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4 君をもっと知りたい

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彼のほうが俺より少し背が高いみたいで必然的に見上げることになった。
彼はそのまま瞳を覗き込んでくる。透き通るような赤色だった。

赤ずきんは俺の口に指を入れると無理やり口を開けさせた。

「おお、しっかりした牙だね」

「うぅ!おほかひははらほうへんはぉ!!」(狼だから当然だよ)

「手も見せてよ。確かに爪が尖ってるね。見た目は人間そのものなのに面白い」

「だろ!」

「耳も触っていい?うわっふわふわしてる」

彼はもふもふと俺の耳をもんでいる。ピクピクと動かすと少し驚いていた。
お次はスンスン匂いを嗅ぎ始めた。なんか身体検査されてるみたいだ。

「これはなんの香水?」

「コウスイ…?なにそれ」

「このとてもいい香りは君の匂いなのか」

「?」

「ちなみに何歳なの?」

「年?20年は生きてるよ。誕生日はわからない」

そう言うと彼はとても意外そうな顔をした。俺は少しイラッとする。
小柄で童顔でバカでいつまで経ってもウルはガキだなぁと村でよくからかわれていたからだ。どうせガキっぽいですよー。

それから赤ずきんは俺の体をペタペタ触り、ポケットに入っていた果物ナイフを取り出す。

「これは?」

「りんごの皮をむくんだよ」

そう教えると微妙な顔をして何故か没収されてしまった。

「あ…」

あのナイフ結構高いのに…。

「確かに君は強靭な爪も牙も持ってるし、身体能力も高そうだ」

赤ずきんはようやく俺の怖さを理解してくれたようだ。

「だろ?狼が人間に負けるわけないんだよ」

ドヤ顔でそう言うと彼はニヤリと笑う。

「でもね、僕は銃をもってるんだよ?」

そうして背中の銃をちらつかせた。

「…」

確かに。銃で撃たれたらさすがの狼だって死んでしまう。それを忘れていた。待って…これ、俺ピンチなのでは…?

昔、人間に撃たれて血まみれになった仲間の姿を思い出した。撃たれたらすごく痛いはずだ。赤ずきんと戦うってことは流血を覚悟するということ。

そう思ったら体が震えてきた。

「あ…う、うつの…?」

上目遣いでおそるおそる尋ねると彼はクスクスと笑いだした。

「あははっすごい体震えてる。アホなところも可愛いな」

赤ずきんは俺のしっぽをぐっと掴んだ。するとたちまち体に力が入らなくなってしまう。よろけた俺はとっさに体にしがみついた。

「んぅ…」

「ここ触られるのは嫌なの?」

「力はいらなくなる…」

「へぇ」

赤ずきんはしっぽを掴みながら顔を近づけてきた。美しかったはずの赤い目が今はひどく不気味に感じる。背中に汗が伝った。

「もし君が僕を襲うと言うなら容赦なく撃ち殺すよ。僕はまだ死にたくないから」

俺はゴクリとつばを飲み込んだ。

「そうだな。まずは足を撃つ。そしたら君は歩けなくなるよね。そのあとで地面に這いつくばる君の心臓を撃つ。きっとすごく痛いだろう」

考えるだけで背中がゾクゾクする。

「や、やだ…っ痛いのはやだ。でもさ…でも」

でも赤ずきんを倒して力をつけないとあの暴君婚約者から逃げられないんだ。

「赤ずきんを倒して村に連れて帰らないと…じゃないと皆俺を馬鹿にするから」

「狼社会も厳しいんだね」

涙目になりながら俺は力なくうなずいた。すると赤ずきんは大きく手を叩く。

「じゃあこういうのはどうかな?僕がやられたふりして村についていく」

「え、いいの?」

「でも狼の村は少し怖いな。だからまずは君のことを知ることから始めたい」

「俺のこと?」

まさかの提案に俺は目を見開いた。それなら痛くないし目標を達成できる!俺のことを教えるなんてお安い御用だ。

「うん。君のことをもっと知りたい」

「何でも聞いてよ!名前はウル、えっと…好きな食べ物は」

「僕はカーマイン。ウル、ウルか。すごくいい名前。顔も声も性格もここまでタイプなのは初めて」

タイプ?よくわからないがカーマインは嬉しそうにうっとり頬を染めていた。

彼は俺の頬に手を当てるとゆっくり顔を近づける。そして親指で唇を軽くなぞるとキスをした。

「…っ?!」

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