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第17話 因縁

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村長さんに泊めてもらい、迎えた翌朝。
今は彼に別れを告げて家を出る所だ。

「それじゃ……お世話になりました。
アシュリーにもちゃんと伝えておきますから」
「ああ、君ならいつでも歓迎さ。
せっかくだし出口まで見送ろう」

村長と僕は並んで村の出口まで歩く。

「それじゃあこの辺で……ん?」

村を去ろうとしたその時、視界に幾つか緑色の生物が目に入る。

「あいつらは……」
「あれはゴブリンの略奪グループです!」

村長がハッと青い顔になってそう叫ぶ。
なるほど、前に森で出会ったのよりも人に近い姿のも混じってる。
武器だけじゃなく鎧も着けてるし……手強そう。

「hihihi……!」
「門番は……あれ?  いらっしゃらない?」

門番の人がどうにかするかと思ったが、どういう訳か誰もいない。

「逃げましょう! 今戦える人達を呼んできますから!」

村長が悲痛に叫ぶが、僕は目の前の敵達を観察使続ける。

「……」

数は10か。今まで相手した中じゃ一番多いな。
……面白くなってきた。
こんな状況でクールに村を救ってこそ自由人キャラっぽいじゃあないか!

「けど、ここで逃げたら村に被害がでますよねぇ?」

グループの中には弓を持った個体もいる。
僕が背を向けたら村に被害が出てしまうはずだ。
そんなの許せねぇよなぁ!?

「宿と食事の恩を返す時なんて……今以外無いよな!」
「待ってください!」

村への被害なんて許さない、余裕の勝利を収めてやる。

「グゲゲゲゲ!」
「ギャッ!」

ゴブリン達は主役は自分達だと言わんばかりに笑い声を挙げている。

「ガッカリさせんなよ!」

まずは前にも倒した事ある普通のゴブリンだ。
姿勢を低くし、走りながらゴブリン共の首筋を狙う。

「1」
「プシッ!」
「2」
「ギョボッ!」
「3、4、5!」
「ゴポゴポ……!」

僕があてがった刃はあっさりとゴブリンの首を切り裂き、
奴らは血を吹き出して倒れていく。

「前より良く動けてるな……昇格試験で色々あったし成長したのかな?」
「グギャ!?」

おっと、今は自分の成長よりも目の前のゴブリン共を相手しなくちゃ。
残っているのは僕と同じくらいの身長をした奴ら。
たぶんさっきまで相手にしてた小人サイズのよりは強いはずだ。

「シッ!」
「グプ……」

まず、一体。
仲間を殺られて戸惑っている、ゴブリンの首に風穴を開けた。

「ギエエ!?」

周りのゴブリン達は気を取り直し、僕を脅威とみなしたようだ。
奴らは揃ってマヌケな声を挙げる。

「グッ……!」

一体が弓矢を構えてきた。
ちょっと矢は避けれるか分からないな、距離も近いし。

「……これで!」

首元を押さえ崩れ落ちかけていたゴブリンの死体を支え、
自身の身を射線から遮る。

「ギッ!?」

そして死体を盾にして突き進み、距離を詰めていく。

「……グギャア!」

ゴブリンは一瞬の間を置いて弓を引いた。
おいおい……仲間の死体ごとやる気か?

「そらよ!」
ドスッ!
「ギャア!」

死体の腹部に蹴りを入れ、どっしりした肉の塊を飛ばす。
肉の塊は矢を受け止めて、しかし勢いは弱まることなくゴブリンに直撃した。
弓ゴブリンは仲間の死体にのしかかられ行動不能になる。

「ギ……!」

残った三体の内、二体は戦意を失ったようで、
逃亡を選んだようだ。
だけど、最後の一体は違うらしいな。

「ギエエ……」

残ったのはグループの中央にいた一際目立つ大剣持ちの個体だ。
先の二名と違い、構える事を選んだのはリーダーとしてのプライドだろうか?

「最後は一騎打ちか。悪くないな」

僕はゆったりと距離を詰め、対峙する。

「グオオ!」

一撃で決めようと、リーダーは大剣に全体重を乗せ振り下ろしてくる。
まともにくらえば右と左に両断されるだろう一撃だ……けどな。

「そんなの当たるかよ」

僕は簡単に身を躱し、大剣は地面だけを切り裂く。
幾らリーダーでも所詮はゴブリンか。
どう来るか分かりやす過ぎる。

「グッ!」

リーダーは剣を返そうとするが……

「フンっ!」
ドゥン!

大剣を踏みしめ、動きを止めてやった。
リーダーと目が合う。
「馬鹿な」そう言いたげな顔だ。

「はあっ!」

ナイフをゴブリンの右腕に突き刺す。

ザスッ!
「ガアア!」

右腕を負傷し大剣を持ち上げられなくなったのか、
ゴブリンは手を離し後ずさる。

「……もう終わりか」

ズバッ!

「ガ……」

ナイフの刃を地面と水平に向け、縮地の勢いを乗せた一閃を放つ。

ボトッ。プシャアア……

リーダーの首はグラりと地面に落ち、
緑色の肉から、赤い血がスプリンクラーのように吹き出た。
その血は僕の背に降りかかり、ベットりとした不愉快な感覚だ。

「私は……何を見ていたのだ……?
まるで猟犬だ……敵を仕留めるよう訓練された……」

村長さんは感動してくれてるようだけど……
ちょっとカッコよく決めようとしすぎたな……服洗わないといけないなぁ、コレ。

「さて……それじゃあ危機も去ったようですし……さようなら」

僕は一度だけ振り返り、別れを告げた。
そう、できるだけなんでもない事かのように振る舞うのが大事なのだ。
例え背中に血を浴びまくってても。

「……これはどう言う事です?」

そんな事を思ってたら、村の奥から武装した集団がやってきた。
一番前に立ってるのは……あのソエラとか言う奴だ。

「ああソエラさん……彼が一人で全てのゴブリンを片付けてくれたのですよ」
「……なんだと?」

彼は凄い速さでこちらに詰め寄ってくる。

「お礼ならいりませんよ。泊めてもらった恩返しですし」
「……リバティーとか言いましたね。随分余計な真似をしてくれた事だ」

……おや。
どうやら感謝の気持ち等は無いようだ。

「余計?」

「こういった事は我々の仕事なんですよ。
人の仕事を横取りするとは……随分意地汚いもので」

「ならもう少し真面目に仕事をしろよ。
来るのが遅い、村に被害が出る所だった」

「『ありがた迷惑』という言葉も知らないのですか?  
想定に無い事をされると手間なんですよ」

「主語が足りないな?  『私だけが』迷惑なんですって言えよ」

「……!」
「……!」

視線で殺そうとしてるのかと思うほど、ソエラは鋭く睨んでくる。
僕も負けじと睨み返す。
なんだコイツ……?

「ま、まあまあ!  お二人とも!  何はともあれ被害が出なかったんです。
それでいいじゃないですか。
それにリバティーさんもずっとここにいるわけじゃないんだし、ソエラさんの仕事は無くなりませんって」

引かずに睨み合う僕らを割って、村長が仲裁に入ってくれた。

「……チッ!」
ダンッ!

ソエラは思いっっっきり大きく舌打ちをした挙句、地団駄を踏む。
うわ、大人気な……

「リバティー。自分の幸運に感謝しなさい。
時間さえ許せば3時間程説法を説いてやったのですが……
私は今日忙しく、貴方に構う時間は無かったのでね」

そう吐き捨て、ソエラは背を向けた。
どうやらこれ以上あいつには絡まれなさそうだ……

「だが、貴方の名は覚えましたよ。いつの日かその自惚れた心に神罰がくだるでしょうね」

ソエラは地面を踏み鳴らしながら部隊を引き連れ去っていった。
……言うほど自惚れてるか僕?
自由人キャラっぽくなるように振舞ってるだけなんだけどな。

「なんだったんだあの人……?」
「色々とすみません……」
「村長さんが謝る事は無いですけどね」
「ああなった彼は根に持ちますから……
しばらくはこの村に来ない方がいいでしょう」

親切に忠告して貰えたが、あんなくだらない奴を気にして何が自由人か。
来る理由が出来たら何も気にせず来てやる!

「……まあ、さようなら。アシュリーにはよろしく言っておきます」

こうして僕はアシュリーの故郷に色々な疑問を持ちながらも、
ひとまずは村を離れるのだった。



この話一人称私の人多くね?

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