんて打ち込んでみた。
歌姫だなんてワードはどこから来たのか。多分、夢の内容からだろう。
シンデレラ効果ならなんでも良いかと思いながら、掲示板のまとめサイトに入る。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男子高校生の休み時間
こへへい
青春
休み時間は10分。僅かな時間であっても、授業という試練の間隙に繰り広げられる会話は、他愛もなければ生産性もない。ただの無価値な会話である。小耳に挟む程度がちょうどいい、どうでもいいお話です。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
花
TEN-ent
青春
女子高生5人が
多くの苦難やイジメを受けながらも
ガールズバンドで成功していく物語
登場人物
ハナ 主人公
レイナ ハナの親友
エリ ハナの妹
しーちゃん 留学生
ミユ 同級生
マキ
あるグループの曲にリスペクトを込め作成
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
愛するものと出会えたなら
白い恋人
青春
昔、ある事件により、人を信じる・愛することをやめてしまった主人公、白恋 優一(はくれん ゆういち)。
そんなある日、転校してきた天真爛漫な少女、双葉 ひかり(ふたば ひかり)と出会う。そんなグイグイ迫ってくるひかりを拒絶するつもりの優一だったが………。
優一はこれから人と深く関わり合えるのか、ひかりにいったいどんな過去があったのか、これからどうなってしまうのか………。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる