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第38話 祈り届いて
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「ぬぅぅうううあああ!」
「単純なんだよ!」
もはや狂気的な顔でソエラはこちらに襲い来る。
縦一閃に振り下ろされたメイスを僕は難なく避けた。
「ふん! うう! ああああ!」
ブンッブンッブォンッ!
「……」
ソエラは両手持ちで、途切れる事無くメイスを振り回し続ける。
魔導書を落とし、空いた左手も使って両手持ちに切り替えたのも有るだろうが、凄まじい攻撃の勢いだ。
「……反撃とかは……フッ! ……難しいかなぁ……? ホッ!」
避けるのに集中しているからなんとかなってるけど……どんどん速度が増してるな。
「死ね!」
ドガッシャン!
「ハハハ。当たったら骨が粉になるな」
避けた一撃が礼拝堂の長椅子に当たった。
長椅子は完全に砕け、石片が舞う。
「ヴオオオオ!」
ソエラは叫びながら一段と大振りな横薙ぎを繰り出す。
僕は下がってかわしたついでに……床の石片を手に取る。
「ほらよっ!」
ペチッ。
投げつけると、ソエラの額に当たって小さな音をたてた。
「……は」
「攻撃はちゃんと当てないとね。僕みたいに」
「何してくれてんだクソガキィィィィ!!!」
凄い怒り様だ、顔色も赤を越えて逆に真っ青になってるし。
……絵面はどうあれ、完全に僕のペースで戦えてるな。
まだまだ付き合ってもらうとしましょう。
「この野郎!」
ブンッ! ブンッ!
「学習しないねぇ!」
大振りな攻撃を見極めて……僕はソエラの懐に潜り込む。
「らぁ!」
「動きが遅くなってきてるな……そろそろスタミナ切れか?」
それでも無理やり殴ろうとしてきたので、メイスではなく腕を掴んで止めた。
「せーのっ!」
ブゥン!
腕を引き、壁に向かって投げ飛ばす。
「ブヘア!」
ソエラはバランスを立て直す前に壁に激突し、間抜けな声を挙げた。
「そのまま壁に埋まりな!」
僕は追撃に蹴りを繰り出す。
ドンッ!
しかし、蹴りは壁に当たるだけだ。
「グウガァ……!」
声の方を見ると、ソエラが鼻血を拭っている。
……ギリギリで避けられたか。
「オラァ!」
「ふんっ!」
カアン!
壁に足を着いた隙を狙った、ソエラの振り下ろし。
僕はナイフで防ぎ、刃をズラして受け流す。
「ぬぅ……らぁ!」
カンッ! カラカラ……
「しまっ……」
体勢を建て直した瞬間、返す一撃が繰り出された。
ナイフは弾き飛ばされてしまい、少し離れた床を転がる。
「チッ……面倒な……」
「クククク……! これで貴様は武器無し……どう抗うんだぁ!?」
ブォン!
「決まってるだろ、素手だよ」
メイスの攻撃を避けながら、僕は拳を握る。
うん、やっぱり速度は落ちてきてる。
これなら素手でもナイフを拾いに行く隙くらいは……
「まずは腕ぇ!」
「だから当たらないと意味無いっての!」
ブンッ! ボスッ!
腕狙いの横振りを屈んでかわし、ソエラの鳩尾に右拳をいれる。
「……っ! なら一思いに頭だぁ!」
強化魔法の影響で防御力も上がっているのか、彼は僅かに呻くのみだ。
ほとんど怯まずにメイスを振り上げてくる。
「おらぁ!」
「ほっ、とっ!」
僕は最小限の動きで躱す。
そして、反撃に彼の胸部を蹴り込む。
「っ……」
流石に効いたのか、ソエラは一歩だけ下がった。
「頭を潰したいならここを狙わないとさ……」
僕は自らの頭頂部をつつき、挑発する。
流石にそろそろ乗ってくれなさそうだけど……
「そんなにお望みなら潰してやるよ!!」
あっさり乗ってくれたわ、コイツがプライドの高い馬鹿で良かったよ、本当に。
ソエラは渾身の力を込めてメイスを振り下ろしてくる。
「フッ。セイっ!」
ブンッ、バチッ! クルクル……
僕は振り下ろされたメイスをかわし、次の瞬間にそれを蹴り上げた。
メイスはソエラの手を離れて宙を舞い、落ちた。
「……! クソが!」
べシッ!
「グホッ! 本当に殺意が強いね……!」
ソエラはメイスが使えなくなった事を理解すると、即座に拳を振るう。
彼の拳は僕の頬を捉え、思わず後ずさった。
口の中が切れたようで血の味を感じる……
「ハア……ハア……お前さえ殺せば……俺の復讐は果たされる……」
息も絶え絶えに彼はそういう。
なんだかドッと疲れた雰囲気だけど……
「ああ、そうだな。僕もお前を殺せば友達を助けられる!」
べシイ!
「グハァ……!」
僕が左拳で殴ると、ソエラは大きく怯んだ。
「ハア……ハア……強化魔法の時間切れか……オマケに体力もいい加減限界って感じかな?」
「この命尽きる時まで……神よお力を……!」
勝負を決めるチャンスだけど……体力が限界なのはこっちも同じ。
ここに来るまでに三十四人も相手にしたし、そもそも今日はほとんど休み無しで動いてるんだから当然か……
「……」
「……」
僕達は息を整えながら、静かにお互いを睨む。
「オッラァ!」
先に仕掛けてきたのはソエラの方だった。
素人感溢れる、両腕が下がった構えのまま殴りかかってくる。
「フッ……!」
ブォン! べキィ! ブンッ!
僕はソエラの拳を躱し、時折反撃を加えていく。
しかし、避けきれずに彼の拳が僕の身体を捉えることもあって、
拮抗した殴り合いが続く。
「ハッ!」
ドスッ!
「……グゥゥ!」
シュッ! ブンッ!
ソエラはなりふり構わずに腕を振りまわして攻撃を続けるが……だんだんとその勢いは無くなっていった。
やがてソエラの動きが完全に止まる。
……今だ!
「オッ……ラァ!!」
ドゴッ!
「グホオオオ!?」
大きな隙を晒したソエラに、渾身の後ろ回し蹴り込みを決めた!
彼は大きく吹っ飛び、アシュリーが寝かせられていた祭壇に叩きつけられる。
そして、そのまま起き上がる事無くグッタリと倒れ伏した。
「ゼエ……ゼエ……ハア……」
なんとか戦いは終わったようだ……だが、まだだ。
僕は部屋を見渡してナイフを探す。
「……あった」
キラリと光っていたそれを拾い上げて、僕は倒れているソエラに近寄る。
「お前をここで生かしておいたら……
またアシュリーか他の誰かを狙うんだろ?」
悲劇を終わらす為に、明日も安心して友達と話す為に。
僕は奴目掛けて刃を振り下ろし……
「かかったなアホが!」
ズバッ!
「なっ……!?」
……切られた?
ナイフを下ろそうとした瞬間、
ソエラは起き上がり、僕を何かで切りつけてきた。
腹から左肩にかけて衝撃と痛みが走る。
「クハハハ! 油断しましたねぇ!
私の気絶したふりに見事に引っかかてくれてありがとうございます!」
「なるほど……やられたな」
ソエラは高笑いしながら右手に持った儀式用のナイフを掲げた。
叩きつけられた時のどさくさで拾ってたのか……!
僕は切られた箇所を抑えて片膝を着く。
「今の一撃は相当効いたでしょう! 致命傷は確実と行った所ですかね」
「ああ……本当に本当に」
僕は立ち上がり、両腕を開いた。
「効いてないんだよね。全然」
腕が退けられ、露わになった僕の胴体には傷一つ無い。
「な……!? ば、馬鹿な……俺は確かに……手応えもあった!」
「僕が今着てるこの服さ……防刃性能付きなんだよね」
……ありがとう、アシュリー。
君がこの服をくれてなかったら僕は死んでたよ。
「んだと!? 都合よくそんな装備を……!」
「確かに都合が良すぎるかもね……
まあ、きっとこれも神様が決めた運命って奴なんじゃないの?」
「っ……! ほざくなあああああああああぁぁぁ!!!」
最後のあがきと言わんばかりに、ソエラは切りかかってくる。
「胴が駄目ならその首を掻っ切ってくれる!!」
「クッ……!」
ピリッ!
