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そんなにもあからさまでお約束な〝しゅちえーしょん〟 後編
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「……………」
「……………」
「……………」
さんさんと照りつける太陽。
砂漠の軟らかい砂もなんのそので突き進むジープに揺られて
三人が三人とも別の意味の無言を貫く。
少なからずもイダーでのお尋ね者扱いとなった事態をどう収拾するか策を練る
黒い長髪を縛ったサマナーの青年、カンナギ。
ジープに揺られながら両手で鷲掴みにしたリンゴを至近距離で見つめる
銀髪と碧眼の小柄なソーサレスの少女、ニル。
仲間が連れている、見知らぬ可憐な少女を妙に意識してしまう
赤いロングヘアーのボーイッシュなレンジャーの少女、ミリノ。
さんさんと照りつける太陽。
種々様々な思考が織り成す沈黙を破ったのは
「……で、どういう事なの?」
ミリノだった。
「いや、それが俺にもさっぱり…。何かを狙っていたような口振りだったけど―――――――」
カンナギの真面目なつもりの話が、訊いた質問とは路線の違った返答だったとミリノはイラついた。
「ち・が・う。アタシが訊いてるのはそっちよ、そっち」
「そっちって…」
カンナギは自分と一緒に後部座席に座っているひとりの色白な少女を横目で一瞥する。
自分のことだと気付いていないニルは、黙ったまま目の前の紅い果実を無表情で見つめ続けている。
(……そんなにめずらしいのか、それ?)
あえて訊く気にはなれなかった。
「『そっち』って、コレのことか?」
親指で指し示されたリンゴと対面中の少女にミリノは
「ちょっと、レディに向かってこれとは何よこれとは……そうよ、その子のこと」
「…コイツだと言うことは判ったが、『どういう事』とはどういう意味だ?」
運転手はため息を漏らす。
「アンタもつくづく話を捻じ曲げたがるわね、その子はどうしてついてきてるのってはなしよ。
……まさか誘拐?。それで追われて」
「あ"~違う違う。もともと追われてたのコッチだから」
「なにそれ、本当はナンパとかだったってオチは無しよ。いくらそんなにもあからさまでお約束なしゅちえーしょんだとしても」
「あ"~違う違う。俺、幼女趣味じゃないし……ってかシチュエーションな」
「……ほんとなの~?」
納得しない運転手にカンナギは顔をしかめた。
「いやに突っ掛かるな…。俺が女連れてちゃいけないとでも?」
「へっ!?あ、いや、そういうわけじゃないけど」
「俺だって何がなんだか……コイツに問い質さなきゃ」
「…珍しいわね、アンタが状況を飲み込めてないなんて」
背もたれて、砂漠特有の突き抜けるような蒼い空を見上げて数秒。
「なんにせよ、当分イダーにはいられない。アジトに着いてからじっくり―――――――」
「…………」
未だリンゴを見続けているニルに
「……面倒なことになった」
「……同感」
ふたつのため息がユニゾンした。
「相変わらず暗いなこの部屋は、いい加減明かりのひとつでも付けたらどうだ?」
陽の当たらない部屋に背の高い黒ずくめのマントの男が
椅子に座る痩せた白衣の男にそう問いかける。
「光、というものが元来嫌いでネ、この部屋の造りも判って暗くしているのだヨ。事実、調べ事に支障はナイ」
あまりにも陽に当たらなすぎる色白の男は、読み終えた書物を床に放り捨てる。
〝知識を取り込み、読む必要性の無くなった書物になんて用は無い、捨てるのみ〟
この男はそういう人間だ、と黒ずくめは気にせずひねくれた物言いに心の内で呆れる。
「それデ?君がこんな所に来るのならば、それなりの用があるのだろウ?」
「……〝ポセイドン〟と〝スピネル〟の十天神器の核石の持ち主が」
ピクリ、と白衣の肩が動く。
「…見つかった、ト?」
黒ずくめは黙って首を一度縦に落とす。
「ほう、君とセッカ君に続いテ……。いよいよ大御所になったきたものダ」
「イダーで見つけたとの情報だ。情報料をせしめるつもりはなかったが仕事は仕事、払ってもらうぞ」
耳障りな音を鳴らせる椅子を回転させて体ごと振り返る。
眼鏡で隠れた顔には、いびつなまでに歪んだ笑いが貼り付いていた。
「わかっタ。後々にでも送りつけておくヨ」
「額は?」
「100万デ」
「充分だ…」
振り返り、部屋を出て行こうとする黒ずくめに
「君ハ?」
「……?」
ドアノブを掴む寸前で静止する。
「君はどうするのだネ、その二人を」
「フン、関係無いな。どうなろうと、この俺の〝シトリン〟こそが頂点にのぼることに変わりは無い」
「どうかナ?最終的にはその二人と、『殺し合うことになる』のかもしれんのだヨ?」
「知れたこと…その時は」
「そうなる前に、貴様が何かするのだろう?サイモン」
歪んだ口が更に、歪む。
「クックックッ、そうさせてもらうヨ、ミライカナイ」
バタン、と戸が閉まる。
「さて、ト……」
机の上にばら撒かれた書物の山を無造作に除ける。
埃とともに乾いた音をたて、きれいになった机に両足を乗せ歪んだ口元を張り付けながら
奈落へと落とす為に頭脳を働かせることに専念した。
「どんなゲームに踊ってもらおウカ……」
「……………」
「……………」
さんさんと照りつける太陽。
砂漠の軟らかい砂もなんのそので突き進むジープに揺られて
三人が三人とも別の意味の無言を貫く。
少なからずもイダーでのお尋ね者扱いとなった事態をどう収拾するか策を練る
黒い長髪を縛ったサマナーの青年、カンナギ。
ジープに揺られながら両手で鷲掴みにしたリンゴを至近距離で見つめる
銀髪と碧眼の小柄なソーサレスの少女、ニル。
仲間が連れている、見知らぬ可憐な少女を妙に意識してしまう
赤いロングヘアーのボーイッシュなレンジャーの少女、ミリノ。
さんさんと照りつける太陽。
種々様々な思考が織り成す沈黙を破ったのは
「……で、どういう事なの?」
ミリノだった。
「いや、それが俺にもさっぱり…。何かを狙っていたような口振りだったけど―――――――」
カンナギの真面目なつもりの話が、訊いた質問とは路線の違った返答だったとミリノはイラついた。
「ち・が・う。アタシが訊いてるのはそっちよ、そっち」
「そっちって…」
カンナギは自分と一緒に後部座席に座っているひとりの色白な少女を横目で一瞥する。
自分のことだと気付いていないニルは、黙ったまま目の前の紅い果実を無表情で見つめ続けている。
(……そんなにめずらしいのか、それ?)
