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32 別れ
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その日の放課後、俺はルークと共にロウと待ちあわせしているカフェへと足を運んだ。
既に窓際の席に彼は座っていた。紅茶を飲んでいる。
「ロウ」
俺が名前を呼ぶとロウは席を立った。しかしその表情はどこか不安気だ。
「ノイス…」
俺たちが席につくと店員さんが注文を聞きに来た。俺はオレンジジュースを、ルークはコーヒーを注文した。
しかしそこで店の違和感に気づく。
…なんか客少なくね?
平日の午後ってもっと人がいてもいいと思うんだけど。ここは王都。国で一番人口が多い都市だ。こんなおしゃれなカフェに俺たち以外に人がいないとかあり得るのだろうか。
「あぁ、急遽貸し切ったからな」
それを指摘すると、ロウは平然とそう述べた。
「貸し切った?!」
カフェを当日貸し切ることなんてできるのか。
「大事な話があるらしいからさ。先輩から聞いたんだけど…つ、付き合ったんだって?」
「う、うん」
ロウは緊張からか少し顔が引きつっている。それにつられて俺も少し気まずくなった。
「そう、それでノイスとの契約を切ってほしいんだ」
ルークが横から話に割り込んできた。
「だから、それとこれとは関係ないですよね?俺はノイスの血を必要としているんです」
「それなら他の血液提供者をこちらで探すよ」
「ノイスのがいいんです」
机を挟んで二人はバチバチと言い合いを始めた。空気がピリピリしている気がする。
「仕事とはいえ恋人が他の男のところに通うのは気持ちがいいものじゃないよ。理解してもらえるかな」
「へぇもしかして自信ないんですか?」
ロウが挑発的な態度を取るとルークの眉がピクリと動いた。これは不機嫌なときの癖だ。
「ノイスももう俺のところ来たくないの?」
ふと、ロウがこちらに話をふってきた。
「ええっと…俺は」
ロウはすごくいい友達だしまた映画鑑賞したりしたい。でもルークはロウが俺に気があるとか変な誤解をしてる。
「ノイスが嫌がってないなら俺は続けたいです。彼は俺にとって大切な人なので」
そんなふうに思ってくれていたなんて。そう感動した俺とは反対にルークの機嫌はどんどん悪くなる。
「ダメ」
「先輩はノイスを繋ぎ止めておけるか不安だから束縛するんですよ。彼の交友関係や仕事に制限かけるのは違うと思いますよ」
ロウは例え先輩であってもまったく物怖じせず意見を言うんだな。
そのとき隣りに座っているルークが机の下でそっと手を握りしめてきた。
俺は隣をちらりと見た。彼は店員が運んできたコーヒーに口をつけている。
俺はロウの方へ視線を戻すと口を開く。
「実は、俺がルークとの時間を作りたくて。突然辞めたいとか迷惑かけて本当にごめん…。でも、俺もロウのこと大切な友達だと思ってるから時々出かけたりしたい」
思っていることを告げるとロウは顔をしかめた。
「辞めんの?」
「ごめん。血液のことはどうしようか。輸血パックにでもして送ればいいかな」
「はぁーーまじか…ぁ」
そして大きなため息をつくと控えめに聞いてきた。
「遊びには誘ってもいいか…?」
「勿論!舞台鑑賞とか美術館巡りとか行きたいし」
いつか誘ってくれると約束したことを思い出した。
「じゃあこれ俺の連絡先だから」
そう言うとロウは鞄からメモ用紙を取り出しアドレスと番号を走り書きした。俺がそれを受け取るとルークが席を立った。
「じゃあそういうことだから。ノイス帰ろう。ロウくんも忙しいのに時間取ってくれてありがとう。書類とかは後日送るから」
「またな」
「うん!またね」
そのまま俺たちはカフェを後にした。ルークはいつもより速歩きでズンズン手をひいて歩く。俺は駆け足気味に彼の横を歩いた。
「次はノイスの家に向かおうか。まとめた荷物うちに運ぼう」
カフェから少し歩いたところに彼の呼んだタクシーが待機していた。
「それから」
ルークは車に乗り込む前に俺を振り返った。
「芸術、好きなら今度チケットとるから二人で見に行こう」
既に窓際の席に彼は座っていた。紅茶を飲んでいる。
「ロウ」
俺が名前を呼ぶとロウは席を立った。しかしその表情はどこか不安気だ。
「ノイス…」
俺たちが席につくと店員さんが注文を聞きに来た。俺はオレンジジュースを、ルークはコーヒーを注文した。
しかしそこで店の違和感に気づく。
…なんか客少なくね?
平日の午後ってもっと人がいてもいいと思うんだけど。ここは王都。国で一番人口が多い都市だ。こんなおしゃれなカフェに俺たち以外に人がいないとかあり得るのだろうか。
「あぁ、急遽貸し切ったからな」
それを指摘すると、ロウは平然とそう述べた。
「貸し切った?!」
カフェを当日貸し切ることなんてできるのか。
「大事な話があるらしいからさ。先輩から聞いたんだけど…つ、付き合ったんだって?」
「う、うん」
ロウは緊張からか少し顔が引きつっている。それにつられて俺も少し気まずくなった。
「そう、それでノイスとの契約を切ってほしいんだ」
ルークが横から話に割り込んできた。
「だから、それとこれとは関係ないですよね?俺はノイスの血を必要としているんです」
「それなら他の血液提供者をこちらで探すよ」
「ノイスのがいいんです」
机を挟んで二人はバチバチと言い合いを始めた。空気がピリピリしている気がする。
「仕事とはいえ恋人が他の男のところに通うのは気持ちがいいものじゃないよ。理解してもらえるかな」
「へぇもしかして自信ないんですか?」
ロウが挑発的な態度を取るとルークの眉がピクリと動いた。これは不機嫌なときの癖だ。
「ノイスももう俺のところ来たくないの?」
ふと、ロウがこちらに話をふってきた。
「ええっと…俺は」
ロウはすごくいい友達だしまた映画鑑賞したりしたい。でもルークはロウが俺に気があるとか変な誤解をしてる。
「ノイスが嫌がってないなら俺は続けたいです。彼は俺にとって大切な人なので」
そんなふうに思ってくれていたなんて。そう感動した俺とは反対にルークの機嫌はどんどん悪くなる。
「ダメ」
「先輩はノイスを繋ぎ止めておけるか不安だから束縛するんですよ。彼の交友関係や仕事に制限かけるのは違うと思いますよ」
ロウは例え先輩であってもまったく物怖じせず意見を言うんだな。
そのとき隣りに座っているルークが机の下でそっと手を握りしめてきた。
俺は隣をちらりと見た。彼は店員が運んできたコーヒーに口をつけている。
俺はロウの方へ視線を戻すと口を開く。
「実は、俺がルークとの時間を作りたくて。突然辞めたいとか迷惑かけて本当にごめん…。でも、俺もロウのこと大切な友達だと思ってるから時々出かけたりしたい」
思っていることを告げるとロウは顔をしかめた。
「辞めんの?」
「ごめん。血液のことはどうしようか。輸血パックにでもして送ればいいかな」
「はぁーーまじか…ぁ」
そして大きなため息をつくと控えめに聞いてきた。
「遊びには誘ってもいいか…?」
「勿論!舞台鑑賞とか美術館巡りとか行きたいし」
いつか誘ってくれると約束したことを思い出した。
「じゃあこれ俺の連絡先だから」
そう言うとロウは鞄からメモ用紙を取り出しアドレスと番号を走り書きした。俺がそれを受け取るとルークが席を立った。
「じゃあそういうことだから。ノイス帰ろう。ロウくんも忙しいのに時間取ってくれてありがとう。書類とかは後日送るから」
「またな」
「うん!またね」
そのまま俺たちはカフェを後にした。ルークはいつもより速歩きでズンズン手をひいて歩く。俺は駆け足気味に彼の横を歩いた。
「次はノイスの家に向かおうか。まとめた荷物うちに運ぼう」
カフェから少し歩いたところに彼の呼んだタクシーが待機していた。
「それから」
ルークは車に乗り込む前に俺を振り返った。
「芸術、好きなら今度チケットとるから二人で見に行こう」
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