【R18】【BL】執着白ヒョウに好きな女の子を奪われ、捕食されたハリネズミの話

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19 看病するよ 

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土曜日の夜、俺はうきうきしながら支度を始めた。

「着替えと歯ブラシ…あと…」

友達と出かけるなんてこれが初めてだ。楽しみでないわけがない。

日曜の朝はいつもより早く目が覚めた。時計を見るとまだ朝の七時。集合時間は八時だからまだ時間はある。
支度も終わってるしどうしようか。

本でも読むかな。そう思い読みかけの本を取り出したその時だった。俺のスマートフォンがピピピと音を立てた 。

こんな朝に電話なんて誰だろう。もしかしてラピかな。

「はい もしもし」

電話をとってみると、かけてきたのは思いもよらない人物だった。

それはハクだった。

「え?ハク?どうしたの?」

「ロン…ゲホッゲホッ」

なにやらひどく咳き込んでいる。具合が悪そうだ。

「もしかして体調悪い?」

そう尋ねると一言。
風邪ひいたと返ってきた。熱は38度。寒気と吐き気があるとのこと。

「親御さんは? 」

「今日は仕事」

「何か食べるものとか体を冷やすものはある? 」

「何もない…」

まじか…。風邪をひいた時、家に一人ぼっちのときほど心細いことはない。

「デート…ウサミちゃんには連絡したの?」

「うん。謝ってキャンセルしてもらった」

俺は時計を確認した。まだ集合時間まで余裕がある。

「俺出かけるまであと一時間ぐらいあるから今から必要なもの買っていくよ」

そう提案するや否や電話を切り、近くのコンビニまで走った。そこで水や、おかゆ、氷枕、タオルなどを購入した。

その足でハクの家まで向かうとインターホンを鳴らす。
しかし、応答はなかった。恐る恐るドアノブに手をかけると鍵が開いていた。

「お邪魔します…」

ハクの家は何度か来たことがある。
俺は彼の部屋まで一直線に向かった。すると案の定彼はベッドの上でくたばっていた。

「大丈夫か?」

「んー」

彼は怠そうに布団を深く被っている。
まさかデートの日に体調崩すなんて気の毒に。

「水ここ置いとくから。あとおかゆ温めてくる」

俺は水をベッド脇の机の上に置いて部屋を出ようとした。すると、服の裾をぐいっと後ろに引かれた。

振り返ると彼がベッドから腕だけ出して服を掴んでいる。

「ハク」

もしかして心細いのだろうか。
ちらりと見たけど顔色はそこまで悪くない。ただ髪がボサボサだ。

「おかゆ作りに行くだけだって」

そう言って引っぱるが、なかなか離してくれない。しかたなく俺はその場に座った。

「今日 温泉行くの ?」 

「行こうと思ってたけど…親御さんは何時頃帰ってくるの?」

「今日は一日いない」

うーん。俺は内心迷っていた。温泉にはとても行きたいけれど 、病気のハクを置いていくのもちょっと気がかりだ。誰もいない部屋でもしものことがあったら怖いし。

「ロン…ずっとここにいて…」

目を潤ませそう言われてしまっては仕方ない。

「はぁ、わかったよ…」

そう言うと彼は嬉しそうに目を輝かせた。

早速ラピに電話で事情を説明する。

「だからごめん…今日はハクの看病しようとおもう」

「なるほどだから妹が落ち込んでたのか、全然平気だよ」

心なしか声色が嬉しそうな気がする。

「妹も看病しに行きたいって言ってるんだけど…」

「風邪だしうつるとよくないから大丈夫」

そう言って電話を切った。

「いつの間に 番号交換したんだよ」

「この前だよ。出かけるのに知らないと不便だと思って」

「へぇ…、なぁロン」

「んー?」

「あまり不用意について行くなよ」

彼はこちらを睨みつけるとそう言った。

「なんで…?」

「なにかされたらどうするんだよ」

「なにかって…。別に何もされないよ。ハクじゃあるまいし」

そう笑い返すとハクは俺の手で手遊びを始めた。指を絡めたり人差し指を握ったりしている。

「あのさ」

俺は意を決して話を切り出した。

「き、キスとかさ、触るのとかやめない?」

そう伝えると彼が眉をピクリと動かす。

「調べたり聞いたりしたらさ、やっぱキスは友達とはしないって」

「だろうね」

「ならどうして?」

そう尋ねると少しの間部屋に沈黙が訪れた。

そして一言。


「好きだから」 
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