あえて訊く気にはなれなかった。
「『そっち』って、コレのことか?」
親指で指し示されたリンゴと対面中の少女にミリノは
「ちょっと、レディに向かってこれとは何よこれとは……そうよ、その子のこと」
「…コイツだと言うことは判ったが、『どういう事』とはどういう意味だ?」
運転手はため息を漏らす。
「アンタもつくづく話を捻じ曲げたがるわね、その子はどうしてついてきてるのってはなしよ。
……まさか誘拐?。それで追われて」
「あ"~違う違う。もともと追われてたのコッチだから」
「なにそれ、本当はナンパとかだったってオチは無しよ。いくらそんなにもあからさまでお約束なしゅちえーしょんだとしても」
「あ"~違う違う。俺、幼女趣味じゃないし……ってかシチュエーションな」
「……ほんとなの~?」
納得しない運転手にカンナギは顔をしかめた。
「いやに突っ掛かるな…。俺が女連れてちゃいけないとでも?」
「へっ!?あ、いや、そういうわけじゃないけど」
「俺だって何がなんだか……コイツに問い質さなきゃ」
「…珍しいわね、アンタが状況を飲み込めてないなんて」
背もたれて、砂漠特有の突き抜けるような蒼い空を見上げて数秒。
「なんにせよ、当分イダーにはいられない。アジトに着いてからじっくり―――――――」
「…………」
未だリンゴを見続けているニルに
「……面倒なことになった」
「……同感」
ふたつのため息がユニゾンした。
「相変わらず暗いなこの部屋は、いい加減明かりのひとつでも付けたらどうだ?」
陽の当たらない部屋に背の高い黒ずくめのマントの男が
椅子に座る痩せた白衣の男にそう問いかける。
「光、というものが元来嫌いでネ、この部屋の造りも判って暗くしているのだヨ。事実、調べ事に支障はナイ」
あまりにも陽に当たらなすぎる色白の男は、読み終えた書物を床に放り捨てる。
〝知識を取り込み、読む必要性の無くなった書物になんて用は無い、捨てるのみ〟
この男はそういう人間だ、と黒ずくめは気にせずひねくれた物言いに心の内で呆れる。
「それデ?君がこんな所に来るのならば、それなりの用があるのだろウ?」
「……〝ポセイドン〟と〝スピネル〟の十天神器の核石の持ち主が」
ピクリ、と白衣の肩が動く。
「…見つかった、ト?」
黒ずくめは黙って首を一度縦に落とす。
「ほう、君とセッカ君に続いテ……。いよいよ大御所になったきたものダ」
「イダーで見つけたとの情報だ。情報料をせしめるつもりはなかったが仕事は仕事、払ってもらうぞ」
耳障りな音を鳴らせる椅子を回転させて体ごと振り返る。
眼鏡で隠れた顔には、いびつなまでに歪んだ笑いが貼り付いていた。
「わかっタ。後々にでも送りつけておくヨ」
「額は?」
「100万デ」
「充分だ…」
振り返り、部屋を出て行こうとする黒ずくめに
「君ハ?」
「……?」
ドアノブを掴む寸前で静止する。
「君はどうするのだネ、その二人を」
「フン、関係無いな。どうなろうと、この俺の〝シトリン〟こそが頂点にのぼることに変わりは無い」
「どうかナ?最終的にはその二人と、『殺し合うことになる』のかもしれんのだヨ?」
「知れたこと…その時は」
「そうなる前に、貴様が何かするのだろう?サイモン」
歪んだ口が更に、歪む。
「クックックッ、そうさせてもらうヨ、ミライカナイ」
バタン、と戸が閉まる。
「さて、ト……」
机の上にばら撒かれた書物の山を無造作に除ける。
埃とともに乾いた音をたて、きれいになった机に両足を乗せ歪んだ口元を張り付けながら
奈落へと落とす為に頭脳を働かせることに専念した。
「どんなゲームに踊ってもらおウカ……」
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