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1 魔力0とか聞いてない…

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「う、嘘だろ…。」

桜の花びらが舞い散る4月!
俺は無事魔法高校の特待生コースに入学することができた。

魔法高校はかなり偏差値の高い学校だが俺は死ぬ気で勉強してようやく入学までこぎつけた。本当に死ぬ気で努力した。なぜかって?

それは特待生コースは学費全額免除だからだ。俺の家はとても貧乏で普通なら私立の高校なんて通うことはできない。

だから3年間特待生を維持してやるそう思っていたのに…。


入学初日の魔力検査で俺は0点を叩き出してしまった…。


「魔力適性…なし…。」


入学試験はペーパーテストだけだったんだ…。魔法はかなり難しい学問だから皆、高校入学してからだんだんと身に着けてゆく。

だから俺みたいに魔法を使ったことがないのに魔法高校に入学するやつなんてザラにいる。しかし皆少なくとも魔力は必ず持っているものだ。なのに0点…。

0に何をかけても0だよな…。ってことはこれから死ぬ気で練習しても俺は魔法が使えないのか?それとも伸びしろだけは全校生徒の中で一番あるのか…ははっ。

「やばい…実技テストどうしよ」

そう、魔法高校には当然ながら魔法を扱う実技テストがある。魔法ポーションを飲むことで一時的に魔力を得ることはできるが如何せんとてつもなく高いのだ…。

榊製薬が出しているポーションで一本数千円する。貧乏学生にはとてもじゃないが出せそうにない金額だ。

検査結果のシートを片手に廊下で俺は立ち尽くしていた。あんなに努力してやっと入学したんだ。学校を辞めるわけにはいかない。どうにかして魔力を手に入れなくては…。

「冬」

ふと後ろから俺を呼ぶ声がする。振り返るとそこには長身の男が立っていた。サラサラした髪の毛に高い鼻、パッチリした切れ長の目元、正真正銘のドがつくほどのイケメンだ。同じ日本人なのになんでこうも差がでてしまうのか…。


「水瀬…」
こいつは水瀬柚木、幼稚園からの幼馴染だ。小中同じだったがまさか高校まで同じなんて…。ここは特待生の検査場所だからこいつも特待生なのだろう。
幼馴染といっても中学ではまったく関わらなかった。…まぁいろいろ理由があるんだ。久しぶりに声を聞いた気がする。

「同じ高校なんて奇遇だね 検査どうだったの?」

彼が俺の検査用紙を覗き込もうとしたためとっさに後ろへ隠す。

「ま…まぁまぁかな…お前は?」
声が上ずる。冷や汗が背中を伝う。特待生なのに0点とか絶対言えない…。

水瀬が紙を差し出す。そこには…
「ひゃ、ひゃくてん????!!!!!」

満点…だと…。まさに天と地の差、天は二物を与えたのだ。

「そんなに驚かなくても」
彼が苦笑している。こいつは顔もよくて成績も優秀、おまけに性格も温厚で優しく女子からモテるにモテた。なのに魔力まで満点叩き出すとかバケモノかよ…。半分、いや四分の一でいいから分けてくれ。

水瀬が一緒に帰ろうかと誘ってきたが俺は断った。授業が始まるまでに図書館の魔力に関する本全部読んでやる…っ。そしてこいつを絶対抜かす!





そうして俺の高校生活はスタートした。
この学校は寮が完備されていて俺もそこに住むことになった。
部屋は確か相部屋なんだよなぁ。同居人と仲良くなれるといいな。

キャリーケースを持って寮の階段を上がる。私立だけあってとても豪華な内装になっている。赤いカーペットにシャンデリア、おしゃれな花…。
食堂や風呂、トイレ、練習場何でも揃っているらしい。ちなみに自室にも風呂やトイレはついているという。ホテルかな?


「俺の部屋は505号室か…」
長い廊下を歩き部屋の前まで到着した。
同居人がもう既にいるかもしれないので一応ノックをする。


「どうぞ」


俺はドアを開けた。中は思ったよりも広かった。ドアとは反対方向に、大きな窓がついており左手には二段ベッドがある。右手にはいくつかドアがありお風呂やトイレ、物置などあるのだろう。窓際には勉強机なんてものもあった。
生まれてこのかた自分の部屋というものを持ったことがない俺からすればまさに天国。

部屋の中央にはツリ目の男子生徒が座っていた。キャリーケースを広げているので荷物の整理をしているのだろう。彼と目が合う。彼もまた水瀬ほどではないが整った顔をしていた。

「ぼうっと突っ立ってないで早く入れよ 落ち着かない」

「おぉ、ごめんごめん これからよろしくな俺は時雨 冬」
俺はペコリと頭を下げる。

「僕は榊 尚人。僕のお父さんは榊製薬の社長だ」

「榊製薬…」
あぁ、あのポーションとか売っている大手企業か!流石名門高校にはすごい肩書の息子や娘が集まるんだなぁと感心する。

「で?君のお父さんは何をしているんだ」
彼が値踏みするような視線をこちらに投げかけた。

「俺の父さんはいないよ。昔離婚したからな。母さんはいくつかバイト掛け持ちしてて…」
俺が素直にそう答えると彼の視線は値踏みから軽蔑へと変わった。

「ふんっ庶民が」

なんだと…!

「貧乏人と相部屋なんて僕は相当運がないみたいだな」
彼はやれやれと困ったような仕草をした。

「は?貧乏人だからなんだって言うんだよ!」
俺が言い返すと彼はキッと睨みつけてきた。
やばい…。仲良くなろうと思ってたのにそうそう険悪なムードになってしまった…。

「そうか、なら今から寮長に異議を申し立てに行く この寮に多額の寄付金を渡しているのもうちなんだ お前には最悪な部屋をあてがってやるから覚悟しとけ!」

ビシッと指を突きつけそう言うと、やつは部屋を出ていってしまった…。







結果から言うと部屋の移動は認められなかったらしい。
なんでだ…くそっ…と彼は悔しそうに悪態ついている。おぼっちゃん、これが社会というものだよ。なんでも自分の思い通りになるとは限らない。厳しいものなんじゃよ。


人間関係は初対面の印象がかなり強いと聞く。これからこいつと仲良くなれるのだろうか。不安だ…。
魔力についてもなやんでいるのにこれ以上悩みのタネを増やさないでほしい…。

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