ゲーム世界の悪役貴族に転生したけど、原作は無視して自由人キャラになります

芽春

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第24話 信者達

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ドアを開けると、黒いローブに黒フードを目深に被った
全く同じ格好の五人組がテーブルに何かを広げて会議をしていた。

「……!」
「どうも、ホルシド教の皆さん」

僕が宣言すると、彼等はそれぞれ武器を取りだして構えた。
話し合い……なんて言っていられる雰囲気じゃないな。

「……フンッ」
ドガッ!
「おお!」

一人が椅子を蹴り上げてきたので、僕は大きく右に動いた。
僕が出入口から退いたからかドアは閉められた。
「逃がさない」そう言われているようだ。

「五体一か……ゴブリン達の時よりは全然マシだけど……」
「……」
ヒュン!
ガッ!
「……マジかよ」

何かが飛んできたのを見て、身を躱す。
何か音がしたのでそちらに視線を移すと壁にナイフが深く突き刺さっていた。
本気で殺す気じゃないか……

「……『鑑定』!」

せっかく大枚はたいて買ったのだ。
僕は鑑定を発動させ、ナイフを投げてきた男を見つめた。
一瞬の内にステータスウィンドウが空中に浮かぶ。

-----------------------------------------------------------------------------------------
名前:???
種族:人間
年齢:??歳
HP:30/30
MP:50/50
腕力:15+2
↳攻撃力:17
体力:10
魔力:11
敏捷:10
頑丈:8+2
↳防御力:10
スキル
ナイフ術Lv1
闇魔法Lv1
補助魔法Lv1
無慈悲
-----------------------------------------------------------------------------------------

「なるほどねぇ……」

個人情報の部分は偽装されており何も分からない。
ステータスは魔力が高く、それ以外は標準という感じだ。
俊敏や頑丈は僕の方が上回っているしな。

「……『黒弾』」

五人組の内誰かがそう唱えると、僕に向かってふよふよと黒い球体が飛んで来る。
「よっと」
大したスピードではないそれを僕は難なく避ける。

ボシュン!
「ん?」

ちょうど壁に刺さっていたナイフに当たったようで、球体が破裂した。

ジュン!  ボロボロ……
「おいおいおい……」

かと思うと、ナイフが炭化してしまったかのように黒く染まってから崩壊した。
……これ人体に当たったらどうなるんだよ。これが闇魔法の力って事か……?

「うおお!」

避けて体勢が崩れた所を狙ったのか、威勢のいいのが一人突っ込んで来る。

「そろそろ反撃しないとな……!  『縮地』!」
スパン!
「ゴッ!?」

素早く距離を詰め、棍棒を額に叩き込むと
空中で半回転して地面に沈んだ。残り四人。

「ガッ!」
「おらぁ!」

ヒュン! ヒュン! 一人が倒れると、残り二人が同時にナイフを投げつけて来る。

「うおっ!」

僕はその場にしゃがみこんで回避する。

「随分飛び道具が好きみたいだな!  ほらよ!」

お返しに、椅子を掴んで放り投げる。

「フンッ!」

だが、椅子は信者の男が持っていたメイスに叩き落とされた。

「そりゃああああ!」
バキィ!
「ゴフゥ!?」

そして僕は防御が不可能になった一瞬の隙をついた
飛び膝蹴りを信者の顔面にお見舞いする。
バタン! 顔を押さえることすら出来ずに崩れ落ちた所で……

「ふぬう!」
「くっ……離せ……!」

僕は着地の隙をつかれて後ろから左腕を掴まれてしまう。
そのまま身体を捻られ部屋の中央を向かされた。

目の前からは残りの二人が武器を構えて近づいてきている。
さっさと抜けないとヤバい!

「このっ!」
サシュ!
「……ッ!」
「セイッ!」
ガッ!  ドスン!
「……!?!  ッ!」

自由だった右手でナイフを取りだし、掴んでいた男を浅く切りつける。
緩んだ拘束から抜け出し、ついでに足払いをかける。

男は腰を打ち付けたようで、悶絶しだす。
よし、起き上がる様子は無いな。

「後二人って所か……」

僕は振り返り、二人の姿を確認する。
一人は杖、もう一人は剣を構えて、僕を殺意のこもった目で見つめている……

「ハアア!」
カァン!
「……!」

剣の男が仕掛けてきた。
彼は僕の頭を狙って剣を振り下ろしてきて、
僕はそれをナイフで受け止めてみせる。

「……ふうう!」
「……うおお!」

鍔迫り合いのような形になり、剣とナイフを擦り合わせたまま押しあったり、
その場で回ったりする。……杖の男が来ないな?

「……フッ。『黒弾』『黒弾』『黒弾』!」
「何ッ!?」

僕がちょうど奴に背を向ける形になったタイミングで、
彼は黒弾を放ってきやがった。
しかも三発もだ。
幾ら弾速が遅いとはいえ、このままじゃかわせないぞ……

「ぬぅぅぅぅ!」
シャアアアン!
「……!?」

僕はナイフを滑らせ、鍔迫り合いの形を無理やり終らせる。
いきなり力の行き所を失った為に、剣の男は前によろめいた。

「ちょうど良い所に来たね!」
グッ!

僕は素早く彼の背後に回り、羽交い締めにして拘束する。

「なっ……まっ……!」
ボン! ボン! ボボン!
「ガァァァァァァアアアアア!?」

三発もの黒弾は剣男の胸元に命中、もの凄い苦痛の悲鳴が小屋に響き渡る。

「っ……馬鹿な!?」

杖の男が狼狽えたのを見て、僕は剣の男を床に放り投げた。
剣男は胸元を押さえてのたうち回っている。
……やっぱり人に向けていい魔法じゃなかったな。

「最後!」
ドスッ!
「グッ……ゴホッ……!」

杖男の鳩尾に拳を入れると、彼は膝を着いた。
僕はそんな彼の胸ぐらを掴んで持ち上げる。
ついでに、刺すつもりは無いけど喉元にナイフを突きつけて。

「さあ……これで全滅だ。色々と話して貰わないとな」
「……フッ」
「……?」

こんな状況にも関わらず、杖男は笑みを浮かべている。
……意味が分からない。

けど、その笑顔はまるで自分の勝ちを確信しているかのような、
そんな余裕の笑みに見えた。
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