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五天将星 中編
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「メアァァァァァ!!奴を殺セぇぇぇぇ!!!」
その一声にメアは飛び出した。
ほどける包帯と同時に、両腕に刻まれた刺青から出てくる二本の鎖。
ジャラジャラと雑な金属の摩擦音を引っさげて鎖が襲ってくる。
しかも今度は〝縛る〟のではなく鞭のように〝しなる〟一撃がハサミのように飛んできた。
「くぅっ!!」
上半身を仰け反らせて避けるカンナギ。
目の前で通過していく鎖を見送って、両手の人差し指二本で宙に印を組む。
「全エレメンタル持続状態の開放を発令。刻印式追加召喚!ブルー!!グリーン!!」
ブゥゥゥンという音と共に現れるすべてのエレメンタル。
ブルーエレメンタルは吹雪の魔法を放った。
凍てつく波動にメアは跳躍して回避する。
「おせぇ!!」
空中で待機していたレッドエレメンタルが上から落とす斬撃。
「―――――――っ!!」
両腕を重ね、剣を受け止めるメアはレッドエレメンタルの腹部を蹴って空中で距離を離し、腕を振る。
レッドエレメンタルの首に二本の鎖を絡ませたと同時に一気に引く。
「…………ごめんなさい」
ゴキンッという非常に生々しい肉音と共に霧のように消滅するレッドエレメンタル。
「がっ…!!」
カンナギは首に強烈な痛みを感じた。
サマナーにとって操ったモンスターとは違い、エレメンタルは言わば〝術者の精神の分身〟である。
傷付いた程度では支障はないが、消滅した場合はそのエレメンタルの『最もの死因』が術者に跳ね返る。
外傷は無い。
精神的な苦痛を形として脳が感じてしまうのだ。
今のように首をへし折られて消滅されれば、術者であるカンナギも首を激痛に襲われる。
「ぐぅ!!ブルーっ!!」
「…………!!」
痛みに耐え、叫ぶカンナギ。
メアが着地しようとする瞬間を狙って今度は氷の弾丸を放つ。
狙ったのは下半身。
あの素早い機動力をなんとかしなければ話にならない。
もはや避けられないメアの右脚と左脇腹を氷弾が捉える。
血を吹く自分の身体を一度見てからメアは顔を上げる。
その顔には一切の感情がない、涼やかな顔。
「っ!?チィッ……痛みがねぇのか、ゾンビじゃあるまいし!!」
再び鎖による鞭の一撃。
すかさずグリーンエレメンタルが自身を超える緑に透ける光の盾で弾く。
「……!!」
メアは気付くことが出来なかった。
盾を消すグリーンエレメンタルの後ろ。
待っているブルーエレメンタルの後ろ。
カンナギの姿が無い。
「……どこへ!?」
「だから言ったろ?おせぇってよ」
目の前に現れるカンナギ。
「―――――――っ!!」
ふたつのエレメンタルを囮にして近付くことに専念したのだ。
反射で退がろうといたが、黒いワンピースの胸の辺りを掴まれ逃げられなくなる。
「っ!?」
「昨日の夜からおかしいと思ったんだ。お前…やけに『離れて攻撃する』な……ってよ。
お前の弱点見つけたぜ。確かに間接距離じゃ俺もザッシュですら勝てない…それは認めてやる」
服を掴む手に力を込める。
「逆説、間接距離じゃなきゃお前は何も出来ない、してこない」
その一言に、メアはギクリとした。
「お前の弱点は、攻撃できる射程が間接距離『しか』ないって事だ。
離れすぎても近付きすぎても攻撃できない」
「そ、それは貴方だって同じハズ―――――――」
視界が一瞬で流れると同時に痛みが走る。
腕を取られて投げられたのだ。
「っつぅ……!!」
