2 / 20
2 君を拘束したい
しおりを挟む
馬車は城の門をくぐり、やがて停止した。まずはじめに王子が馬車を降り、その後俺を担いだ兵士が続いた。
「おい!離せよ!俺は城なんてごめんだ!おい!」
できる限りの抵抗をしてみたが、ほぼゼロに近い体力では身動きすら取れない。
「静かにしろ。これは王子の命令だ」
兵士は俺を怒鳴りつけ黙らせると、風呂場に連行した。そして、たっぷりの泡が浮かんでいる湯船に俺を放り込んだ。
「…っ。扱い雑すぎだろ」
するとすぐさま使用人と思わしき女供が入ってきて、服を脱がせにかかる。
「わっやめろっおい!」
「まぁ、どうしたらこんなに汚れるんでしょう。ちょっとスポンジ持ってきて頂戴~」
こちらが動けないのをいいことにやりたい放題だ。最終的に爪の先までピカピカに磨かれ、ぼさぼさで伸びきった髪は整えられてしまった。
その後はふかふかの絨毯が敷き詰められているやけに広い部屋に通された。南には大きな窓があり、派手な装飾が施されている家具が並んでいる。
部屋の中央には机とソファーが置いてあり、豪華な食事まで用意されていた。
「よーしよし頑張ったね。お腹減ってるんでしょ?若いんだからたくさんお食べ」
一番ふくよかな使用人は俺の頭をポンポンと叩くとソファーに座るよう誘導した。
しかし生まれてこの方ソファーなんて座ったことがないから、必要以上に柔らかいその感触がなんとなく気に食わなかった。俺は床に座ると机の上にある料理を素手でつかんで食べ始めた。
もしかしたら毒が入ってるかもしれない。一瞬そう思ったけど、ここ数ヶ月まともな食事にありつけていなかったせいでとてつもなく腹が減っていたんだ。
料理は頭がくらくらするほどおいしかった。硬くないパンに温かいスープ。人生で一番の食事二間違いない。
「ほぅ、綺麗になったね」
食事に夢中で気が付かなかったようだ。後ろを振り返るといつの間にか王子が立っていた。
上目遣いで睨みつけると、彼はクスクスと笑った。
「いくらでも食べ物はあげるからゆっくり食べなさい」
「…っ」
「今後のことなんだけどね。僕は君を飼うことに決めたからここに住んでもらうよ」
「‥嫌だね」
「城なら凶悪なモンスターもムチ打ちをする商人もいない。そして毎日美味しい食事と温かいベットを提供してもらえるのに?」
「…」
「僕に飼われたほうがよほど楽しい人生を送れると思うんだけどな」
確かにそうだ。現に俺はさっきまで道で野垂れ死んでいたのだから。
「目的はなんだ」
「目的?そんなのないよ。まぁ強いて言うなら」
男は俺に近づくと腰を屈めてクイッと顎を持ち上げた。
「君の目が好きだ。挑戦的で尊敬も畏怖の感情もない。人間を憎み嫌うその瞳がすごくいい」
「俺はお前が嫌いだ」
「ふっ、知ってるかい?獣人ってやつはね大抵、すべてを諦め怯えた目をしているんだ。生まれたときから自分たちは支配される側であると叩き込まれるからね」
王子は頬を赤らめうっとりと続けた。
「でも君は違う。だから、ねじ伏せて恐怖に歪んだ顔が見たい。すべてを諦めその瞳から色が抜け落ちる瞬間が見たいんだ」
「…」
こいつは俺が出会った中で一番美しく、そしてやばいやつだった。
逃げろと本能が告げている。でももう遅かった。彼は俺を軽々と担ぎ上げると、部屋の奥に向かう。
そしてベットに突き飛ばした。
「な、なんだよ…やめろっ」
そのまま上から乗り上げると俺の首を両手で締め上げる。
くそっ…息ができない…。
「…っ」
「どう?怖い?今から君は死ぬかもしれない」
「…っ」
酸欠のせいか視界が霞んできた。俺は最後の力をすべて込め、思い切り膝で男を蹴飛ばした。
ダンッ。
蹴りはみぞおちにうまく入り、王子はその瞬間両手を離した。
「かはっ、はぁ、はぁ、はぁ」
し、死ぬかと思った…。肩で息をしながら王子をにらみつける。
「いてて…ふ、ふふ。いいね。すごくいい…」
俺はベットから降り、壁に背を預けた。どうにかして逃げねぇと殺される…。ちらりと視線を送ると、王子は楽しげにクスクスと笑っていた。
そして
「拘束」
彼がそう呟くと、体から力が抜け落ちた。
「おい!離せよ!俺は城なんてごめんだ!おい!」
できる限りの抵抗をしてみたが、ほぼゼロに近い体力では身動きすら取れない。
「静かにしろ。これは王子の命令だ」
兵士は俺を怒鳴りつけ黙らせると、風呂場に連行した。そして、たっぷりの泡が浮かんでいる湯船に俺を放り込んだ。
「…っ。扱い雑すぎだろ」
するとすぐさま使用人と思わしき女供が入ってきて、服を脱がせにかかる。
「わっやめろっおい!」
