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第8話 毒虫の洞窟②
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「また来るのがこんなに早いとは思わなかったな」
アシュリーと一緒に洞窟に入る。
昨日と変わらず不愉快な場所だが少し慣れたような気もしている。
なぜなら、鳥肌がそこまでたってないから。
「『着火』」
そしてアシュリーは昨日と同じく松明を灯す。
「私達の目標はオオムカデ。まずソイツを仕留める。出来るだけ急いで」
「分かった。先導をお願い」
「ん」
僕はアシュリーの後を追って洞窟を歩き。
…………何事も無く、分かれ道にまでたどり着いた。
「おー。もう蜘蛛の巣が元に戻ってる。自然の強さを感じるなぁ……」
「そうだね。でも、今日進むのはこっちだから関係ない」
「うん、心してかかろうか」
アシュリーがオオムカデが出る方の道を指さした。
目的はすぐそこだが……油断したら大怪我じゃあすまないだろう。
「念の為僕が先に行くよ」
「……ダメ。危ない」
「いーや、僕は『縮地』で回避しやすいし、
万が一があっても回復魔法が使えるから。僕の方が向いてる」
「……分かった」
僕はアシュリーの言葉を押し切り、松明を受け取った。
照らされた通路の奥からは強い気配を感じる……
ほんの少しだけ身体が震えてくるが、この程度の恐怖に負けているようじゃ、
この世界で一人自由に生きるなんて夢のまた夢だろう。
やってやる。
「じゃあ……行こうか」
深呼吸して、身体の震えを止めた。
僕達は意を決して先に進む。
ズルズル……。
「……この巨大な何かが這う音。そろそろだね」
「ん。気をつけて。噛まれたら大怪我するうえに毒まで受けるから」
ピタッ。
音が止まる。通路のど真ん中、ソイツは番をするように立ち塞がっていた。
「……!」
暗闇から現れたのは、もちろんオオムカデ。
奴はこちらに気づくと上半身だけを起こし、こちらを見下ろしてくる。
上半身だけでも2~3mはあるだろう。名前の通りの巨大さだ。
「キシャアア!!!」
VS毒虫の洞窟内上位種・オオムカデ
「縮地!」
オオムカデは不愉快な鳴き声と共に飛びかかってくる。
僕は鳴き声に反応して右に躱す。
「何食ったらそんなに大きくなるんだよ?」
躱した僕は、オオムカデの背を押さえつけるように踏みしめた。
だが、硬い殻に阻まれているのかダメージは無さそうだ。
「syaa!」
それでもアシュリーの方へ行かないよう足で拘束し続けると、オオムカデが再び鳴く。
「ぶっ!?」
奴は尻尾? だけを器用に動かし、
鞭のようにしならせた下半身で僕にビンタしてきた。
僕は左頬に強烈な衝撃を受け、思わず足を離してしまう。
「……の野郎」
「リバティー。下がって」
僕が気合いを入れ直そうとした所に、アシュリーの声。
ここは素直に応じて後ろに下がると、彼女は左腕をオオムカデに向かって掲げた。
「……『猛炎』」
そう呟いた瞬間、アシュリーの左腕から炎が勢い良く迸る。
その絵面を見て、僕は前世で読んだ某世紀末漫画の
火炎放射器を思い出した。
「!? ギシャアア!!」
ドサッ。
全身が炎に包まれたオオムカデは断末魔を挙げて倒れ伏した。
やはり汚物は消毒すべきだな……
「……ん」
「うわ凄いドヤってる。無表情なのにここまで感情を伝えられるなんて……」
「素直に褒めて」
「……まあ、あの炎魔法は僕には真似出来ないよ」
「つまり?」
「スゴい!」
「んふー……!」
うーんこの満足気な顔よ。
すこし頬をつねってやりたくなる。
「じゃあ、後は炎が消えたら素材回収しよう……か?」
チラッと、燃えるオオムカデの方を見た。
……まさか、まだ生きてる?