どこかから声が聴こえてくる。
「甘い。サマナーは肉弾戦が出来ないなんて、決まってねぇぜ?」
強く背を打ち付けられたメアは苦悶する。
「大人しくしてもらおうか、下手に動こうとするなら―――――――」
その時、あり得ない事が起きた。
目の前にいつの間にかいたモンスター。
いつぞやもみた種族、ゴウルが大口をこちらに向けていた。
刹那、その口から灼熱の炎が吐かれる。
『一緒にいる』メアごと…………
「っな!?」
守護の要となるグリーンエレメンタルは待機の指示に従っている。
離れていて届かない。
とっさに腕をクロスさせるが容赦なくその腕ごと一気に焼かれる。
灼熱に吹き飛び、壁に叩きつけられるカンナギとメア。
「ぐっ!!はあっ!!」
「うっ……あぅっ!!!」
鈍い音で叩きつけられた二人は力なく地に沈む。
嘲笑う男がひとり。
「クックック…そう気を抜くと命取りだヨ、カンナギ君?」
「ふ…っぐ……テメェェェ!!」
隣りで熱さに苦しみ転がるメアを一瞥し、激怒する。
「なんでコイツまで巻き込んだ!?仲間だろうが!!」
狂った笑いを続けるサイモン。
「君も彼女達と同じことを言ウ……。別に『それ』は仲間でも従者でもなイ。ただの道具ダ」
「どこまで腐っていやがる!!」
「クハハッ!!褒め言葉として受け取ろウ!!」
立ち上がろうとするが灼けた足に力が入らない。
腕を回そうとしてみる。かろうじて動く。
損傷がひどい。
脂汗が額をつたうが拭う力さえも出ない。
「く……そっ」
「ククク。生きて現れたのは驚いたが…形勢逆転ダ」
指を鳴らすとモンスターが十数体に増えた。
主を守るべくブルーエレメンタル、グリーンエレメンタルが各々の武具を掲げ
間へと割って入る。
だが多勢に無勢だ。
歯を食いしばりながらあらゆる事象に脳をフル回転させる。
「さあ、ここいらでカーテンコールといこうカ」
カラカラと笑うサイモンは両腕を広げて終幕を謳った。
その一声にメアは飛び出した。
ほどける包帯と同時に、両腕に刻まれた刺青から出てくる二本の鎖。
ジャラジャラと雑な金属の摩擦音を引っさげて鎖が襲ってくる。
しかも今度は〝縛る〟のではなく鞭のように〝しなる〟一撃がハサミのように飛んできた。
「くぅっ!!」
上半身を仰け反らせて避けるカンナギ。
目の前で通過していく鎖を見送って、両手の人差し指二本で宙に印を組む。
「全エレメンタル持続状態の開放を発令。刻印式追加召喚!ブルー!!グリーン!!」
ブゥゥゥンという音と共に現れるすべてのエレメンタル。
ブルーエレメンタルは吹雪の魔法を放った。
凍てつく波動にメアは跳躍して回避する。
「おせぇ!!」
空中で待機していたレッドエレメンタルが上から落とす斬撃。
「―――――――っ!!」
両腕を重ね、剣を受け止めるメアはレッドエレメンタルの腹部を蹴って空中で距離を離し、腕を振る。
レッドエレメンタルの首に二本の鎖を絡ませたと同時に一気に引く。
「…………ごめんなさい」
ゴキンッという非常に生々しい肉音と共に霧のように消滅するレッドエレメンタル。
「がっ…!!」
カンナギは首に強烈な痛みを感じた。
サマナーにとって操ったモンスターとは違い、エレメンタルは言わば〝術者の精神の分身〟である。
傷付いた程度では支障はないが、消滅した場合はそのエレメンタルの『最もの死因』が術者に跳ね返る。
外傷は無い。
精神的な苦痛を形として脳が感じてしまうのだ。
今のように首をへし折られて消滅されれば、術者であるカンナギも首を激痛に襲われる。
「ぐぅ!!ブルーっ!!」
「…………!!」
痛みに耐え、叫ぶカンナギ。
