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第27話 解放①

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VS
ハウンド家長女専属召使い・ジョージ
ハウンド家召使い見習い・デップ

「うおらあ!」
「ふっ……」

僕は感情のまま突撃し、ジョージに向かって棍棒を横に振るうが、軽く躱されてしまう。
おまけに、体勢が崩れてしまい隙だらけになってしまった。

「はあっ!」

ジョージはその隙を狙って警棒を振り上げる。

「くっ……」

無理やり上半身を逸らして避けたが、
無理な姿勢を取ったせいでさらに体勢がくずれてしまった。

「どっせい!」
ドンッ!
「うおおお!?」

デップが脇から飛び出してきて、僕に体重を活かした体当たりを食らわす。
僕は吹っ飛んでゴロゴロと地面を転がった。

「セイッ……!」
「くっ……!」

容赦なく追撃に来たジョージに、
起き上がり様に横なぎに棍棒を振って迎え撃つ。

防御したジョージの警棒は弾き飛ばされ、
カランカランと音を立てて地面に転がる。

「おっと……!」
「よし……!」

無防備になった彼に一撃お見舞いしようとするが……

「うおお!」
「クッソ……!」

デップが割って入り、僕に組み付いてくる。

「危ない所でした……!」

僕が身動きを封じられている間にジョージは警棒を拾い直してしまった。

「離せっての!」
ゴッ!
「ブフゥ!」

デップの腹に膝蹴りを入れて引き離す。
……状況はリセットされたけど。
二人が上手い具合に連携して来て隙が生まれないぞ……!

「はぁ……はぁ……五人より二人の方がキツいとか……量より質ってことかよ」

一対一なら負ける気はしないんだけど……
僕は改めて彼等を観察してみる。

ジョージの方は細身だし歳だけど……立ち振る舞いに隙が無い。
この前僕が勝ったからか、更に気を引き締めているようだ。

一方デップの方は体格が良いし若いけど……結構隙だらけだ。
倒すなら彼の方からか……?

「ハッ!」
ゴンッ!

動かずにいると、ジョージが警棒を大きく振り下ろして来た。
僕はそれを受け止めながらも、デップの方を見る。
……あ!  こっちにタックルしようとして来てやがる!

「チッ……!」

僕はバックステップで下がる。
まともに連携を食らってはいられない。
さっさとどうにかしないと……!

「お前も切り込んで来いよ!  『縮地』!」
「へっ!?」

僕は縮地で一気に距離を詰めてデップに襲いかかる。
そして彼の丸鼻目掛けて棍棒を……!

「デップ君!  『魔縄』!」

振ろうとした瞬間。
ジョージが魔法を唱え、僕の棍棒に縄を絡めて、動きを止めた。

「カバーが万全過ぎるっての……!」

僕はナイフで即座に縄を断ち切り、挟み撃ちの形になる前に大きく下がった。
状況は再び振り出しに戻る。

「……くっ」
「坊ちゃん。これが本当の二対一と言う物ですよ。魔物やホルシド教のような寄せ集め達とは違う、本当に連携を取っている者の動きです」

ジョージが余裕の表情で言う。
……確かに、彼等の連携は見事だ。

それにジョージの言う通り、本当の意味で二対一の状況にされている。
正直、今まで相手した中で一番手強いな……

「そろそろ終わらせましょうか、デップ君!」
「はい!」
「おいおいおい……!」
「『魔縄』!」
「うおおお!」

ジョージとデップが同時にこちらに突撃して来た……!
オマケに魔縄も僕に向かって伸びてきていて……
こんなのどれを対応してもどれかは喰らう!  防ぎきれない!

「くぅぅ……!」
グルグル!

まず僕を縛ろうとしていた魔縄を防ぐ。
棍棒が巻き取られて動きが制限された。

「ふっ……!」
「おお……!」
グイッ!  ゴッ!

ジョージが僕の頭を狙って警棒を振るう。
僕は縛られた棍棒を空いた手で強引に動かし、これもなんとか防いだ。

「おりゃあああ!」
ヒョイ!
「くっ……やっぱりか……!」

二撃は防げても、三撃目となるデップのタックルにどうする事も出来ず、僕は軽々と持ち上げられた。

「ふー……!」
グルグルグルグル!
「うわわ……目が回る……!」

デップは僕を持ち上げたまま回転しだし……

「うおりゃあ!!」
ブォン!  ベチィン!
「ガッハ……」

そしてそのまま、僕は地面に叩きつけられた。
遠心力を伴った勢いのある投げ。

背中が痛い、痛過ぎる。
骨にヒビが入ったんじゃないかと思うくらいに。

「くっ……レンガ地面でそんなプロレス技みたいなのやっちゃダメだって……」
「よっしゃあ! やったぞ!」
「デップ君。今のはかなり良かったですよ。
さて、坊ちゃん。そろそろ終わりですか?」

二人はこちらを見下ろしている。
……舐めるなよ。

「なあ……デップ……今の投げは中々効いたよ……」
「?  光栄です……?」
「ジョージの教育が良かったんだろうけどさ……
やっぱり師匠と弟子は似るもんだよな……!」
「……どういう意味でしょうか」
「お前ら二人共……爪が甘いんだよ!」

僕はジャケット裏に仕込んでおいた光の魔導書に手を触れた。
……これで!条件は満たした。

「そらよ!  『閃光』!」

カッ……と光が周囲を包み、一瞬だけ世界は真っ白になる。

(しまった……!?  目潰しか……!)

「オラァ!」
ザスッ!
「……ッ!」
「デップ君!」

光が消えた時、僕のナイフはデップの右腕を突き刺していた。

「流石のお前でも……見えなきゃカバーできなかったみたいだな?」

僕はジョージにそう笑ってみせた。
ここからようやく、反撃の時間だ。
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