【R18】【Bl】こいつは勇者なんかじゃない魔王だ 助けてください!サイコパス魔王なんて俺の手に追えません

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4 お買い物

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ペット生活一週間目。もうヤダ逃げたい逃げたい逃げたい。

俺は本格的に脱走計画を立て始めた。
最近は逃げることしか考えていない。

数日に一回のペースで抱かれて腰が痛いし、常に気を張り詰めていなければならない。
だって名前を呼ばれたらダッシュで彼のもとへと行かなければならないから。

「ルフ」
やばい走らないと。俺はかけ足でご主人さまの元へ向かう。

現在は朝、街の宿屋の個室で朝食を取っているところだ。メンバー全員で小さな机を囲い、パンをかじっている。
俺は出発の荷物をまとめていたのだけれど椅子に座る魔王の元へと急いでかけよった。

「ルフ、このパン美味しいよ」
彼はそう言うと俺の口にパンを押し込んだ。確かに中にクリームが入っていてとても美味しい。

「クリームついてる」
タイガは俺の口元に手を伸ばすと頬についたクリームをすくい取りぺろりと舐めた。

横を見る。するとやはり回復師と魔法師は俺らを険しい顔で睨みつけていた。
ひぇっ。最近の一番の悩みはこれだ。タイガが俺を特別扱いするせいで女の子たちから反感をかっているのだ。

宿をとるときもルフと一緒がいいと俺の肩を抱き、俺にだけ服を自ら選び買い与える。違うんです。贔屓されてるんじゃなくてペットなんです…。
俺は完全に魔王のおもちゃとなっていた。

まぁ顔色を伺っていれば怒られることも痛いこともされないんだけど…。でも逆らうと大変だ。すぐに激しく犯される。

朝食を食べ終え、女の子たちが部屋へ戻るとタイガはお皿にミルクを注ぎ始めた。
そしてそれを床にコトンと置く。

「ルフ、ミルクだよ」
彼はどこから取り出したのか犬耳のカチューシャを俺につけそういった。
この扱いにももう慣れた。
俺は床に這いつくばいミルクを舐める。

彼はベッドの上で足を組みその様子を満足気に眺めた。

「おいで」
彼が両腕を広げ呼びつける。

「わん…」
俺はその胸に飛び込んだ。彼はしっかりと俺を受け止め、ワシャワシャと頭を撫でる。
しばらくされるがままになったあと俺はおそるおそる話を切り出した。

「あの…そろそろ買い物行ってもいいですか…?」
 
「買い物?」

「生活品が足りなくて」





俺は魔王から解放されると逃げるように街へ買い物へでかけた。
ふぅ、やっと休息が取れる。さっき荷物をまとめているときにいろいろ生活品が足りないことに気づいたんだ。

えっと。歯ブラシとあと紅茶と…買い物袋をぶら下げ、買い忘れはないかメモを確認しながら移動する。お世話係も結構忙しいのだ。雑用はすべて俺がしなければならないから。

ブツブツつぶやきながら石畳の街を歩いていると、いきなり前から誰かがぶつかってきた。

「いでっ」
肩を持っていかれるほどの勢いだ。
肩が痛い。顔をあげるとそこにはいかつい大男が二人俺のことを見下ろしていた。

「おいてめぇ何ぶつかってんだよ」
ぶつかってきたのはあんたらだろ。と言いたいが面倒なことに巻き込まれたくない。非力な俺では絶対に勝てない相手だ。先を急ごう。
無視して歩き出した俺の腕をゴロツキがつかむ。

「おい見ろよこいつ犬耳なんてつけてるぜ」
やばっ外し忘れてた。ずっとつけっぱなしだったのか…恥ずかしすぎる。
俺はとっさにカチューシャを外した。

「かわいいワンちゃんお散歩かい?」
そう言って俺を取り囲みゲラゲラ笑う。逃げられないどうしよう…。

「ちょっと俺たちに付き合ってよ」
するといきなり彼らは俺を羽交い締めにし暗い路地へ連れ込んだ。体格差がありすぎて軽々と運ばれてしまう。
これかなりやばいのでは…!

「ちょっと…やめろよ!」
どうしよう流石にガタイのいい男二人には勝てない。
暗く狭い路地はゴミやネズミの死骸が散乱しており、冷たく湿った空気が漂っていた。
男が俺のポケットに手を突っ込み財布を取り出す。

「お、案外金持ってんじゃねーか」

「かえせっ」

羽交い締めにされながらも暴れると、腹に思い切りパンチを打ち込まれた。
「カハッ」

痛みでめまいがする。

それでも負けずに俺は暴れまくった。
どうにかして抜け出さないと。

そんな俺をごろつきは容赦なく殴りつける。顔を、胸を、腹を、何度も殴られた。
殴られたとき口の中を切ったみたいでぶわっと血の味が広がる。


いつかの夜を思い出す。満月の夜タイガに殺されかけた日だ。
あの日に比べれば全然マシだ。こいつらからは殺気を感じない。
俺はゴロツキを睨みつけた。

「何だこいつ 兄ちゃん可愛い顔して度胸あるじゃねーか」 
殴っていた男は少し感心したように俺を見下す。

「そうだこいつ奴隷商に売り飛ばさねーか?」

「いいな 案外高く売れそうじゃねーか」
ゲラゲラ笑いながら大男は俺の顎を掴んだ。

その刹那、
顎を掴んでいた腕が弾け飛んだ。

「え」
目の前で真っ赤な血しぶきがあがる。
誰もこの状況を理解できていないようだった。


ザッと足音がして路地の入ってきた方角を振り返ると、黒髪のスラッとした男が立っている。

「ひっ」
彼の真っ赤な瞳はじっとこちらを捉えており、俺は思わず小さな悲鳴を上げた。

「いでぇぇぇいでぇよ!!!」
大男がうずくまる。

「うるさい」
魔王は再度片手で掴んだ剣を軽く振った。俺はギュッと目をつぶる。

バタンと人が倒れる音がして
次に目を開けたときには大男が二人地面に横たわっていた。

そして足元は血の海。

「ルフ」
背後にはいつの間にか魔王がいる。

「ひぇっ…」

「帰りが遅いから様子を見に来たんだ」

「あ、ありがと」

「心配したよ」
彼は俺をギュッと抱きしめた。
しかし彼の口調はとても心配しているようには聞こえない。

「逃げたのかと思って」
耳元に口を近づけると低い声でそう言った。

背筋に冷たいものが走る。

「に、逃げないっ逃げません!」

足元に散らばる血の水まりに目をやる。
一歩間違えれば俺もすぐにこうなってしまうのだ。怖すぎる。

魔王には慈悲の心がないのか。いつも殺すことに一切のためらいがない。

「ルフ震えてるけど寒い? 帰ろうか」
彼は俺の顔を覗き込むとそっと肩を抱いた。

なにが割のいいバイトだよ…。クソ危険じゃんもうやめたい。
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