メアが着地しようとする瞬間を狙って今度は氷の弾丸を放つ。
狙ったのは下半身。
あの素早い機動力をなんとかしなければ話にならない。
もはや避けられないメアの右脚と左脇腹を氷弾が捉える。
血を吹く自分の身体を一度見てからメアは顔を上げる。
その顔には一切の感情がない、涼やかな顔。
「っ!?チィッ……痛みがねぇのか、ゾンビじゃあるまいし!!」
再び鎖による鞭の一撃。
すかさずグリーンエレメンタルが自身を超える緑に透ける光の盾で弾く。
「……!!」
メアは気付くことが出来なかった。
盾を消すグリーンエレメンタルの後ろ。
待っているブルーエレメンタルの後ろ。
カンナギの姿が無い。
「……どこへ!?」
「だから言ったろ?おせぇってよ」
目の前に現れるカンナギ。
「―――――――っ!!」
ふたつのエレメンタルを囮にして近付くことに専念したのだ。
反射で退がろうといたが、黒いワンピースの胸の辺りを掴まれ逃げられなくなる。
「っ!?」
「昨日の夜からおかしいと思ったんだ。お前…やけに『離れて攻撃する』な……ってよ。
お前の弱点見つけたぜ。確かに間接距離じゃ俺もザッシュですら勝てない…それは認めてやる」
服を掴む手に力を込める。
「逆説、間接距離じゃなきゃお前は何も出来ない、してこない」
その一言に、メアはギクリとした。
「お前の弱点は、攻撃できる射程が間接距離『しか』ないって事だ。
離れすぎても近付きすぎても攻撃できない」
「そ、それは貴方だって同じハズ―――――――」
視界が一瞬で流れると同時に痛みが走る。
腕を取られて投げられたのだ。
「っつぅ……!!」
どこかから声が聴こえてくる。
「甘い。サマナーは肉弾戦が出来ないなんて、決まってねぇぜ?」
強く背を打ち付けられたメアは苦悶する。
「大人しくしてもらおうか、下手に動こうとするなら―――――――」
その時、あり得ない事が起きた。
目の前にいつの間にかいたモンスター。
いつぞやもみた種族、ゴウルが大口をこちらに向けていた。
刹那、その口から灼熱の炎が吐かれる。
『一緒にいる』メアごと…………
「っな!?」
守護の要となるグリーンエレメンタルは待機の指示に従っている。
離れていて届かない。
とっさに腕をクロスさせるが容赦なくその腕ごと一気に焼かれる。
灼熱に吹き飛び、壁に叩きつけられるカンナギとメア。
「ぐっ!!はあっ!!」
「うっ……あぅっ!!!」
鈍い音で叩きつけられた二人は力なく地に沈む。
嘲笑う男がひとり。
「クックック…そう気を抜くと命取りだヨ、カンナギ君?」
「ふ…っぐ……テメェェェ!!」
隣りで熱さに苦しみ転がるメアを一瞥し、激怒する。
「なんでコイツまで巻き込んだ!?仲間だろうが!!」
狂った笑いを続けるサイモン。
「君も彼女達と同じことを言ウ……。別に『それ』は仲間でも従者でもなイ。ただの道具ダ」
「どこまで腐っていやがる!!」
「クハハッ!!褒め言葉として受け取ろウ!!」
立ち上がろうとするが灼けた足に力が入らない。
腕を回そうとしてみる。かろうじて動く。
損傷がひどい。
脂汗が額をつたうが拭う力さえも出ない。
「く……そっ」
「ククク。生きて現れたのは驚いたが…形勢逆転ダ」
指を鳴らすとモンスターが十数体に増えた。
主を守るべくブルーエレメンタル、グリーンエレメンタルが各々の武具を掲げ
間へと割って入る。
だが多勢に無勢だ。
歯を食いしばりながらあらゆる事象に脳をフル回転させる。
「さあ、ここいらでカーテンコールといこうカ」
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