皮一枚で回避するが……目の下に微かな痛みが走る。
顔の傷程度……何も問題は無い。
「……この野郎!」
スパン! ドサ!
「ウグッ!」
避けた勢いを利用した足払いが決まり、ソエラは背中から地面に落ちる。
「せっ!」
ガシッ!
倒れた所にトドメを刺そうと、ナイフを下ろすが……ソエラの両腕に阻まれる。
「いい加減に……しろよ……!」
「ふざけるな……! こんな、こんな所で終わってたまるかぁ……!」
……あと、あと数cmナイフを押し込めば、ソエラの心臓は貫かれる。
「ソエラァァァァァァアアア!!!」
「ぬあああああああああぁぁあぁぁあ!!!」
「オラァァァ!!」
ガツン! ザスッ。
「……ッ!!?」
釘を打つかのように、左拳をナイフの柄に叩きつける。
そうするとナイフの刃が半分程ソエラの身体に沈んだ。
……ようやく、勝負有りだ。
「これで! 終わりだ! クソ教祖が!!」
ザスッ! ブシュッ! ズバァ!
「ガアアアアアアア!?!?」
一度刺してしまうと、押し返す力は無くなった。
それを良い事に僕は何度も何度も何度も刺し、その度に血を浴びる。
「ハア……ハア……」
ドサッ……
断末魔が聞こえなくなったあたりで、僕は全身の力が抜けて仰向けに寝転んだ。
精神も肉体もとっくに限界を迎えていたのだろう。
「……なんだ、よ……やっぱり……神様なんて……居ないじゃねえか……」
そんな声が隣から聞こえた。
あれだけ刺したのにまだ喋れるとは、しぶとい奴め……
「お前は……本気でホルシド教を信じてる訳じゃ無かったのか……?」
僕の言葉に返答は無い。
首を動かすと、ピクリとも動かないソエラが目に入る。
……今度こそ本当に死んだか。
「……僕も死にそうなくらい疲れたな」
そのまま、僕の意識は闇に落ちていく。
心配はいらない、少し寝るだけだ。
今日は本当に……色々有りすぎたな……
「単純なんだよ!」
もはや狂気的な顔でソエラはこちらに襲い来る。
縦一閃に振り下ろされたメイスを僕は難なく避けた。
「ふん! うう! ああああ!」
ブンッブンッブォンッ!
「……」
ソエラは両手持ちで、途切れる事無くメイスを振り回し続ける。
魔導書を落とし、空いた左手も使って両手持ちに切り替えたのも有るだろうが、凄まじい攻撃の勢いだ。
「……反撃とかは……フッ! ……難しいかなぁ……? ホッ!」
避けるのに集中しているからなんとかなってるけど……どんどん速度が増してるな。
「死ね!」
ドガッシャン!
「ハハハ。当たったら骨が粉になるな」
避けた一撃が礼拝堂の長椅子に当たった。
長椅子は完全に砕け、石片が舞う。
「ヴオオオオ!」
ソエラは叫びながら一段と大振りな横薙ぎを繰り出す。
僕は下がってかわしたついでに……床の石片を手に取る。
「ほらよっ!」
ペチッ。
投げつけると、ソエラの額に当たって小さな音をたてた。
「……は」
「攻撃はちゃんと当てないとね。僕みたいに」
「何してくれてんだクソガキィィィィ!!!」
凄い怒り様だ、顔色も赤を越えて逆に真っ青になってるし。
……絵面はどうあれ、完全に僕のペースで戦えてるな。
まだまだ付き合ってもらうとしましょう。
「この野郎!」
ブンッ! ブンッ!
「学習しないねぇ!」
大振りな攻撃を見極めて……僕はソエラの懐に潜り込む。
「らぁ!」
「動きが遅くなってきてるな……そろそろスタミナ切れか?」
それでも無理やり殴ろうとしてきたので、メイスではなく腕を掴んで止めた。
「せーのっ!」
ブゥン!
腕を引き、壁に向かって投げ飛ばす。
「ブヘア!」
ソエラはバランスを立て直す前に壁に激突し、間抜けな声を挙げた。
「そのまま壁に埋まりな!」
僕は追撃に蹴りを繰り出す。
ドンッ!
