12 / 20
1
五天将星 前編
しおりを挟む
それは世界のなかで起こるほんの小さな出来事。
だから誰もが気付くことじゃない。
必然。
それは当たり前のこと。
ボクにとっての必然はいつだってボクを否定する現実だ。
こういうのをシビアっていうんだと思うけど、実際はけっこうグダグダだったような気がする。
あの出逢いも…偶然に見えて、実は必然だったんだろうね。
〝キミ〟はボクを救ってくれた。
追手からだけじゃなくて、暗闇から救ってくれた。
深い…深い暗闇から救ってくれた。
困っていたボクに手を差し伸べてくれた〝キミ〟
死ぬよりも先に護ることを考えてくれた〝キミ〟
場違いだと自虐するボクを怒ってくれた〝キミ〟
ボクのせいで死んでしまった〝キミ〟
出会わない方が良かったのかな?
迷惑になるからって断れば良かったのかな?
独りぼっちでいたほうが…良かったのかな…
『ごめん』って言えなかった。
それが辛くて…苦しくて…悲しくて。
頭の中で言うボクはおかしいかな?
もし許してくれるなら、言うね。
今隣にいてくれたら
笑いながらボクよりも大きな掌で髪の毛ぐしゃぐしゃってされるかな
それとも、怒られちゃうかな…
ごめん……
ごめんなさい……ボクの、ボクのせいでごめんなさい
………ごめんなさい、〝ナギ君〟
「―――――――え?」
ふと、誰かに呼ばれた気がしてカンナギは歩いてきた道を振り返る。
そこには無機質な暗い通路が続いていた。
モンスター達の無数の骸が通路に落ちていた。
どのモンスターもカンナギが知っているこの世界のモンスターとは若干どこかが違う。
身体に合わない発達しすぎている筋肉。
付け足された四肢。
痛みに全く怯む様子を窺えなかった行動。
脳裏に白衣を着た男の張り付いた狂気の顔が浮かぶ。
「気のせいか……」
再び歩き出そうとしたその時
機械的な音と共に視界の端で扉が開いた。
人工的な光が差し込んでくる。
「……誘ってんな」
一人で呟くカンナギは入ろうかどうか考えようとしたが
視界にはいった物で考えるのをやめた。
「というか、むしろ挑発みたいだな」
その扉の向こうの巨大な部屋に二つの影。
サイモンとメアだ。
カンナギも迷うことなく扉をくぐった。
一歩一歩確実に。
一定の距離で歩を進めるのをやめた。
互いに視線が交差するがお互いまだ口を開く気はなさそうだ。
一分程だろうか。
痺れを切らしたように先に口を開いたのはサイモンだった。
「…そうだっタ。君がサマナーであった事を失念してイタ」
カンナギは意地の悪い笑いで返す。
「『あの』モンスターは殺しちまったみたいだな。血の気配が、さっき途切れた」
「カームダウン、カ」
「ご明察。あの時しこたま俺の血をかっ喰らったからな…簡単に気を静められたよ」
おもむろに右手を見せるカンナギ。
手の平には紅い血が煙を立てながら「シュゥゥゥゥ」と溶けるような音を発している。
挑発するように仰々しくおどけた素振りをしてみせた。
「ポータル使ったって無駄だぜ。俺の血を『モンスターが喰ってる』ならどこにいたって場所が割り出せる」
「…………」
黙り込むサイモン。
そこにはもう張り付いた笑いすらない。
カンナギは強く一歩を踏んだ。その距離およそ30メートル。
「さぁ。ウチの依頼人と暴れん坊のお姫様ふたり。返してもらおうか」
冷えた口調でサイモンは口を開く。
「そうはさせなイ。ワタシから知識への渇望を諌めることは許さナイ」
怒りがサイモンの声をヒステリックに変える。
「誰一人としてワタシを止めることは許さなイ!!!」
〝凶知への欲望〟
カンナギは思い出した。この男の二つ名を。
だから誰もが気付くことじゃない。
必然。
それは当たり前のこと。
ボクにとっての必然はいつだってボクを否定する現実だ。
こういうのをシビアっていうんだと思うけど、実際はけっこうグダグダだったような気がする。
あの出逢いも…偶然に見えて、実は必然だったんだろうね。
〝キミ〟はボクを救ってくれた。
追手からだけじゃなくて、暗闇から救ってくれた。
深い…深い暗闇から救ってくれた。
困っていたボクに手を差し伸べてくれた〝キミ〟
死ぬよりも先に護ることを考えてくれた〝キミ〟
場違いだと自虐するボクを怒ってくれた〝キミ〟
ボクのせいで死んでしまった〝キミ〟
出会わない方が良かったのかな?