「……g……」
奴はほとんど音を立てずに起き上がりやがった。
「……ん? リバティー?」
「!」
「キシャアアア!!」
「えっ……!?」
「うおおおお!」
オオムカデは最後の抵抗と言わんばかりにアシュリーに牙を剥く!
キンッ!
「……しぶてぇ奴」
「Gya……!」
オオムカデの噛みつきをナイフで防御した。
奴はナイフをそのまま噛み砕こうと言うのか、牙に力を入れる。
「大人しく燃えとけっての」
ドスッ!
僕は左手の松明で奴の腹を殴りつける。
「……u!」
そして一瞬だけ噛む力が緩んだのを見逃さず、口からナイフを引き抜く。
「終わりだ」
ザシュ!
引き抜いたナイフを突き上げる。
刃はオオムカデの顎を貫通し、さらに頭を穿った。
奴の脳天から飛び出した刃が見える。
「キシャアアアアアアアアア……ア!」
ドサッ。
オオムカデの悲鳴が洞窟内にこだまする。
だが、それも数秒と経たずに消えて。
静かになる頃には魔法の炎も鎮火していた。
「ふう。最後まで油断するべきじゃなかったな」
「そんな……? なんで?」
「どうした?」
アシュリーが目に見えて分かるほど狼狽えている。
確かに驚きの生命力だったけど、そこまでショックを受けるほどか?
「……いつもなら『猛炎』一回で倒せてたの。でも今回は……違った」
なるほど。アシュリーらしくない油断は積んだ経験がアダとなっていたのか。
「そういう事もあるんじゃないの? 魔物だって生き物なんだし。
個体差って奴じゃない?」
「……」
アシュリーは屈んで、オオムカデの遺体をジッと見つめて観察している。
たぶん納得していないな。まあいいか、とりあえず……
「素材回収しよう? 僕も出来るだけ手伝うからさ」
「……ん」
僕達は倒れたオオムカデの死体をナイフで切り裂いていく。
武器がナイフだとこういう時に横着できていいな。
「ふー……!」
殻や牙など使えそうな部位は回収出来た。
……全体的に煤けてるけど洗えば大丈夫だろ。
「それじゃあ、帰る?」
「……あ。いや、まだ帰らない」
何かを思い出したような顔をするアシュリー。
「個人的な理由で蜘蛛の糸が必要」
「それじゃあ、また奥の蜘蛛を狩らないとね」
「……今日は、一人でやる」
「? まあ、アシュリーがそう言うならそれでいいけど……」
だからと言って一人で帰るのもなんだかなぁ……。
そう思った僕は彼女が蜘蛛を狩るのを見守る事にした。
「ふっ……んっ!」
相変わらず表情は硬かったが、その様子はどこか楽しそうで、
ワクワクしているように見えた。
*
僕達は仕事を終え、冒険者ギルドに戻った。
昼に仕事を始めたせいか、空はかなり暗くなっていて。
ギルドの照明が目に刺さってくる。
「いやー……すっかり暗くなっちゃったね」
「ん……リバティー。申し訳無いんだけど、幾つか頼まれて」
「何かな?」
「私の代わりに素材を提出して欲しい、報酬は後日受け取る。
……それと……明日の午後三時くらいに、商店街の裁縫屋に来て欲しい……」
「もちろんいいよ。明日の午後三時ね、わかった」
「ありがとう。それじゃ今日はこれで……」
アシュリーは足早にギルドから去っていく。
僕はそれを見送ってから、素材の提出に向かった。
「お願いします」
「はい、承りました。
それにしても……本当に仲が良いですね。
とても昨日知り合ったとは思えない様子でしたよ」
「そうですかね……?」
「えぇ、だって明日の午後三時……でしたよね?
二日でデートに誘われるまでになったなんて、人たらしですねー」
「デ……デ?」
確かに、言われてみればそうじゃないか。
……どうしよう。
前世含めてそう言う経験は無い。
だから不安が……けど。
それよりずっと楽しみだな!
