上 下
10 / 17

10 嫉妬

しおりを挟む
その日俺は自室で柚木とゲームをしていた。
床に足を伸ばして座っている柚木の太ももに頭を乗せゲーム機をいじる。いい枕だ。
彼がサラリと俺の頭を撫でた。
なんか猫になった気分だ。

榊は部屋の中央にある机で読書をしている。

「そんなものやって楽しいのか?」
榊が怪訝そうにこちらを見た。

「ゲーム?楽しいよ 榊もやる?」

「いや、僕はいい」
そういうと彼はオレンジジュースが入ったペットボトルを開けた。プシュっと炭酸の抜けるいい音がする。いいな俺も飲みたい。

榊が飲んだところでそ、れ一口くれと手を伸ばした。

「…んっ」
彼は少し面倒くさそうに、でもわざわざこちらまで歩いてペットボトルを手渡してくれた。
こういうところは育ちの良さを感じる。俺の場合この距離なら多分投げてしまうと思う。

「ありがと」
そう言ってオレンジジュースを受け取る。
すると突然柚木がそれを取り上げた。

「おいっ」
俺はジュースに手を伸ばす。
彼は俺を冷たい目で見つめると

「のどが渇いたなら俺がジュース取りに行ってくる これは榊のだろ」
そう言って彼はペットボトルを机の上におき、部屋を出ていった。

なんかあいつ少し機嫌悪かったような…。気のせいか?
ドアの方をぼうっと眺める俺に榊が話しかける。

「お前たち前から思っていたけどすこし距離近くないか…?」

「そうかな?」
あまり気にしたことなかったけどな。

「普通は男同士で膝枕なんてしないし頭も撫でない」
彼は口を尖らせフンッとそっぽ向いた。
これはもしかして…。

「拗ねてんの?」
俺がからかうようにそう言うと榊は顔を真っ赤にした。こいつはすぐに顔が赤くなる。

「は?ばかなのか、僕がそんなことで拗ねるわけないだろ!自意識過剰なやつめ」

初めは仲良くなれるか心配だったがいつの間にか友達認定してくれているみたいでとても嬉しい。

俺は彼ににじり寄った。

「な、なんだ…っ」
榊が身構える。

俺は彼に抱きつき頭をワシャワシャと撫でてやる。
「や、やめろ‥っ」

「大丈夫だってお前も大事な友達だから」
抵抗する榊に俺はじゃれつく。

「友達の証にちゅーしてやるよ」
そう言ってちゅーっと彼の頬に唇を寄せた。気持ち悪いなっ触るな!やめろ!そういう反応を待っていたのに彼は耳から首まで赤くして固まってしまった。そしてまるで信じられないというような目でこちらをじっと見つめていた。

「え」
やばいお坊ちゃんたちにはこんな男同士の悪ノリ文化なんてもしかしてないのか…。




「なにしてるの」
そのとき低い声がドアの方から聞こえた。



「…っ」
や、やっぱ、なんか、すごい怒ってる。
やばい今日の柚木は最強に不機嫌だ。


彼は俺の首根っこつかむとベッドの上まで引っ張っていきそこに座らせた。そしてキンキンのオレンジジュースを手渡してくる。
「あ、ありがとう」
俺はそれをごくごくと飲み干した。

柚木が後ろから抱きつくように座って俺の肩に顎を乗せてくる。
「冬早くゲームの続きしよ」

「あぁ、うん」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話

ゆなな
BL
高級ホテルのナイトプールが出会いの場だと知らずに大学の友達に連れて来れられた平凡な大学生海斗。 海斗はその場で自分が浮いていることに気が付き帰ろうとしたが、見たことがないくらい美しい男に声を掛けられる。 夏の夜のプールで甘くかき口説かれた海斗は、これが美しい男の一夜の気まぐれだとわかっていても夢中にならずにはいられなかった。 ホテルに宿泊していた男に流れるように部屋に連れ込まれた海斗。 翌朝逃げるようにホテルの部屋を出た海斗はようやく男の驚くべき正体に気が付き、目を瞠った……

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...