4 / 39
第4話 森中行進
しおりを挟む
「ふんふん~♪ルララ~♪」
「……」
街を出た僕達は森に踏み入ってダンジョンに向かっていた。
この爽やかで穏やかな空気……まだ平和な時代だからかもしれないが
一層美味しく感じて、つい鼻歌も出てくる。
「楽しそう」
「ん?そうだね。初仕事だし、こんな自然豊かな場所初めてだし、ついね」
「それは……よかった」
アシュリーの口調は変わらない。けど、少し暗くなったような?
「それにしても、本当に綺麗だよね」
空気が暗くならないように話題を景色に向ける。
木漏れ日が差し込み、小鳥たちのさえずりが、森をさらに彩っているようにも思えた。
「……そういえば」
「ん?どうしたの?」
「リバティーは……誰なの?」
「ん? 哲学的な話?」
「違う……身分の話……」
……おや、勘が鋭いようで。
僕が元々貴族だって事を見抜いたのか?
「……元、貴族だよ。今は違う。ただのリバティーさ」
無理に隠すのも難しそうだ、僕は名前以外を正直に話した。
「没落貴族?」
「それも違う。一人飛び出して自由を得た。
僕の父や姉は今でも貴族のはずだよ」
「そっか……」
「それにしても勘が鋭いね?
冒険者じゃなくて探偵とかもやれるんじゃないの?」
「いや……服装とか見る人が見れば丸わかり」
「え」
そう言われてアシュリーと自分の服装を見比べる。
彼女は全身に使い古したレザーアーマーを着ているのに対し、僕は所々破れたり
汚れていながらも明らかに上質な布の服である、デザインも派手。
……こりゃ確かにバレるわ。
「ふー……お金に余裕ができたらまず普通の服を買おうかな」
「……ふふ」
おっ、今まで仏頂面だったアシュリーが笑みを浮かべた。
……うん。貴重な笑顔を引き出せたんだからこんな
バカを晒したかいはあったんじゃないかな。そういうことにしておく。
「僕の事は話したんだし、アシュリーの事も聞かせて欲しいな」
「……私?」
「うん。僕とほとんど同じ歳なのに
Dランクの冒険者になってるんだし、色々有るでしょ?」
「……村の人の為に、出稼ぎ」
「うん」
「……」
「……」
自分の事を話すのは苦手なタイプかな?
「あ、もちろん言いたくないなら良いんだ。無理に聞きたいわけじゃないから」
「大丈夫」
そういうとアシュリーはポツリとつぶやくように声を出す。
「今、村は金欠。でもお金が必要だから私も頑張らなくちゃ」
「アシュリーはいい子なんだね。
僕は故郷の為に一人で頑張ったりはできないかな~」
「そう、私はいい子。それに……」
ビシュン!
アシュリーが突然草むらに向かって水魔法「水刃」を放つ。
「うえっ!?」
「グギャ……ア……」
草むらの葉と共に潜んでいたゴブリンの首が落ちた。
目に優しい自然の緑が一瞬にして刺激的な赤に染まる。
「冒険者としても……結構優秀」
「そうみたいだね」
「狩りに出てきたゴブリンみたい。
数は四。10時の方向に二匹、五時の方向に二匹」
「おっ、そういうカッコイイの僕も言ってみたい」
「真面目に構えて」
アシュリーがジト目で見つめてくる。
「分かってるって」
僕は武器屋で安く買った、細めの棍棒を取り出して構える。
アシュリーは右手に短めの剣を持ち、構えた。
「グギャギャ!」
「縮地!」
僕は縮地で一気に距離を詰め、剣を持ったゴブリンの顔面に棍棒を叩き込む。
「ギャッ!」
ゴブリンは倒れ、地面に後頭部を打ち付けた。
動く様子はない、倒せた?
