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それから数日たった。
私は部屋でアオと本を読んでいる。私が地面にうつ伏せになって小説を読んでいたところにアオが背中に乗っかって一緒に読む形になった。またがるように乗っているのでそんなに重くはない

アオが私の頭に顎を載せている。そこへ

コンコンコンとドアがノックされた。

ドアを開けたのはクロだった。
クロが私の部屋にわざわざ来るなんて珍しいなと思った。

彼は私達を見るや片眉をピクッとあげ、不愉快そうに眉をひそめた。

「なにしてんの」

「本読んでるんだよ」

「あっそ」

自分で聞いておきながらあまり興味なさそうだ。

「キイロでかけようぜ デートスポット連れて行ってくれるんだろ」

そういえば前にそんなこと約束したっけ。すっかり忘れていた。

「これ読み終わってからでも…」

「だめだ 今すぐ行くぞ」

彼はそう言って歩き出してしまった。私は慌てて追いかける。







森の中を南にしばらく歩くと色とりどりのお花畑が見えてきた。

「すごいでしょ」

「すごいな 人が手入れしてなくてもこんなに美しいんだな」
王子は辺りを見回した。ここで王子様がお姫様に告白したら本当に絵本の世界みたいだなと思う。

しばらく散策したあと二人で木陰に座った。

ふと彼がつぶやくように言う。
「お前あの青色のやつと仲いいよな」

「うん、アオはすごくいい子だからクロも話してみるといいよ」

アオは小人村で一番初めにできた友達だ。
穏やかな彼とならきっとクロも仲良くなれるだろう。


クロは足元の花をポキッと折った。

「お前アイツのこと好きなの」

「え?普通に好きだよ」

「はぁー、そうじゃなくてさ」

彼が不満げに頭をかく。

「あとお前、俺と姫をやけにくっつけようとしてくるよな」

ぎく。

「話しかけても毎回姫に話題ふるし、暇があれば姫は~姫は~って自慢ばかりしてくるし」

「そ、それはほら美男美女同士でお似合いだなって思ってて」

暴君姫をあなたに回収してもらいたいです。その後は私達は平和に暮らして余裕ができたらアオとのんびり旅行とか行くつもりです。なんて口が裂けても言えないよなぁ。

彼はしばらく私を見つめたあと地面に視線を落し持っていた花を放り投げた。

「じゃあ、もしも俺が姫とくっつくの協力してくれって言ったらしてくれんだ」

なんと。 

「もちろん!私にできることなら何でも協力するよ」
私は食い気味にそう言う。

「なんでも?」
王子が少し嬉しそうに繰り返す。

「ならさっそく相談だけど…どうしたら姫に好きになってもらえると思う?」

「うーんそうだなぁ」
やはり王子も姫に気があったのだ。姫も王子のこと好きそうだしアドバイスとか特にないよなぁ。

しばらく考え込んだあと思い出す。

「あ、そうだ!そういえば前に白雪姫ロマンティックな恋がしたいって言ってた気がする」
「ほぉ」
「女の子は美しいキュンとする恋愛が好きなんだよ だから例えばこんなお花畑に連れてきて手を取ってキスをすれば好感度アップ間違いなし」

そう、そのまま結婚までゴールインだ!

「手を取ってキス…」
彼はそう言うや否や私の手をぐいっと引くと勢いよく口づけしてきた。

?????

いきなりのことで体が動かない。
舌でむりやり唇を開かれ、熱い舌が口内に侵入してきた。

「ふ…っ…ん…ぅぅ」

私が体を後ろにひこうとするが彼が右手でガッツリ後頭部を押さえているから逃げられない。
歯茎や頬の裏まで舐め回され、何度も舌を絡め取られる。口の中は唾液でいっぱいになっていた。

それからゆっくりと彼が唇を離し、私の顎を掴んだ。

「飲み込め」

ううっ…。仕方なく私は口内の唾液をゴクリと飲み込む。するとクロはとても満足そうに頭をなでた。

「よくできました」

「わ、私じゃない姫!姫にするの」
一体どういうつもりだ。彼の考えていることは本当にわからない。

「あー、どうやってキスすればいいのかわからなかったから練習したんだよ」
「練習?」
「そうそう、何でも協力するっていったじゃん」
確かに言ったけども…。

「うぅ、っ。あ。あと!ロマンティックな恋だからこんな下品なキスは良くないと思う」

「下品ってどんなの?」
「さ、さっきしたみたいなやつ」
「んーどれだろな」

こいつすっとぼけてやがる…。彼は顎に指を当て考えるような仕草をした。








「もしかして…」
そしてこちらを楽しそうにちらりと見た。その顔には悪い笑みが浮かんでいる。私は嫌な予感がしてとっさに身構える。

今度は強引に肩を抱き、耳に唇を押し当ててきた。
王子が耳元で囁く。

「こんな感じで」

彼の低音が、吐息が耳に伝わり思わず体がびくりと震える。
彼が舌をちろりと出し、私の耳をなめる。ぴちゃぴちゃと水音が耳に直で聞こえた。

「舌を何度も何度も」

ヌルヌルとした舌が耳の入り口を何度もぐるぐるしていたかと思えば、今度は舌を尖らせ穴に挿入してきた。
少し硬い舌で耳の中をグリュグリュとかき混ぜられる。

「入れたり」

耳の奥まで届いてしまうのではないかと思うほど彼の舌がどんどん侵入していく。

「出したり」

かと思えば勢いよく引き抜かれ、耳の浅いところにくちゅくちゅと舌をこすりつけてきた。

「ん…くろぉ…や、めて」

「舐め回したり」

そうして今度は耳たぶを食んだりキスを落としたりしていく。

「するやつ?」

しばらく耳を舐め回したあと満足したのか解放してくれた。最後にふうっと息を吹きかけ、
「顔真っ赤かわいい」
とくすくす笑った。

私が力なく睨みつけるととても嬉しそうに私の首にキスマークを落した。

「キイロはこんな下品なキスで気持ちよくなるくせに」

私はもう昔のように、クロにもらっているものはなにもない。だからキスだって拒んでいい。何も我慢する必要なんてない。
それなのに拒めなかった。彼には人を支配する力があるみたいだ…。






家に帰る頃には夕方になっていた。部屋に戻るとアオが待っていて、遅かったねと心配してくれる。
ふとアオが私の首元に指を伸ばす。

「これ、虫刺され?」

そう言って首の赤いところに触れてきた。

「た、たぶん!そう!」

私は恥ずかしくなってアオから顔を背けた。









そんな私をアオは光のない目で見つめていた。
そのことに私は気づかなかった。
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