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15 とっておきの秘策 ★ロウ視点
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★ロウ視点
今日はノイスが来る日だ。先週の木曜日からずっとソワソワしている。
12時、約束の時間通りに彼はやってきた。ノイスは大人しそうな少年だ。学園に通う妹がいて、血を売っている。
まだ出会って間もないのにずっと前から友達だったような気さえした。彼は喜怒哀楽感情が表に出やすい。だから一緒にいて退屈しないんだ。
映画を見たときも、笑ったり泣いたり怯えたりと常にくるくる表情が変わっていた。
初めて彼の血を飲んだ時すごく美味しくて驚いた。いったいこの血の持ち主はどんな人間なのだろうか。そんな期待の中やってきたのは地味な男だった。
自己主張が苦手で大人しそうな男。少しよれたシャツを着ていて、黒髪に黒目。
それといった特徴はない。美形でもブサイクでもない。どこにでもいそうな雰囲気だった。
しかしそれは俺の好みのど真ん中を突いていた。
初対面で、"こんな薄汚いやつが"と言ってしまったのは、彼がドタイプで内心焦っていたためだった。
昔からよく見た目でいじられてきた。身長が低いくせに態度はデカイとか。だから恋人の背丈は同じぐらい、もしくは少し低い方がいいと思うようになった。
顔もコンプレックスだった。周囲から女みたいだと言われることが多い。まつげが長く、目が大きく、痩せ型だからかもしれない。
昔からよく人形のようだと言われていた。だからマッチョも男臭いやつも苦手だった。決して羨ましいからではない。決して。
俺は口が悪いから、すぐ口論になりそうな人もだめだ。つまりノイスはそんな俺の、理想の恋人そのものだった。
それがバレないようあえてきつい態度をとってしまった。
そう、俺は男が好きだ。でもそれを公表したことはない。もしも知られたら周囲に絶対気持ち悪がられる。
同性愛者だとバレないように、あえて友達を作らず上手く距離感を保っていた。
なのに彼は初対面でもぐいぐいと距離を縮めてくる。血を飲むためとはいえいきなり服を脱ぎ始めたり…。
きつい態度をとっても萎縮したりせず仲良くしようとしてくれた。
血も美味しくてドタイプで優しくて惚れないわけがない。
彼の泣き顔、笑い顔、それから怯えた姿まですべてがかわいい。そして吸血されるときは少しえろかった。
日に日に愛おしさが増していくから困った。今まで恋をしないようにしていた反動が来たのかどんどん彼に惹かれていった。
会いたい。会いたいなぁ。はやく火曜日が来ないか。彼が休みの間はそればかり考えている。
「ひさしぶり」
「お邪魔します」
ノイスは挨拶をするとソファに腰掛けた。俺もその隣に座る。2人でじいやが持ってきてくれた紅茶を飲んだ。
やばい…顔がにやけてしまう。嬉しい。今日は何を話そうか。
隣を見ると彼の首にはネックレスが煌めいていた。珍しいなアクセサリーなんてつけるの。
「それすごい似合ってるな」
ネックレスを指差すと彼はぎこちなく微笑んだ。
ノイスは案外アクセサリーが好きなのかもしれない。それなら今度プレゼントしてもいいだろうか。自分があげたものを彼がつけてくれたら絶対嬉しい。
「ロウは休日なにしてるの?」
俺たちはいつものように暫く雑談をした。趣味の話から休日の過ごし方に話題がうつったとき彼が質問してきた。
「んー。読書…ピアノ、勉強、あとは…外国語、舞台鑑賞や美術館巡りも好きだな」
「ふぇーー」
それを聞いてノイスはぽかんと口を開けた。すごい間抜けな顔してる。かわいい。
思わず頬を突きたくなる衝動を抑え、紅茶を口に含んだ。
「ブタイ?ビジュツカン?」
「そう、祖父の影響で芸術が好きなんだ。絵は全然かけないんだけどな」
「ゲイジュツ…」
「もしよければ今度行くとき誘おうか?」
俺がそう提案するとぱっと顔が明るくなった。
「えっいいの?!」
すごいわかりやすい。かわいい。
「ノイスがいたら外出がもっと楽しくなりそうだな」
俺が微笑みかけると彼も笑顔になった。あぁかわいい。
ノイスは俺のことをどう思っているのだろうか。やはり男は恋愛対象外だろうか。
まぁ下手に告白して距離を置かれるぐらいなら、ずっと友達のままでいたい。
それでもつい欲が出てしまうものだ。
だから告白の勝率を確かめるために、今日はとっておきの秘策を用意したんだ。
今日はノイスが来る日だ。先週の木曜日からずっとソワソワしている。
12時、約束の時間通りに彼はやってきた。ノイスは大人しそうな少年だ。学園に通う妹がいて、血を売っている。
まだ出会って間もないのにずっと前から友達だったような気さえした。彼は喜怒哀楽感情が表に出やすい。だから一緒にいて退屈しないんだ。
映画を見たときも、笑ったり泣いたり怯えたりと常にくるくる表情が変わっていた。
初めて彼の血を飲んだ時すごく美味しくて驚いた。いったいこの血の持ち主はどんな人間なのだろうか。そんな期待の中やってきたのは地味な男だった。
自己主張が苦手で大人しそうな男。少しよれたシャツを着ていて、黒髪に黒目。
それといった特徴はない。美形でもブサイクでもない。どこにでもいそうな雰囲気だった。
しかしそれは俺の好みのど真ん中を突いていた。
初対面で、"こんな薄汚いやつが"と言ってしまったのは、彼がドタイプで内心焦っていたためだった。
昔からよく見た目でいじられてきた。身長が低いくせに態度はデカイとか。だから恋人の背丈は同じぐらい、もしくは少し低い方がいいと思うようになった。
顔もコンプレックスだった。周囲から女みたいだと言われることが多い。まつげが長く、目が大きく、痩せ型だからかもしれない。
昔からよく人形のようだと言われていた。だからマッチョも男臭いやつも苦手だった。決して羨ましいからではない。決して。
俺は口が悪いから、すぐ口論になりそうな人もだめだ。つまりノイスはそんな俺の、理想の恋人そのものだった。
それがバレないようあえてきつい態度をとってしまった。
そう、俺は男が好きだ。でもそれを公表したことはない。もしも知られたら周囲に絶対気持ち悪がられる。
同性愛者だとバレないように、あえて友達を作らず上手く距離感を保っていた。
なのに彼は初対面でもぐいぐいと距離を縮めてくる。血を飲むためとはいえいきなり服を脱ぎ始めたり…。
きつい態度をとっても萎縮したりせず仲良くしようとしてくれた。
血も美味しくてドタイプで優しくて惚れないわけがない。
彼の泣き顔、笑い顔、それから怯えた姿まですべてがかわいい。そして吸血されるときは少しえろかった。
日に日に愛おしさが増していくから困った。今まで恋をしないようにしていた反動が来たのかどんどん彼に惹かれていった。
会いたい。会いたいなぁ。はやく火曜日が来ないか。彼が休みの間はそればかり考えている。
「ひさしぶり」
「お邪魔します」
ノイスは挨拶をするとソファに腰掛けた。俺もその隣に座る。2人でじいやが持ってきてくれた紅茶を飲んだ。
やばい…顔がにやけてしまう。嬉しい。今日は何を話そうか。
隣を見ると彼の首にはネックレスが煌めいていた。珍しいなアクセサリーなんてつけるの。
「それすごい似合ってるな」
ネックレスを指差すと彼はぎこちなく微笑んだ。
ノイスは案外アクセサリーが好きなのかもしれない。それなら今度プレゼントしてもいいだろうか。自分があげたものを彼がつけてくれたら絶対嬉しい。
「ロウは休日なにしてるの?」
俺たちはいつものように暫く雑談をした。趣味の話から休日の過ごし方に話題がうつったとき彼が質問してきた。
「んー。読書…ピアノ、勉強、あとは…外国語、舞台鑑賞や美術館巡りも好きだな」
「ふぇーー」
それを聞いてノイスはぽかんと口を開けた。すごい間抜けな顔してる。かわいい。
思わず頬を突きたくなる衝動を抑え、紅茶を口に含んだ。
「ブタイ?ビジュツカン?」
「そう、祖父の影響で芸術が好きなんだ。絵は全然かけないんだけどな」
「ゲイジュツ…」
「もしよければ今度行くとき誘おうか?」
俺がそう提案するとぱっと顔が明るくなった。
「えっいいの?!」
すごいわかりやすい。かわいい。
「ノイスがいたら外出がもっと楽しくなりそうだな」
俺が微笑みかけると彼も笑顔になった。あぁかわいい。
ノイスは俺のことをどう思っているのだろうか。やはり男は恋愛対象外だろうか。
まぁ下手に告白して距離を置かれるぐらいなら、ずっと友達のままでいたい。
それでもつい欲が出てしまうものだ。
だから告白の勝率を確かめるために、今日はとっておきの秘策を用意したんだ。
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