「まぁ、どうしたらこんなに汚れるんでしょう。ちょっとスポンジ持ってきて頂戴~」
こちらが動けないのをいいことにやりたい放題だ。最終的に爪の先までピカピカに磨かれ、ぼさぼさで伸びきった髪は整えられてしまった。
その後はふかふかの絨毯が敷き詰められているやけに広い部屋に通された。南には大きな窓があり、派手な装飾が施されている家具が並んでいる。
部屋の中央には机とソファーが置いてあり、豪華な食事まで用意されていた。
「よーしよし頑張ったね。お腹減ってるんでしょ?若いんだからたくさんお食べ」
一番ふくよかな使用人は俺の頭をポンポンと叩くとソファーに座るよう誘導した。
しかし生まれてこの方ソファーなんて座ったことがないから、必要以上に柔らかいその感触がなんとなく気に食わなかった。俺は床に座ると机の上にある料理を素手でつかんで食べ始めた。
もしかしたら毒が入ってるかもしれない。一瞬そう思ったけど、ここ数ヶ月まともな食事にありつけていなかったせいでとてつもなく腹が減っていたんだ。
料理は頭がくらくらするほどおいしかった。硬くないパンに温かいスープ。人生で一番の食事二間違いない。
「ほぅ、綺麗になったね」
食事に夢中で気が付かなかったようだ。後ろを振り返るといつの間にか王子が立っていた。
上目遣いで睨みつけると、彼はクスクスと笑った。
「いくらでも食べ物はあげるからゆっくり食べなさい」
「…っ」
「今後のことなんだけどね。僕は君を飼うことに決めたからここに住んでもらうよ」
「‥嫌だね」
「城なら凶悪なモンスターもムチ打ちをする商人もいない。そして毎日美味しい食事と温かいベットを提供してもらえるのに?」
「…」
「僕に飼われたほうがよほど楽しい人生を送れると思うんだけどな」
確かにそうだ。現に俺はさっきまで道で野垂れ死んでいたのだから。
「目的はなんだ」
「目的?そんなのないよ。まぁ強いて言うなら」
男は俺に近づくと腰を屈めてクイッと顎を持ち上げた。
「君の目が好きだ。挑戦的で尊敬も畏怖の感情もない。人間を憎み嫌うその瞳がすごくいい」
「俺はお前が嫌いだ」
「ふっ、知ってるかい?獣人ってやつはね大抵、すべてを諦め怯えた目をしているんだ。生まれたときから自分たちは支配される側であると叩き込まれるからね」
王子は頬を赤らめうっとりと続けた。
「でも君は違う。だから、ねじ伏せて恐怖に歪んだ顔が見たい。すべてを諦めその瞳から色が抜け落ちる瞬間が見たいんだ」
「…」
こいつは俺が出会った中で一番美しく、そしてやばいやつだった。
逃げろと本能が告げている。でももう遅かった。彼は俺を軽々と担ぎ上げると、部屋の奥に向かう。
そしてベットに突き飛ばした。
「な、なんだよ…やめろっ」
そのまま上から乗り上げると俺の首を両手で締め上げる。
くそっ…息ができない…。
「…っ」
「どう?怖い?今から君は死ぬかもしれない」
「…っ」
酸欠のせいか視界が霞んできた。俺は最後の力をすべて込め、思い切り膝で男を蹴飛ばした。
ダンッ。
蹴りはみぞおちにうまく入り、王子はその瞬間両手を離した。
「かはっ、はぁ、はぁ、はぁ」
し、死ぬかと思った…。肩で息をしながら王子をにらみつける。
「いてて…ふ、ふふ。いいね。すごくいい…」
俺はベットから降り、壁に背を預けた。どうにかして逃げねぇと殺される…。ちらりと視線を送ると、王子は楽しげにクスクスと笑っていた。
そして
「拘束」
彼がそう呟くと、体から力が抜け落ちた。
199
お気に入りに追加
662
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?


モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?
いぶぷろふぇ
BL
ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。
ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?
頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!?
「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」
美形ヤンデレ攻め×平凡受け
※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです
※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる