上 下
4 / 17

4 ツンデレ天才魔法使い

しおりを挟む
寮に帰るとやつがいた。
そう、榊 尚人だ。俺の厄介な同居人。
あの最悪の初対面時以降彼は何かと俺にちょっかいをかけてくる。

「お前あんなに大きな炎だせるのになんでランニングで魔力使わなかったんだよ」

今日もまた絡んできた。本当に勘弁してほしい。こっちは疲れてるというのに。

俺が無視してベッドに向かおうとしたところで彼が空中でデコピンをした。
すると何かがカシュッと俺の首元をかすめる。

その後 ガッ と壁に何か刺さる音がして俺の首に激痛が走った。

え…

手で抑えると真っ赤な血がどくどく流れている。

「は…っ…」

「おおおおおおまえ…!!!!な、なんで防御魔法かけてないんだよ!!」

怪我をした俺より榊のほうがひどく動揺しているようだ。
前に、自分より取り乱しているやつを前にすると冷静になれる現象があるってテレビでやっていた気がする。まさにそれだ。
やばいめのまえがかすんできた…。

彼は急いで俺のもとへと駆けつけると首元に手を当てて何かを唱えた。
すると首から温かいものが体に広がっていく。それは俺の体を包み込んだ。
陽だまりのようなそんな温かさ。これは魔力だと一瞬でわかった。みるみるうちに傷がふさがっていく。

これは回復魔法だろうか。こいつそんな高度な魔法まで使えるのか…。同じ一年生なのに。
首の傷どころか体中の疲労感まですっかり取れてしまった。

「ありが…」

お礼を言おうとしたとき榊がバタリと倒れた。

「え、ええ?なんでお前が倒れるの?」
彼は顔面蒼白で倒れている。これかなりやばいのでは?
俺は急いで医務室まで先生を呼びに行った。






倒れた原因は魔力切れらしい。

「彼は榊様の息子さんですね」
年老いた医務室の先生は言った。

「彼ほどの魔力がありながら、なぜ魔力切れを起こしたのか謎じゃ」
そして榊を診察するや否や不思議そうな顔をする。

「俺の怪我を治そうとしたんです」

「ほぉ君はそんなに大怪我をしたのかい?」
医者が目を見開いた。

「いや、首を軽く切っただけです」

「…ふむ…なるほど、榊君は心配性なんだね」

「心配性?」

「榊君は君の怪我を治すために体中の魔力を使ってしまったみたいだ」

え…。

「まぁ彼のことだから数十分でもとに戻るじゃろう 君も今は魔力がみなぎってる状態だから扱いにはくれぐれも気をつけることじゃ」

そう言って先生は帰っていった。

こいつそんなに俺のこと心配してくれたのか。二段ベッドの下で寝る彼を覗き込む。するとパチっと目を開けた。はやっ。

「ここは…僕はいったい…」
しばらく光のない目でぼうっと遠くを見たあとベッド脇にいる俺に視線を移す。

そして勢いよく体を起こすや否や俺の髪の毛を掴みそのままベッドに押し付けた。

「ガッ…」
ボフッと顔面がベッドのシーツに埋もれる。

「首はなんともないようだな…」
彼はそう言うとゆっくり手を話し俺を解放した。

「いてて…乱暴だな そうだよお陰様で治ったよ それでお前は魔力切れ起こしたんだよ」

「この僕が?魔力切れ?」
嘘だろという表情で笑った。

「ありがとな」
俺がお礼を言うと彼は顔を真っ赤にして叫ぶ。

「べ、つに…!もともと僕が怪我させたからな かりを作りたくなかっただけだ まぁ防御魔法を常にかけていないお前が一番悪い!」
腕を組みふんっとそっぽ向いた。

「防御魔法って普通はかけてるものなのか?」
今まで魔法とは無縁の生活をしてたからその辺についてはよくわからない。

「あぁ、いつ襲撃されるかわからないだろ 不用心だ」
金持ちのおぼっちゃんは大変なんだなと感心する。

しかし困った。今は魔力がみなぎっているからいいが、俺は普段魔法を使えない。
ここで、わかったよ今度から気をつけるなと言えばまた怪我させられるかもしれない。
どうしたものか。

「ま、まぁ、部屋はプライベート空間だし?防御魔法なんていつもかけてないんだよ だから気をつけてくれ」
少しハッタリをかましてみる。そう、かけられるけどかけないのだ。やばい声が上ずった。

すると榊は目を見開いて驚く。

「お、お前…そんなに僕を信用しているのか…?」

「え」
そんなに驚くことか?普段どんな生活送ってるんだよ。

「僕の家族はたとえ家であっても常にかけているぞ… 配偶者も子供も他人であることに変わりはないからな」

用心深いことだ。


「そ、うか…そうか…なら僕もこの部屋では魔法を解くことにする!これでフェアだな」
彼はまた顔を真っ赤にしながらドヤ顔でそういった。

「お、ぉ ありがと?」

なんかよくわからないが仲良くなれたのか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【報告】こちらサイコパスで狂った天使に犯され続けているので休暇申請を提出する!

