上 下
34 / 39

第34話 自由だ、本当に

しおりを挟む
「……全ては僕を縛るくだらない戯言だった」

僕は返り血を浴びながら呟く。

「ゴフッ……馬鹿な……報告では人殺しの覚悟すらないガキだと……やめろ……そんな冷たい目で見下すな……!」

男は血を吐き出し、自らが出した血の海に溺れている。
可哀想だと思わなくも無いが、他人への情に縛られるなんてアホらしい。

「冷たい……?  そうかな。僕は自分の殻を一つ破れて気分が良いんだけど」

少し前に、
『本当に嫌な事を強制された時は何をしてでも逆らってやる』
とか決意したよね。

実際僕は他人に奪われるっていう本当に嫌な事を、
人を殺して逆らってみせた訳だ。
……自分の決めた事を実行できるってこんなに嬉しい事だったんだな。

「あー……アッハッハッハッハッ!」

笑いが止まらない。
今まで他人に奪われてきた自由や尊厳を一気に取り戻せたようだ。

「こ、コイツ人刺して笑ってやがる……!  ヒイイ!」

信者が一人逃げた。
まあそんな事はどうでもいい。
だって僕は本当の意味で自由になれたんだから。

「さあさあ……今の僕は世界で一番自由なはずだよ!  
そんな僕を止められるのかなぁ!?」

「うおお!」

起き上がった信者の内、一人が僕に向かって剣を振り下ろす。
その攻撃を避けて相手の懐に入り込み、ナイフで首を突き刺す。

「へ……ヒュ」

男の首に穴が空いて血が吹き出す。
なんだよ……自由にやったらこんな簡単に勝てるんだな。
今まで同じ人間だからって特別扱いしてたのが馬鹿らしくなってくる。

「う、うおおお!」
ガシッ。
「おっと」

槍を持っていた男が僕に組み付いてきた。
このままだと押し倒されちゃうな。

「えいっ」
ザスッ!
「……!?」

首の後ろ、盆のツボと呼ばれる急所に一突き。
みるみる内に掴む力は弱まっていく。

ドサッ。
「さて……最後はお前だな」

力無い死体を容易く振りほどいて、僕はナイフの男に向き合う。

「クソッ……!  お前も殺しを楽しめる奴かよ……!」
「別に殺しは楽しんではないよ。
自由の素晴らしさに感動はしてるけど」

僕がそういうと、男は少し表情を曇らせた。

「……う、嘘つけよ……目はたしかに冷たいけど口元が笑ってるじゃねえか!」

「だからこれは自由にやれてるのが嬉しくて……」

「うるせええぇぇ!  俺は他人を殺すのは好きだけど
殺されそうになるのは嫌いなんだよおおお!」

男は錯乱し、僕の言葉を遮るように叫ぶ。

「ははは、クズ過ぎ。でも自由なのはいいね」

「ああああああああぁぁぁ!」

男がナイフを突き出して走ってきた。

「でもね……他人の自由を、奪おうって言うなら」

僕は男の攻撃を避けて、その腕を突き刺す。

「……あああ」

男は武器を取り落として、ガックリと膝を着いた。
戦意を失ったのか、武器を拾い直そうとはしない。

「自分も奪われる覚悟をしなくちゃね。
……今だって、僕は君に殺される覚悟で戦ったよ」

「このイカレ野郎が……」
バシュ。
「お互いに自由にやった結果だ。文句は無しで頼むよ」

僕は男の首を切り裂いてトドメをさした。

「あー……ハハハ、なんだよもう終わりか。あっけな」

僕はジャケットの袖で顔に着いた血を拭う。

「さて行くか。
どうせまた信者が邪魔してくるだろうけど、返り討ちにしてやればいいし」

やりたい事は戦いじゃない、アシュリーを助ける事だ。
僕は建物へと突入した。



アローン君今まで割と普通の主人公だったのに一気に自由厨になっちゃった……
そんな彼も良いと思う人は応援よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。

のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。 俺は先輩に恋人を寝取られた。 ラブラブな二人。 小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。 そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。 前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。 前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。 その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。 春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。 俺は彼女のことが好きになる。 しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。 つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。 今世ではこのようなことは繰り返したくない。 今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。 既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。 しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。 俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。 一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。 その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。 俺の新しい人生が始まろうとしている。 この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。 「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

エロゲーの悪役に転生した俺、なぜか正ヒロインに溺愛されてしまった件。そのヒロインがヤンデレストーカー化したんだが⁉

菊池 快晴
ファンタジー
入学式当日、学園の表札を見た瞬間、前世の記憶を取り戻した藤堂充《とうどうみつる》。 自分が好きだったゲームの中に転生していたことに気づくが、それも自身は超がつくほどの悪役だった。 さらに主人公とヒロインが初めて出会うイベントも無自覚に壊してしまう。 その後、破滅を回避しようと奮闘するが、その結果、ヒロインから溺愛されてしまうことに。 更にはモブ、先生、妹、校長先生!? ヤンデレ正ヒロインストーカー、不良ヤンキーギャル、限界女子オタク、個性あるキャラクターが登場。 これは悪役としてゲーム世界に転生した俺が、前世の知識と経験を生かして破滅の運命を回避し、幸せな青春を送る為に奮闘する物語である。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...