しかし、蹴りは壁に当たるだけだ。
「グウガァ……!」
声の方を見ると、ソエラが鼻血を拭っている。
……ギリギリで避けられたか。
「オラァ!」
「ふんっ!」
カアン!
壁に足を着いた隙を狙った、ソエラの振り下ろし。
僕はナイフで防ぎ、刃をズラして受け流す。
「ぬぅ……らぁ!」
カンッ! カラカラ……
「しまっ……」
体勢を建て直した瞬間、返す一撃が繰り出された。
ナイフは弾き飛ばされてしまい、少し離れた床を転がる。
「チッ……面倒な……」
「クククク……! これで貴様は武器無し……どう抗うんだぁ!?」
ブォン!
「決まってるだろ、素手だよ」
メイスの攻撃を避けながら、僕は拳を握る。
うん、やっぱり速度は落ちてきてる。
これなら素手でもナイフを拾いに行く隙くらいは……
「まずは腕ぇ!」
「だから当たらないと意味無いっての!」
ブンッ! ボスッ!
腕狙いの横振りを屈んでかわし、ソエラの鳩尾に右拳をいれる。
「……っ! なら一思いに頭だぁ!」
強化魔法の影響で防御力も上がっているのか、彼は僅かに呻くのみだ。
ほとんど怯まずにメイスを振り上げてくる。
「おらぁ!」
「ほっ、とっ!」
僕は最小限の動きで躱す。
そして、反撃に彼の胸部を蹴り込む。
「っ……」
流石に効いたのか、ソエラは一歩だけ下がった。
「頭を潰したいならここを狙わないとさ……」
僕は自らの頭頂部をつつき、挑発する。
流石にそろそろ乗ってくれなさそうだけど……
「そんなにお望みなら潰してやるよ!!」
あっさり乗ってくれたわ、コイツがプライドの高い馬鹿で良かったよ、本当に。
ソエラは渾身の力を込めてメイスを振り下ろしてくる。
「フッ。セイっ!」
ブンッ、バチッ! クルクル……
僕は振り下ろされたメイスをかわし、次の瞬間にそれを蹴り上げた。
メイスはソエラの手を離れて宙を舞い、落ちた。
「……! クソが!」
べシッ!
「グホッ! 本当に殺意が強いね……!」
ソエラはメイスが使えなくなった事を理解すると、即座に拳を振るう。
彼の拳は僕の頬を捉え、思わず後ずさった。
口の中が切れたようで血の味を感じる……
「ハア……ハア……お前さえ殺せば……俺の復讐は果たされる……」
息も絶え絶えに彼はそういう。
なんだかドッと疲れた雰囲気だけど……
「ああ、そうだな。僕もお前を殺せば友達を助けられる!」
べシイ!
「グハァ……!」
僕が左拳で殴ると、ソエラは大きく怯んだ。
「ハア……ハア……強化魔法の時間切れか……オマケに体力もいい加減限界って感じかな?」
「この命尽きる時まで……神よお力を……!」
勝負を決めるチャンスだけど……体力が限界なのはこっちも同じ。
ここに来るまでに三十四人も相手にしたし、そもそも今日はほとんど休み無しで動いてるんだから当然か……
「……」
「……」
僕達は息を整えながら、静かにお互いを睨む。
「オッラァ!」
先に仕掛けてきたのはソエラの方だった。
素人感溢れる、両腕が下がった構えのまま殴りかかってくる。
「フッ……!」
ブォン! べキィ! ブンッ!
僕はソエラの拳を躱し、時折反撃を加えていく。
しかし、避けきれずに彼の拳が僕の身体を捉えることもあって、
拮抗した殴り合いが続く。
「ハッ!」
ドスッ!
「……グゥゥ!」
シュッ! ブンッ!
ソエラはなりふり構わずに腕を振りまわして攻撃を続けるが……だんだんとその勢いは無くなっていった。
やがてソエラの動きが完全に止まる。
……今だ!
「オッ……ラァ!!」
ドゴッ!
「グホオオオ!?」
大きな隙を晒したソエラに、渾身の後ろ回し蹴り込みを決めた!