「フッ」
「グギャ!」
アシュリーの方も、飛びかかった棍棒のゴブリンを見事に捉え、切り捨てた。
「グッ……」
「水刃」
「ギャフウ!」
そして、仲間がやられた様子に足がすくんだゴブリンに、アシュリーは水刃を放ち仕留めた。
やるなぁ、僕が一匹倒す間に二体狩るとは。
「グギャギャギャ!」
「!」
二体相手取った隙を突こうとしたのか、
最後の剣ゴブリンがアシュリーに飛びかかる!
「アシュリー!」
「グギャ!?」
僕は縮地で先回りし、宙に浮いたゴブリンの頭を鷲掴みにする。
「じゃあな!」
べキィ!
「ガ、ア……」
縮地の勢いのまま、ゴブリンの頭を木に叩きつける。
ゴブリンはか細い断末魔を挙げ息絶えた。
「……ありがとう」
「どう? 荷物持ち以外もやれそうでしょ?」
「うん」
アシュリーはこくりと頷いた。
「それにしても……まだまだ道中なのにこんな風に襲われるのはダルいよね」
「……今のところ毒虫の洞窟まで三分の一くらい」
「そこで……テッテレー! 聖水~!」
某タヌ……いや猫型ロボット風の演出と共に聖水を取り出す。
「聖水……」
「そう、振りかけると弱い魔物を遠ざける事ができる優れもの!」
「そうだね」
「というわけで、はい」
「ん」
二人揃って頭から被ってみる。
「どう?効果ありそう?」
「ん~……」
アシュリーは辺りを見回す。
そして鳥型の魔物に近づいていった。
「クッ!クケッ!?」
鳥型の魔物はやたら甲高く鳴いて逃げていく。
効果はバッチリそうだな!
「リバティー」
「うん、ちゃんと効果あったね」
「……そうじゃなくて」
「?」
「寒い」
……確かに。
ゲームでは「聖水を振りかけた!」の一文で済ませてたけど、
実際に浴びるとなるともうビッチャビチャだ。
「……きっと夏は有難いんじゃないかな」
「今は冬」
「そうですね……へックシュ!!!」
もしかして聖水の在庫が多かったのってこう言う問題があるから?
森中に響くクシャミをしながらそう思った。
「……」
街を出た僕達は森に踏み入ってダンジョンに向かっていた。
この爽やかで穏やかな空気……まだ平和な時代だからかもしれないが
一層美味しく感じて、つい鼻歌も出てくる。
「楽しそう」
「ん?そうだね。初仕事だし、こんな自然豊かな場所初めてだし、ついね」
「それは……よかった」
アシュリーの口調は変わらない。けど、少し暗くなったような?
「それにしても、本当に綺麗だよね」
空気が暗くならないように話題を景色に向ける。
木漏れ日が差し込み、小鳥たちのさえずりが、森をさらに彩っているようにも思えた。
「……そういえば」
「ん?どうしたの?」
「リバティーは……誰なの?」
「ん? 哲学的な話?」
「違う……身分の話……」
……おや、勘が鋭いようで。
僕が元々貴族だって事を見抜いたのか?
「……元、貴族だよ。今は違う。ただのリバティーさ」
無理に隠すのも難しそうだ、僕は名前以外を正直に話した。
「没落貴族?」
「それも違う。一人飛び出して自由を得た。
僕の父や姉は今でも貴族のはずだよ」
「そっか……」
「それにしても勘が鋭いね?
冒険者じゃなくて探偵とかもやれるんじゃないの?」
「いや……服装とか見る人が見れば丸わかり」
「え」
そう言われてアシュリーと自分の服装を見比べる。
彼女は全身に使い古したレザーアーマーを着ているのに対し、僕は所々破れたり
汚れていながらも明らかに上質な布の服である、デザインも派手。
……こりゃ確かにバレるわ。
「ふー……お金に余裕ができたらまず普通の服を買おうかな」
「……ふふ」
おっ、今まで仏頂面だったアシュリーが笑みを浮かべた。
……うん。貴重な笑顔を引き出せたんだからこんな
バカを晒したかいはあったんじゃないかな。そういうことにしておく。
「僕の事は話したんだし、アシュリーの事も聞かせて欲しいな」
「……私?」
「うん。僕とほとんど同じ歳なのに
Dランクの冒険者になってるんだし、色々有るでしょ?」
「……村の人の為に、出稼ぎ」
「うん」
「……」
「……」
自分の事を話すのは苦手なタイプかな?
