【R18】【Bl】こいつは勇者なんかじゃない魔王だ 助けてください!サイコパス魔王なんて俺の手に追えません

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5 ドラゴン討伐

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その翌日俺たちは街の偉い人から突然声をかけられた。RPGゲームあるあるお使いクエストってやつだ。毎回思うけど勇者のこと便利屋だと思ってる人結構いるよな。
これは…確かドラゴン討伐のクエストだった気がする。



俺たちは大きなお屋敷へと招待された。そこは街の中でトップを争うぐらいに大きく立派な洋風の屋敷だった。
ひげを生やしぽっこりお腹の家主は俺たちを奥の部屋へと通す。女の子の部屋のようだ。

部屋の中央にあるフリル満載の立派なベッドでは、お人形のような金髪の少女が眠っていた。

「彼女は私の娘でミーリアと言うのですが難病にかかってしまいまして。数ヶ月このように寝たきりなのです」

ヒゲを生やした家主が悲しげに言う。

そう、彼女はどんな腕のたつ回復師ですら治すことのできない病なのだ。この病を治す方法は一つ、洞窟の奥深くに生息するホルンドラゴンの角を生贄にした魔術をかけるしかない。

ホルンドラゴンの角は希少価値が高くそこらの店では取扱ってすらいないのだ。
このクエストが受けられるようになるってことはパーティメンバーレベル50ぐらいなのだろうか。思ったよりゲームの進行スピードは早いようだ。

家主は家宝の杖と引き換えにドラゴンの討伐を依頼してきた。その杖は巷ではかなり有名なものらしく、魔法師はその話に食いついた。俺たちは洞窟へ向かうことにした。





洞窟は街からそれほど離れていない。
中はジメジメしていて暗かった。ところどころ宝石のような岩が壁から突き出ている。

勇者パーティは奥へ奥へと進んだ。先頭は勇者、続いて魔法師と回復師が、そして最後は荷物持ちの俺が歩いている。

平坦な道はやがて螺旋階段のような狭く下り坂へと変化した。
やばい足が痛くなってきた…。ゴツゴツした地面は歩くだけで体力を削られるようだ。
階段のない下り坂ってこんなにきついのか。
山の斜面を下るように慎重に歩いていたのでとても疲れた。

少し休もう。そう思って俺は壁に手をつく。壁は冷たく少しヌメッとしていた。

「ふぅ…」
勇者たちはもうかなり先に行ってしまっているようだ。急がないと。

ん?この壁なんかおかしいぞ。その時俺は壁の異変に気づいた。

なんかすごいグラグラする。何度か手で押してみるとそこだけ明らかに揺れていた。
これもしかして隠し通路なのでは?このゲームにはこういったショートカットの道が存在することがあった。俺はできるだけ力を込めて壁を押してみる。
すると
壁がズボッと抜けた。そのまま勢い余って壁の穴へと倒れこむ。

「うわっ!!」

穴に吸い込まれるように俺は落ちていった。

「ルフ?!」
少し遠くでタイガが俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。

壁の中は狭い穴になっていて下へ下へ伸びていてまるでプールのウォータースライダーのようだ。

俺はどんどん落ちていった。下へ行くに連れてビュンビュン加速する。
後ろで壁が塞がる音がした。

うわぁぁぁぁあ…っ
体のあちらこちらが壁に擦れて痛い。

しばらく滑っていると、真っ暗なトンネルの先に光が見えてきた。



「いてて…え、これって…!」









ズボッと落ちた先はなんと最終地点ドラゴンのいるエリアだった。

…。
やっぱりショートカットルートだったのか…。

壁穴から放り出された俺は地面にそのまま尻餅をつく。痛てて…。

そこは洞窟の一番奥で、広々とした空間になっていた。空間のど真ん中にはそれはそれはでっかいホルンドラゴンが佇んでいる。真っ白な体に青い瞳、そして大きな角が一本生えていることが特徴だ。

ドラゴンの座っている場所は天井がとても高く、空まで突き抜けていた。洞窟最深部なのに青空が見えるってやばいよな。
ゲームだとドラゴン倒したあとは空を飛ぶ魔法で帰れる仕様になっている。