彼は大きく吹っ飛び、アシュリーが寝かせられていた祭壇に叩きつけられる。
そして、そのまま起き上がる事無くグッタリと倒れ伏した。
「ゼエ……ゼエ……ハア……」
なんとか戦いは終わったようだ……だが、まだだ。
僕は部屋を見渡してナイフを探す。
「……あった」
キラリと光っていたそれを拾い上げて、僕は倒れているソエラに近寄る。
「お前をここで生かしておいたら……
またアシュリーか他の誰かを狙うんだろ?」
悲劇を終わらす為に、明日も安心して友達と話す為に。
僕は奴目掛けて刃を振り下ろし……
「かかったなアホが!」
ズバッ!
「なっ……!?」
……切られた?
ナイフを下ろそうとした瞬間、
ソエラは起き上がり、僕を何かで切りつけてきた。
腹から左肩にかけて衝撃と痛みが走る。
「クハハハ! 油断しましたねぇ!
私の気絶したふりに見事に引っかかてくれてありがとうございます!」
「なるほど……やられたな」
ソエラは高笑いしながら右手に持った儀式用のナイフを掲げた。
叩きつけられた時のどさくさで拾ってたのか……!
僕は切られた箇所を抑えて片膝を着く。
「今の一撃は相当効いたでしょう! 致命傷は確実と行った所ですかね」
「ああ……本当に本当に」
僕は立ち上がり、両腕を開いた。
「効いてないんだよね。全然」
腕が退けられ、露わになった僕の胴体には傷一つ無い。
「な……!? ば、馬鹿な……俺は確かに……手応えもあった!」
「僕が今着てるこの服さ……防刃性能付きなんだよね」
……ありがとう、アシュリー。
君がこの服をくれてなかったら僕は死んでたよ。
「んだと!? 都合よくそんな装備を……!」
「確かに都合が良すぎるかもね……
まあ、きっとこれも神様が決めた運命って奴なんじゃないの?」
「っ……! ほざくなあああああああああぁぁぁ!!!」
最後のあがきと言わんばかりに、ソエラは切りかかってくる。
「胴が駄目ならその首を掻っ切ってくれる!!」
「クッ……!」
ピリッ!
皮一枚で回避するが……目の下に微かな痛みが走る。
顔の傷程度……何も問題は無い。
「……この野郎!」
スパン! ドサ!
「ウグッ!」
避けた勢いを利用した足払いが決まり、ソエラは背中から地面に落ちる。
「せっ!」
ガシッ!
倒れた所にトドメを刺そうと、ナイフを下ろすが……ソエラの両腕に阻まれる。
「いい加減に……しろよ……!」
「ふざけるな……! こんな、こんな所で終わってたまるかぁ……!」
……あと、あと数cmナイフを押し込めば、ソエラの心臓は貫かれる。
「ソエラァァァァァァアアア!!!」
「ぬあああああああああぁぁあぁぁあ!!!」
「オラァァァ!!」
ガツン! ザスッ。
「……ッ!!?」
釘を打つかのように、左拳をナイフの柄に叩きつける。
そうするとナイフの刃が半分程ソエラの身体に沈んだ。
……ようやく、勝負有りだ。
「これで! 終わりだ! クソ教祖が!!」
ザスッ! ブシュッ! ズバァ!
「ガアアアアアアア!?!?」
一度刺してしまうと、押し返す力は無くなった。
それを良い事に僕は何度も何度も何度も刺し、その度に血を浴びる。
「ハア……ハア……」
ドサッ……
断末魔が聞こえなくなったあたりで、僕は全身の力が抜けて仰向けに寝転んだ。
精神も肉体もとっくに限界を迎えていたのだろう。
「……なんだ、よ……やっぱり……神様なんて……居ないじゃねえか……」
そんな声が隣から聞こえた。
あれだけ刺したのにまだ喋れるとは、しぶとい奴め……
「お前は……本気でホルシド教を信じてる訳じゃ無かったのか……?」
僕の言葉に返答は無い。
首を動かすと、ピクリとも動かないソエラが目に入る。
……今度こそ本当に死んだか。
「……僕も死にそうなくらい疲れたな」
そのまま、僕の意識は闇に落ちていく。
心配はいらない、少し寝るだけだ。
今日は本当に……色々有りすぎたな……
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