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20 それから
しおりを挟むそう、俺たちは番になったんだ。
すごく正直な話をするとあの日ただ匂いに耐えられなくて番になってしまった。
会長が俺の運命だというのは本当らしい。
あの理性を奪っていくフェロモンがずっと頭から抜けなかった。
でも殆ど彼のことを知らないのに番になってしまって良かったのだろうか。
まぁ、でも番関係は合意の上でいつでも解消することもできるからそんなに考えなくてもいいのかな。
それより、番になってから会長は好意を一切隠すことなく俺を溺愛した。
幸せそうに俺を抱きしめる彼にやっぱり番解消しませんか?なんてとてもじゃないけど言えなかった。
これから彼のことを少しずつ知っていけばいいかな。
初対面の印象は最悪だったが、フェロモンは本能的に逆らえないと実感した今なら仕方のないことだったと思える。
夏休み中は会長の部屋で一日中過ごすのが当たり前になっていた。
「また噛み跡消えてるな」
会長は俺を膝の上に乗せるといつものようにスンスン匂いをかぎ、うなじに唇を寄せた。
俺はαに抱かれるようになってからも、やはり発情しているとき以外はβのままだった。βのときには噛み跡も消えてしまう。Ωに戻ると噛み跡も現れるんだけどな…。
会長はそれが気に食わないようでβの時にもしょっちゅう首に歯型をつけてくる。
そういえばあの日以来レイマには会っていない。彼から一件トークが来ていた。
内容は、あの日は酔っていて俺と彼女を間違えたというものだった。
促進剤を使ったことについて聞いてみたが、そんなもの使っていないと返された。
もしかしたら俺はΩとβの間で不安定だからあの日たまたま発情してしまったのかもしれない…。
彼からの最後の連絡は
【これからもナギと仲良くしてもいい?】
という文章だった。あれは事故だったんだ。だとしたら謝らないといけないのは俺の方だ。
【もちろん!こちらこそ巻き込んでごめん。これからは気をつける!】
番は両者の同意でいつでも解消できるけど、αが一方的に切ることもできる。それは浮気した場合だ。今回なら、αのレイマが番のいない俺を噛んだ時点で彼女との関係は解消されてしまうんだ。
自分の体質のせいで親友を巻き込んでしまった。その反省から俺は毎日薬を持ち歩き、チョーカーつけるようになった。
会長は手際よくチョーカーを外すと俺の首筋に舌を這わせる。
でもあの日会長が助けに来てくれて本当に助かった。
「あ、そうだ!そういえばなんでキリはレイマの彼女と面識あったの」
これ気になってたんだ。
「前にお前について調べたときレイマについても一応調べたんだ。そこで判明した」
「俺について調べたって?」
「家族構成から学歴、身長体重趣味、交友関係…あと」
「いや、もういいよ」
個人情報とは?
なんでそんな調べ尽くされてるの…。会長の情報収集能力は凄まじい。
会長は俺の方をみてクスリと笑った。
「好きなやつのことは全部知りたいだけだ」
「俺は会長のことあまり知らないのにな…」
「何が知りたい?何でも教えるが」
「え?いやーうーん」
改めて聞かれると思いつかないな…。
「まぁ、これから俺のことたくさん知って、もっと好きになってくれればいい。俺のΩ。絶対離さない」
そう言って彼は俺を強く抱きしめるのだった。
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