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第三章 兄妹

第14話 決闘のその後

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「よう!ノーティス!」
「おう」

  決闘に勝った事で俺の名前は一気に学園に轟いた。
そのせいか知らない奴からも挨拶される事が増え、
  もう誰も「ノーティス?誰だっけ?」なんて言わない。

  悪くない気分ではあったが「別にそんな目的で戦った訳じゃないのにな」
とも思う、俺の本当の目的はまだちっとも達成出来て無いのだ。

  そんな事を思いながら人の多い廊下、食堂を通り過ぎて、
「編集室」と雑な紙の表札が貼ってある部屋の前に来る。

ノックをして部屋に入ると、作業机で何かの資料を纏めているカイと
引っ張り出してきた予備の椅子にボーッと座るマロンの姿が見えた。

「む。来たか」
「人に声掛けられまくったせいでちょっと遅れた、ごめん」
「いや、気にしてないから大丈夫だ」

そんな会話を交わしながら俺も使われていない椅子を机の下に運んで座る。

「……あの、お二人さん?ここ一応新聞部の活動場所なんですけど……」

カイが不満げにそう言う。

「あの決闘の後、ノーティスは学内のスターだからな。
仲間の私でさえ知らない奴から声を掛けられる事が増えたぞ」
「カイ。俺も悪いとは思うけどさ……ここぐらいしか落ち着いて
話が出来る場所が無いんだよ。駄目かな?」
「ハァ……まあ分かりましたよ、なんだかんだノーティスさんが
話題を作るおかげで、私の新聞の知名度もアップしてますし」
「ありがとう。で、早速聞きたいんだけどあの後何がどうなったの?」

決闘の後、俺は気づくと保健室に寝かされていた。
先生いわく、ダメージを負った身体を精神力で動かしていたのだが、
緊張の糸が切れ、反動で気絶したらしい。

「まあ、色々有りましたね。まずエリトさんが転学しましたし」
「転学?」
「えぇ。ノーティスさんに負けたのがきっかけで
実家が「我が一族の看板に泥を塗った」と怒ったらしく
それらしい理由をつけられて転学させられたようですよ」

俺が寝ている間にそんな事が起きたのか。
しかし、「二度とセイラに近づかない」とか条件を言ってた彼が
二度と近づけなくなるとは、なんと皮肉な……。

「なるほど……肝心のセイラは?」
「どうやら昨日から生徒会室に引きこもっているようですよ、
生徒会の部下達が『追い出された』と嘆いてましたから」

うーん……嫌な事が有ると自分一人で整理しようとする癖は
前世から変わらないんだな。
ちょっと様子でも見に行くか?

「色々ありがとう、ちょっと出てくるよ」
「うむ。気を付けてな」

ノーティスが部屋を出た後、こんな会話がされた。

「なあ、カイはノーティスがセイラにこだわる理由を知っているか?」
「さぁ……そこだけは私も分からないんですよね。記事でこそ盛って書きましたが、お二人の間にはなんの関係も見つからないですし」

「……そうか。私はてっきり生き別れの兄妹かなにかだと思っていたが」
「どうしてそうおもったんですか?」

「アイツがセイラについて話す時の目が私の父に似ているんだ、
家族に愛を向ける時の優しい目をしている」
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