しろみ
BL
西暦8031年、天使と人間が共存する世界。飛行指導官として働く男がいた。彼の見た目は普通だ。どちらかといえばブサ...いや、なんでもない。彼は不器用ながらも優しい男だ。そんな男は大輪の花が咲くような麗しい天使にえらく気に入られている。今日も今日とて、其の美しい天使に攫われた。なにやらお熱くやってるらしい。私は眉間に手を当てながら報告書を読んで[承認]の印を押した。 ※天使×人間。嫉妬深い天使に病まれたり求愛されたり、イチャイチャする話。

【R18】【Bl】奴隷出身の俺は最低主人に内緒で王子と浮気します

ペーパーナイフ
BL
幼い頃、奴隷商に売られ奴隷になったライアは辛い日々になんとか耐えていた。そんな彼を救ったのはエルビス・グレイという年上の貴族だった。 彼はボロボロのライアを買い取り食事を、愛を与えてくれた。しかし幸せな生活は長くは続かなかった。彼もまた月日が経つに連れて愛は冷め、ライアに暴力を振るうようになったからだ。 「お前は誰のおかげで生きていられるんだ?」 それが彼の口癖だった。 もう二度と人も愛も信じない。やけくそになった俺はこっそり街に出て夜遊びを計画する。現実逃避になればそれで良かった。でも、そこで出会った金髪青目の男ヴィルはとても美しい人で…。 「ライア、君をあんなところにいさせたくないんだ」 虐げられていた主人公が優しい王子様に拾われ、主人を見返し幸せになる話。 ⚠ ダークな話です。殺害、暴力、人身売買、暴言などの鬱表現があります。気をつけてください。 最後、主人公は必ずハッピーエンドになります。エロも濃いです。

【R18】【Bl】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の俺は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します

ペーパーナイフ
BL
主人公キイロは森に住む小人である。ある日ここが絵本の白雪姫の世界だと気づいた。 原作とは違い、7色の小人の家に突如やってきた白雪姫はとても傲慢でワガママだった。 はやく王子様この姫を回収しにきてくれ!そう思っていたところ王子が森に迷い込んできて… あれ?この王子どっかで見覚えが…。 これは『【R18】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の私は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します』をBlにリメイクしたものです。 内容はそんなに変わりません。 【注意】 ガッツリエロです 睡姦、無理やり表現あり 本番ありR18 王子以外との本番あり 外でしたり、侮辱、自慰何でもありな人向け リバはなし 主人公ずっと受け メリバかもしれないです

【完結】兄狂いなところ以外は完璧な僕の弟

ふくやまぴーす
BL
イケメンで優等生かつ兄に対してのみ変態ヤンデレ気質な弟 遥(はるか)×ノンケ弟思い兄 悠人(ゆうと) あらすじ 中学生の頃から、突然仲良しの弟遥に避けられるようになった兄の悠人。 また昔の頃に戻りたくて、4年越しの再会に喜ぶ悠人だが、弟の様子が何やらおかしくて……というお話 ※R18描写ありの話のタイトルには※マークがついてます。 序盤は無理矢理犯される系ですのでご注意を。

【R18】【Bl】死にかけ獣人が腹黒ドS王子様のペットになって溺愛される話

ペーパーナイフ
BL
主人公のクロは黒猫の獣人だった。逃げ出し、道で死にかけていたところ、運良く男に拾われるがそいつはヤンデレ絶倫王子で…。 「君をねじ伏せて恐怖に歪んだ顔が見たい」 「大嫌いなやつに気持ちよくされる気分はどう?」 こいつは俺が出会った中で一番美しく、そしてやばいやつだった。 可愛そうな獣人がヤンデレ王子に溺愛、監禁されて逃げ出そうにも嫉妬執着される話です。 注意 妊娠リバなし 流血残酷な表現あり エロ濃いめ 

【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。

天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。 しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。 しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。 【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話

【完結済】ラスボスの使い魔に転生したので世界を守るため全力でペットセラピーしてみたら……【溺愛こじらせドS攻め】

綺沙きさき(きさきさき)
BL
【溺愛ヤンデレ魔術師】×【黒猫使い魔】のドS・執着・溺愛をこじらせた攻めの話 <あらすじ> 魔術師ギディオンの使い魔であるシリルは、知っている。 この世界が前世でプレイしたゲーム『グランド・マギ』であること、そしてギディオンが世界滅亡を望む最凶のラスボスで、その先にはバッドエンドしか待っていないことも……。 そんな未来を回避すべく、シリルはギディオンの心の闇を癒やすため、猫の姿を最大限に活用してペットセラピーを行う。 その甲斐あって、ギディオンの心の闇は癒やされ、バッドエンドは回避できたと思われたが、ある日、目を覚ますと人間の姿になっていて――!? ======================== *表紙イラスト…はやし燈様(@umknb7) *表紙デザイン…睦月様(https://mutsuki-design.tumblr.com/) *9月23日(月)J.GARDEN56にて頒布予定の『異世界転生×執着攻め小説集』に収録している作品です。

ゲイバレした学年一のイケメンは、その日の放課後、陰キャで平凡な俺を犯した

しゅうじつ
BL
学年一のイケメン、玉木 宝一郎がゲイバレした。 学校中は大騒ぎするなか、ひとつの疑問が皆の頭に浮かぶ。 学年一のイケメン、玉木 宝一郎がが好きな相手は誰なのか。 その日の放課後、陰キャでゲームオタクの俺は偶然、そのイケメン玉木宝一郎と遭遇し、なぜか密室に閉じ込められ2人きりに。 陰キャで平凡のゲームオタクに、とてつもなく執着している美形くんのお話。 美形攻め×平凡受け

処理中です...