「あ、もちろん言いたくないなら良いんだ。無理に聞きたいわけじゃないから」
「大丈夫」
そういうとアシュリーはポツリとつぶやくように声を出す。
「今、村は金欠。でもお金が必要だから私も頑張らなくちゃ」
「アシュリーはいい子なんだね。
僕は故郷の為に一人で頑張ったりはできないかな~」
「そう、私はいい子。それに……」
ビシュン!
アシュリーが突然草むらに向かって水魔法「水刃」を放つ。
「うえっ!?」
「グギャ……ア……」
草むらの葉と共に潜んでいたゴブリンの首が落ちた。
目に優しい自然の緑が一瞬にして刺激的な赤に染まる。
「冒険者としても……結構優秀」
「そうみたいだね」
「狩りに出てきたゴブリンみたい。
数は四。10時の方向に二匹、五時の方向に二匹」
「おっ、そういうカッコイイの僕も言ってみたい」
「真面目に構えて」
アシュリーがジト目で見つめてくる。
「分かってるって」
僕は武器屋で安く買った、細めの棍棒を取り出して構える。
アシュリーは右手に短めの剣を持ち、構えた。
「グギャギャ!」
「縮地!」
僕は縮地で一気に距離を詰め、剣を持ったゴブリンの顔面に棍棒を叩き込む。
「ギャッ!」
ゴブリンは倒れ、地面に後頭部を打ち付けた。
動く様子はない、倒せた?
「フッ」
「グギャ!」
アシュリーの方も、飛びかかった棍棒のゴブリンを見事に捉え、切り捨てた。
「グッ……」
「水刃」
「ギャフウ!」
そして、仲間がやられた様子に足がすくんだゴブリンに、アシュリーは水刃を放ち仕留めた。
やるなぁ、僕が一匹倒す間に二体狩るとは。
「グギャギャギャ!」
「!」
二体相手取った隙を突こうとしたのか、
最後の剣ゴブリンがアシュリーに飛びかかる!
「アシュリー!」
「グギャ!?」
僕は縮地で先回りし、宙に浮いたゴブリンの頭を鷲掴みにする。
「じゃあな!」
べキィ!
「ガ、ア……」
縮地の勢いのまま、ゴブリンの頭を木に叩きつける。
ゴブリンはか細い断末魔を挙げ息絶えた。
「……ありがとう」
「どう? 荷物持ち以外もやれそうでしょ?」
「うん」
アシュリーはこくりと頷いた。
「それにしても……まだまだ道中なのにこんな風に襲われるのはダルいよね」
「……今のところ毒虫の洞窟まで三分の一くらい」
「そこで……テッテレー! 聖水~!」
某タヌ……いや猫型ロボット風の演出と共に聖水を取り出す。
「聖水……」
「そう、振りかけると弱い魔物を遠ざける事ができる優れもの!」
「そうだね」
「というわけで、はい」
「ん」
二人揃って頭から被ってみる。
「どう?効果ありそう?」
「ん~……」
アシュリーは辺りを見回す。
そして鳥型の魔物に近づいていった。
「クッ!クケッ!?」
鳥型の魔物はやたら甲高く鳴いて逃げていく。
効果はバッチリそうだな!
「リバティー」
「うん、ちゃんと効果あったね」
「……そうじゃなくて」
「?」
「寒い」
……確かに。
ゲームでは「聖水を振りかけた!」の一文で済ませてたけど、
実際に浴びるとなるともうビッチャビチャだ。
「……きっと夏は有難いんじゃないかな」
「今は冬」
「そうですね……へックシュ!!!」
もしかして聖水の在庫が多かったのってこう言う問題があるから?
森中に響くクシャミをしながらそう思った。
89
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!


少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。


生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる