上 下
5 / 13

しおりを挟む
もう翌日には王子は皆と打ち解けていた。
特に姫は王子をひどく気に入ったみたいで何度も話しかけている。王子もそれに笑顔で応じている。

昼過ぎ私とアオは森へ薪拾いに出掛けた。
今日はとても空気が澄んでいて心地いい。二人で森の奥へ奥へと進んでゆく。

「ここ、鳥のさえずりも聞こえない まるで世界に僕たち二人だけみたいだね」

アオがのんびりと風を感じながら話しかけてくる。

「ふふっそうだね」

「キイロちゃんこの辺足元悪いから手つなご」

「あ、うん」

確かにこの辺は木の根っこが地面に飛び出していて凸凹している。アオは私に手を差し出すとそのまま指を絡めた。
所謂恋人繋ぎってやつだろうか。

「こっちのほうが離れにくいから」



しばらく歩いたところで彼が突然つぶやいた。



「キイロちゃん昨日王子様とキスしてたよね」



思わず持っていた枝を地面にぶちまけてしまう。慌てて拾い集める。

「ち、違う!あれはその…事故というか…王子がイタヅラというかからかってしたもので…」
アオに変な誤解をされるのも嫌だしあの口づけを見られていたのも恥ずかしすぎる。

「キイロちゃんはなんとも思ってないの?」
「え、ええと」
「なら僕にもイタヅラさせて」

そう言うとアオは繋いだ手をぐっとひいて距離を詰めた。至近距離で視線が絡む。彼はまぶたをそっと閉じると

優しく何度も何度も触れるようなキスをした。

「ふ…っあ、お…!!」

「キイロちゃんの唇柔らかい…」

最後に下唇をかるく喰み唇をぺろりと舐めるとそう呟いた。
噛みつくような強引なものではなくやさしいキスだった。

「キイロちゃんかわいい 目がトロンとしてる 気持ちいいの?」

「…っっ!!!」

わ、私の知らないうちに天使が小悪魔へと成長していた。

「冗談だよ」
そうくすりと笑う彼の目は全然笑っていなかった。
そして、もうそろそろ森を出ようかと言って私の手をひいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

レンタル彼氏がヤンデレだった件について

名乃坂
恋愛
ネガティブ喪女な女の子がレンタル彼氏をレンタルしたら、相手がヤンデレ男子だったというヤンデレSSです。

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

燐砂宮の秘めごと

真木
恋愛
佳南が子どもの頃から暮らしていた後宮を去る日、皇帝はその宮を来訪する。そして

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

続・一途な王子の想いが重すぎる

なかな悠桃
恋愛
“一途な王子の―”のその後の話です。

処理中です...