【R18】【Bl】死にかけ獣人が腹黒ドS王子様のペットになって溺愛される話

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17 シャロン 

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「長男として家を継ぐことや剣術、魔術の勉強に疲れたんだ。幼少期から勉強ばかりで友達も作れなかった」

「へぇ」

「結局家出は失敗したんだが、母上に王都の学園に通う許可を貰うことができた。そこで友達も何人かつくることができたんだ」

「よかったじゃん」

「あぁ、だから知らない土地で不安そうにしているお前を見ると過去の自分を思い出す」

「そうか…」

「これもなにかの縁だ。私が働く場所をお前に提供してやってもいい」

「え?!」

 今、働く場所をくれるって!聞き間違いか?
俺は彼に詰め寄ると肩をがっしりと掴んだ。するとシャロンは何故か顔を赤らめ、俺を突き放した。

「落ち着け。働くと言ってもうちの使用人としてだ。掃除や給仕などになるが…」

「いいよ!ありがとう!本当にありがとうな」

こんなチャンス逃すわけにはいかない。俺は必死に彼の手にしがみついた。

「ただし条件がある」

「条件…?」









「えーっとこれは…メイド服だよな?」

 その後シャロンのお屋敷に連れて行ってもらった。お屋敷はとても大きく一瞬お城と見間違うほどだった。そこで制服を渡されたのだが、それは正真正銘のメイド服だった。

「そうだ。この屋敷の給仕は基本女性が行うからな」

「なんで?」

「父の命令だ。まぁ、うちには年頃の妹もいるから男子禁制なんだろう」

「はぁ、でもさ、流石にこれはバレるんじゃないか」

 試しにフリフリのワンピースに袖を通してみると何故かサイズがぴったりだった。髪は短髪だし胸はまな板。顔つきだってツリ目で怖いとよく言われるのに女装だなんて。

 シャロンは俺を舐めるように見たあと、頷いた。

「悪くないな」

「いやいやいや」

「まぁ、髪の毛はウィッグを用意しよう。声も男にしては高めだし問題ないだろう。ちなみに年齢は?」

「ちゃんと数えてないからわからないけど多分10代後半~20代前半じゃね?」

「了解した。メイド長につたえておく」

「…」

「それから」 

 シャロンは俺の頭を…ポフポフと撫でた。すると温かい光が俺を包む。

「これで屋敷の敷地内にいる間は言語が伝わるはずだ」

「え、こんな能力が」

「言葉を操る魔法は難しく屋敷の範囲内が精一杯だった」  

「いや、十分すごいよ!ありがとな」

 でもこの先少し不安だな…。まぁ、なんとかなるだろう、頑張るか!







 不安だと思っていたけど働いてみると案外快適だった。この国では獣人に対する差別がないからか、メイドの皆は俺を快く迎えてくれたし、なによりシャロンもいいやつだった。

 俺は黒髪ぱっつんのボブヘアのウィッグを被って仕事をした。これがなかなか様になっているから困る。昔から筋肉がつきにくい体だったが、誰一人として俺を男だと疑わないのは少し傷つく。
まぁ、そのおかげで働いていられるんだけど。

 今後のことはわからないが頑張って働こうと思った。俺がここに来てからもうすぐ一ヶ月が経とうとしている。

 仕事を覚えるのに必死であっという間に過ぎてしまったが、レオは今頃何してるんだろうか。もう俺のことなんて忘れただろうか。探しに来ない時点でそういうことなのかもしれないな。

「どうしたクロ、なにか悩み事か?」

「わっシャロン…びっくりした」

 窓を拭きながら考え事をしているといつの間にかシャロンが背後に立っていた。耳元で低音で囁かれるとゾクッとしてしまうからやめてほしい。

 シャロンはとてもイケメンだった。黒い少し癖のある髪の毛に焼けた肌はとても健康的だ。キリッとした目に高い鼻。メガネは知的な印象を与えている。そしてなにより身長がとても高い。190はあるんじゃないだろうか。身長165の俺と並ぶとそれが余計際立つ。

「いやー悩み事なんてねーよ。ただ牛乳もう少し飲もうかなと思っただけ」

「なんだそれは。仕事は順調か?」

「お陰様で。シャロンも最近忙しそうだけど」

  そう、貴族の息子は忙しいらしい。せっかく帰省してきたというのに父の仕事の手伝いばかりしている。今日も朝起きてから昼間でずっと部屋にこもりっぱなしだ。

「問題ない。しかし3時にはいつもどおり紅茶を持ってきてほしい」

「ああ分かったよ」

「こら!!クロ!あなたまたそんな汚い言葉遣いをしているんですか」

「ひっ!メイド長様…っ」

 その時、ふくよかなメイド長が廊下の角を丁度曲がってきた。今の会話を聞かれたらしい。
 俺は背筋を伸ばして窓拭きを再開した。

「この子、まるで男児みたいな喋り方をするんですよ。シャロン様からも注意してあげてください」

「まぁ確かに口は悪いな。まるで凶暴な野良猫のようだ」

「あ?」

 誰が凶暴な野良猫だ!俺がキッとシャロンを睨みつけると彼は吹き出した。

ベチャッ…。

「やべ」

 勢いよく振り返ったせいでつい濡れ雑巾を落としてしまった。俺は急いで拾おうとその場にしゃがみ込んだ。するとシャロンも拾おうとしてくれたのか偶然手と手が重なった。

「あ、ごめん」

「…っ」

 シャロンがパッと勢いよく手を引く。俺は顔を上げた。するとそこには耳まで真っ赤になった男が手を抑えて固まっていた。

「…」

 この屋敷に来てもう一ヶ月になるがこのようなことが度々ある。まるで俺のことが好きみたいな…。そう思うのは自意識過剰だろうか。

「んー」

 しかし赤くなったり照れたりするくせにあちらからは一切触れてきたりしないんだよな。強引に押し倒す誰かさんとは大違いだ。

「…」

 …はあ、全く。あいつのことはもう忘れないといけないのにな。
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