天から降ってくる光がまるでスポットライトのようにドラゴンに注いでいる。

美しい。誰もがそう感想を述べるほどにドラゴンは美しかった。
ドラゴンは俺が落ちた音で目を覚ましたのか、青い瞳でさっきからこちらをじーっと見つめている。

俺は立ち上がる。その瞬間足に激痛が走った。どうやらトンネルを滑っているときに足をくじいたらしい。

「いてて…」

どうにか腰を上げると両手を上にあげた。

「えっと…俺は悪い者じゃなくて害を与えるつもりもなくて…その、角は貰おうとしてるんだけど武器はないから…」

どうにかして警戒心を解いてもらわなければそう思いゆっくり近づいた。

するとドラゴンはドスドスとこちらへ勢いよく歩いてくる。

「え」

そしてそのまま目の前まで来ると俺のリュクに噛み付いた。

「うわっ」
そのまま空中に宙ぶらりんにされ、ドラゴンが元いた位置まで連れて行かれる。

ドラゴンはまたドスっと座り込み、しっぽで俺を包むようにした。ドラゴンの体温は案外低いようだ。

えっと…。これはどういうことだ。
なんで俺ドラゴンに包まれてるんだろ。
どうすればいいのかわからなくて白い怪獣を見上げる。奴はゆっくりと目を閉じた。
お昼寝中なのかな。

その時だった。洞窟の更に奥からもっと大きいドラゴンが二体も出てきた。

「うわっ」

大きさからしてこいつはまだ子供だったようだ。
二体のドラゴンは子ドラゴンをちらりと見ると大きな雄叫びを上げ翼を広げた。とっさに俺は身構える。

しかし大人ドラゴンは天井からのぞく青空まで一気に飛び立っただけで俺に害は与えなかった。

当たり前だが、大きなドラゴンが狭い洞窟で羽ばたくと石やら塵やらがすごい勢いで飛んでくる。

でも子ドラゴンがしっぽで庇ってくれるおかげで俺は怪我を免れた。

「お前…かばってくれたのか」
小ドラゴンは青い瞳で俺を捉えるとスリスリと体を寄せてきた。
かわいい。優しく頬を撫でると目を細める。

ゲームのときは凶暴なドラゴンだったがこんなに大人しいなんて!
ドラゴンの意外な一面に感動した。

「ルフ!」
その時洞窟入口付近から皆がぞろぞろ入ってきた。

「皆…」

子ドラゴンはパーティメンバーに目をやると立ち上がった。そして、さっきの大人しさが嘘みたいに大きな雄叫びを上げ睨みつけた。

「きゃぁあっ」
びっくりした魔法師が勇者へ抱きつく。

勇者は大きく前へ一歩出ると背負っていた剣を引き抜いた。
タイガが軽く剣を振った瞬間ドラゴンの角がゴトリと地面に落ちる。

「あ…」
俺はとっさにドラゴンを振り返る。

「い、痛くないか…?」
見たところ痛がっているようには見えない。
ただ、ドラゴンは一瞬目を見開き、弱々しくその場に座った。

「ルフ、こっちに来てそいつ殺すから」
勇者が冷たい口調でこちらに呼びかける。
殺す…?

「だ、だめだ!こいつまだ子供で大人しいんだ」
俺は叫んだ。だめだ。止めないと。

「知ってるよ だから殺すんだ」
勇者は淡々と述べる。

「な、なにいって…」
魔王には慈悲の心はない。どうすればいい。この前の血まみれのゴロツキたちが頭をよぎる。
俺は足を軽く引きずりながらドラゴンの前へ出ると庇うように両手を広げた。

「もしかしてルフ怪我してるの?」
魔王は眉をひそめ一歩ずつ近づいてくる。
そして近くまで来ると俺をひょいと抱き上げた。

ドラゴンはその様子をじっと見ている。

「タイガだめだ!お願い 殺さないで!」

「でも僕らの目的はドラゴン討伐だよね?」

「だめだ!こいつはだめなんだ」
必死に説得する俺を彼は冷たい目で見つめると、座り込んだドラゴンを見上げた。

ドラゴンは一切抵抗しなかった。諦めたようにゆっくりと瞳を閉じる。

勇者はそのまま剣を振り上げた。




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