上 下
26 / 55
第四章 対抗戦に向けて

第24話 停学処分

しおりを挟む

「……暇だ」

学校内の編集室で壁にもたれかかり、天井を見上げながら俺は呟く。

「あの……まぁ……なんと言うか……ご愁傷さまです」

編集机に向き合うカイが、歯切れの悪い言い回しでそう言う。
彼女の手には町の新聞が握られており、内容はイロウが逮捕された事についての事だった。

「その新聞さぁ……何で俺がアイツを殴った時の写真が載ってる訳?」
「さ、さぁ~……」
「……写真提供者はK.Sさんらしいけど」
「ギクッ!」

カイは分かりやす過ぎるくらいの反応を見せる。

「君だろ、この写真撮ったの」
「はいっ!違法労働の噂を聞きつけて取材に行ってて、
偶然あの騒動に出くわしました!」

……つまり、あの時は気づかなかったが彼女もあの場にいたのだ。

そして職員が逃げる時のどさくさに紛れてずっと隠れていて、
俺がイロウと戦っている場面をバッチリ写真におさめていた。

その写真はしっかりと新聞社に提供され、結果として発端が俺の
起こしたトラブルだという事が学校にバレた。

学校外で問題を起こした俺は当然停学処分をくらった。

「『特ダネ情報見つけた』って置き手紙にあったけどイロウの事だとはね……」

「ま、まぁ私の証言のお陰で正当防衛とか認められて、クラス対抗戦までには
停学を解除するって便宜を図って貰えたじゃないですか……」

「それについては感謝してるけどさ……」

まあ写真が無くとも目撃者は多い、
俺が騒動を起こしたのは遅かれ早かれバレていただろう。
そう思うと、カイがあの場にいたのはむしろ運がよかったのかも知れない。

「とにかく暇なんだよ、反省文とかはもう書き終わったし……」
「うーん……そう言われても特に思いつく事は無いですね……」

何か暇を潰せるような事はないかと一つ一つ思い出す、
レポート、魔法の練習……戦闘訓練……そうだ、戦闘訓練と言えば。

「……そう言えばマロンはどうしたの?」

「あー、マロンさんなら休みを貰って実家のトーシャ村に
帰省してるらしいですよ」

「帰省?長期休みでも無いのに……」

「クラス対抗戦の後は夏休みまで行事が多くて暇が無いんですよね。
あの娘意外と寂しがり屋ですし、大きなイベントの前に
両親に会いたくなったんだと思いますよ」

マロンにとってクラス対抗戦は「剣士」としての
自分をお披露目する大事な行事だ。

いつも落ち着いてるように見える彼女も不安は多いだろうし、
両親に会っておきたいという気持ちも分かる。
……自分も何度もそう思った。

「なるほどトーシャ村か……」

忘れかけていたが、トーシャ村と言えばこの世界の主人公が居る村だ。
既にゲームとは大きく変わっているこの世界で
彼(彼女)が今どうしているのか気にならない事も無い。

「よし、どうせ暇だし俺も行く」
「え……何でまたそんな?」
「ちょっと野暮用があるし、ちょうど良いかなと思ってさ」

(……この人ひょっとしてマロンさんの事好き?
そうじゃなきゃわざわざ女友達の実家に遊びに行ったりしませんよね。

思い返せば数いる生徒の中で真っ先にマロンさんを青組から
引き抜いてるし……)

「……どうした?そんな考えこんで?」

「え!いや!何でも無いですよ!」

「ああそう……じゃあ俺は旅行の準備でもしてくる」

「あっ、待って下さいよ!私も行きます!」

「えっ、なんで?」

「昨日の事で確信しました、ノーティスさんの側にいれば
何か面白い事が起きるって!だから私もついて行きます!」

「……まあ良いけど」

カイが言ったことは理由の内半分だった。

面白い事を記事にしたいと言うのはそうだが、
数少ない友人同士の恋模様が気になったというのがもう半分の理由だ。

……本当に恋が始まっているのかは分からないが。

「俺は良いけどカイは大丈夫なの?
あんまり休んだりすると進学出来なかったりするはずだけど」

彼女が授業に出ていたのをほとんど見た事が無かったので、そう聞いてみる。

「私は大丈夫です!いざとなったらお父さんのコネで新聞社に就職します!」
「……」

ここまで自由奔放に生きられるのはある意味才能なのだろう。
そう思いながら俺達は部屋を出た。



学園物なのに学校が全然舞台になりませんね、この作品。

「まあ異世界ファンタジー作品だし、学園物の舞台が学校外でもいいじゃん」
そう思って貰えるなら応援よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼
ファンタジー
『触れて治癒する』と言う独特の治癒士として活動するナオキは現代日本で救急救命士として就職したばかりの青年だったが不慮の事故により異世界へと転生した。 人々を助けたいとの熱い思いを女神に願った彼は転生先で治癒士として活動を始めたがある問題にぶつかる。 それは、どんな難病も瀕死の大怪我も治療出来るが『患者の胸に触れて魔力を流し込む』必要があり、しかも女性にしか効果が無いという『限定能力』だった。 ※カクヨムにて先行配信しています。 カクヨムへのリンクも貼ってありますので続きを早く読みたい方はそちらからお願いします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル「プロアクションマジリプレイ」が凄すぎて異世界で最強無敵なのにニートやってます。

昆布海胆
ファンタジー
神様が異世界ツクールってゲームで作った世界に行った達也はチートスキル「プロアクションマジリプレイ」を得た。 ありえないとんでもスキルのおかげでニート生活を満喫する。 2017.05.21 完結しました。

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

処理中です...