「あはは……それじゃあ受付さん。
明日は健全に楽しんで来るんで、また明後日会いましょう」
「ええ、さようなら」
「ああ、それと……」
僕はその後受付嬢さんにアシュリーの伝言を伝え、
彼女の分の報酬を預けてから宿に戻った。
明日を楽しむ為にも、早く休もう。
アシュリーと一緒に洞窟に入る。
昨日と変わらず不愉快な場所だが少し慣れたような気もしている。
なぜなら、鳥肌がそこまでたってないから。
「『着火』」
そしてアシュリーは昨日と同じく松明を灯す。
「私達の目標はオオムカデ。まずソイツを仕留める。出来るだけ急いで」
「分かった。先導をお願い」
「ん」
僕はアシュリーの後を追って洞窟を歩き。
…………何事も無く、分かれ道にまでたどり着いた。
「おー。もう蜘蛛の巣が元に戻ってる。自然の強さを感じるなぁ……」
「そうだね。でも、今日進むのはこっちだから関係ない」
「うん、心してかかろうか」
アシュリーがオオムカデが出る方の道を指さした。
目的はすぐそこだが……油断したら大怪我じゃあすまないだろう。
「念の為僕が先に行くよ」
「……ダメ。危ない」
「いーや、僕は『縮地』で回避しやすいし、
万が一があっても回復魔法が使えるから。僕の方が向いてる」
「……分かった」
僕はアシュリーの言葉を押し切り、松明を受け取った。
照らされた通路の奥からは強い気配を感じる……
ほんの少しだけ身体が震えてくるが、この程度の恐怖に負けているようじゃ、
この世界で一人自由に生きるなんて夢のまた夢だろう。
やってやる。
「じゃあ……行こうか」
深呼吸して、身体の震えを止めた。
僕達は意を決して先に進む。
ズルズル……。
「……この巨大な何かが這う音。そろそろだね」
「ん。気をつけて。噛まれたら大怪我するうえに毒まで受けるから」
ピタッ。
音が止まる。通路のど真ん中、ソイツは番をするように立ち塞がっていた。
「……!」
暗闇から現れたのは、もちろんオオムカデ。
奴はこちらに気づくと上半身だけを起こし、こちらを見下ろしてくる。
上半身だけでも2~3mはあるだろう。名前の通りの巨大さだ。
「キシャアア!!!」
VS毒虫の洞窟内上位種・オオムカデ
「縮地!」
オオムカデは不愉快な鳴き声と共に飛びかかってくる。
僕は鳴き声に反応して右に躱す。
「何食ったらそんなに大きくなるんだよ?」
躱した僕は、オオムカデの背を押さえつけるように踏みしめた。
だが、硬い殻に阻まれているのかダメージは無さそうだ。
「syaa!」
それでもアシュリーの方へ行かないよう足で拘束し続けると、オオムカデが再び鳴く。
「ぶっ!?」
奴は尻尾? だけを器用に動かし、
鞭のようにしならせた下半身で僕にビンタしてきた。
僕は左頬に強烈な衝撃を受け、思わず足を離してしまう。
「……の野郎」
「リバティー。下がって」
僕が気合いを入れ直そうとした所に、アシュリーの声。
ここは素直に応じて後ろに下がると、彼女は左腕をオオムカデに向かって掲げた。
「……『猛炎』」
そう呟いた瞬間、アシュリーの左腕から炎が勢い良く迸る。
その絵面を見て、僕は前世で読んだ某世紀末漫画の
火炎放射器を思い出した。
「!? ギシャアア!!」
ドサッ。
全身が炎に包まれたオオムカデは断末魔を挙げて倒れ伏した。
やはり汚物は消毒すべきだな……
「……ん」
「うわ凄いドヤってる。無表情なのにここまで感情を伝えられるなんて……」
「素直に褒めて」
「……まあ、あの炎魔法は僕には真似出来ないよ」
「つまり?」
「スゴい!」
「んふー……!」
うーんこの満足気な顔よ。
すこし頬をつねってやりたくなる。
「じゃあ、後は炎が消えたら素材回収しよう……か?」
チラッと、燃えるオオムカデの方を見た。
……まさか、まだ生きてる?
「……g……」
奴はほとんど音を立てずに起き上がりやがった。
「……ん? リバティー?」
「!」
「キシャアアア!!」
「えっ……!?」
「うおおおお!」
オオムカデは最後の抵抗と言わんばかりにアシュリーに牙を剥く!
キンッ!
「……しぶてぇ奴」
「Gya……!」
オオムカデの噛みつきをナイフで防御した。
奴はナイフをそのまま噛み砕こうと言うのか、牙に力を入れる。
「大人しく燃えとけっての」
ドスッ!
僕は左手の松明で奴の腹を殴りつける。
「……u!」
そして一瞬だけ噛む力が緩んだのを見逃さず、口からナイフを引き抜く。
「終わりだ」
ザシュ!
引き抜いたナイフを突き上げる。
刃はオオムカデの顎を貫通し、さらに頭を穿った。
奴の脳天から飛び出した刃が見える。
「キシャアアアアアアアアア……ア!」
ドサッ。
オオムカデの悲鳴が洞窟内にこだまする。
だが、それも数秒と経たずに消えて。
静かになる頃には魔法の炎も鎮火していた。
「ふう。最後まで油断するべきじゃなかったな」
「そんな……? なんで?」
「どうした?」
アシュリーが目に見えて分かるほど狼狽えている。
確かに驚きの生命力だったけど、そこまでショックを受けるほどか?
「……いつもなら『猛炎』一回で倒せてたの。でも今回は……違った」
なるほど。アシュリーらしくない油断は積んだ経験がアダとなっていたのか。
「そういう事もあるんじゃないの? 魔物だって生き物なんだし。
個体差って奴じゃない?」
「……」
アシュリーは屈んで、オオムカデの遺体をジッと見つめて観察している。
たぶん納得していないな。まあいいか、とりあえず……
「素材回収しよう? 僕も出来るだけ手伝うからさ」
「……ん」
僕達は倒れたオオムカデの死体をナイフで切り裂いていく。
武器がナイフだとこういう時に横着できていいな。
「ふー……!」
殻や牙など使えそうな部位は回収出来た。
……全体的に煤けてるけど洗えば大丈夫だろ。
「それじゃあ、帰る?」
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「それじゃあ、また奥の蜘蛛を狩らないとね」
「……今日は、一人でやる」
「? まあ、アシュリーがそう言うならそれでいいけど……」
だからと言って一人で帰るのもなんだかなぁ……。
そう思った僕は彼女が蜘蛛を狩るのを見守る事にした。
「ふっ……んっ!」
相変わらず表情は硬かったが、その様子はどこか楽しそうで、
ワクワクしているように見えた。
*
僕達は仕事を終え、冒険者ギルドに戻った。
昼に仕事を始めたせいか、空はかなり暗くなっていて。
ギルドの照明が目に刺さってくる。
「いやー……すっかり暗くなっちゃったね」
「ん……リバティー。申し訳無いんだけど、幾つか頼まれて」
「何かな?」
「私の代わりに素材を提出して欲しい、報酬は後日受け取る。
……それと……明日の午後三時くらいに、商店街の裁縫屋に来て欲しい……」
「もちろんいいよ。明日の午後三時ね、わかった」
「ありがとう。それじゃ今日はこれで……」
アシュリーは足早にギルドから去っていく。
僕はそれを見送ってから、素材の提出に向かった。
「お願いします」
「はい、承りました。
それにしても……本当に仲が良いですね。
とても昨日知り合ったとは思えない様子でしたよ」
「そうですかね……?」
「えぇ、だって明日の午後三時……でしたよね?
二日でデートに誘われるまでになったなんて、人たらしですねー」
「デ……デ?」
確かに、言われてみればそうじゃないか。
……どうしよう。
前世含めてそう言う経験は無い。
だから不安が……けど。
それよりずっと楽しみだな!
「あはは……それじゃあ受付さん。
明日は健全に楽しんで来るんで、また明後日会いましょう」
「ええ、さようなら」
「ああ、それと……」
僕はその後受付嬢さんにアシュリーの伝言を伝え、
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