迷惑になるからって断れば良かったのかな?
独りぼっちでいたほうが…良かったのかな…
『ごめん』って言えなかった。
それが辛くて…苦しくて…悲しくて。
頭の中で言うボクはおかしいかな?
もし許してくれるなら、言うね。
今隣にいてくれたら
笑いながらボクよりも大きな掌で髪の毛ぐしゃぐしゃってされるかな
それとも、怒られちゃうかな…
ごめん……
ごめんなさい……ボクの、ボクのせいでごめんなさい
………ごめんなさい、〝ナギ君〟
「―――――――え?」
ふと、誰かに呼ばれた気がしてカンナギは歩いてきた道を振り返る。
そこには無機質な暗い通路が続いていた。
モンスター達の無数の骸が通路に落ちていた。
どのモンスターもカンナギが知っているこの世界のモンスターとは若干どこかが違う。
身体に合わない発達しすぎている筋肉。
付け足された四肢。
痛みに全く怯む様子を窺えなかった行動。
脳裏に白衣を着た男の張り付いた狂気の顔が浮かぶ。
「気のせいか……」
再び歩き出そうとしたその時
機械的な音と共に視界の端で扉が開いた。
人工的な光が差し込んでくる。
「……誘ってんな」
一人で呟くカンナギは入ろうかどうか考えようとしたが
視界にはいった物で考えるのをやめた。
「というか、むしろ挑発みたいだな」
その扉の向こうの巨大な部屋に二つの影。
サイモンとメアだ。
カンナギも迷うことなく扉をくぐった。
一歩一歩確実に。
一定の距離で歩を進めるのをやめた。
互いに視線が交差するがお互いまだ口を開く気はなさそうだ。
一分程だろうか。
痺れを切らしたように先に口を開いたのはサイモンだった。
「…そうだっタ。君がサマナーであった事を失念してイタ」
カンナギは意地の悪い笑いで返す。
「『あの』モンスターは殺しちまったみたいだな。血の気配が、さっき途切れた」
「カームダウン、カ」
「ご明察。あの時しこたま俺の血をかっ喰らったからな…簡単に気を静められたよ」
おもむろに右手を見せるカンナギ。
手の平には紅い血が煙を立てながら「シュゥゥゥゥ」と溶けるような音を発している。
挑発するように仰々しくおどけた素振りをしてみせた。
「ポータル使ったって無駄だぜ。俺の血を『モンスターが喰ってる』ならどこにいたって場所が割り出せる」
「…………」
黙り込むサイモン。
そこにはもう張り付いた笑いすらない。
カンナギは強く一歩を踏んだ。その距離およそ30メートル。
「さぁ。ウチの依頼人と暴れん坊のお姫様ふたり。返してもらおうか」
冷えた口調でサイモンは口を開く。
「そうはさせなイ。ワタシから知識への渇望を諌めることは許さナイ」
怒りがサイモンの声をヒステリックに変える。
「誰一人としてワタシを止めることは許さなイ!!!」
〝凶知への欲望〟
カンナギは思い出した。この男の二つ名を。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる