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4 ワンコ後輩アルト

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 翌日目を覚ましたけど夢じゃなかった。お腹の数字は昨日の放課後で10たまった。

 上限がいくつなのかは忘れてしまったが最低でも100はあったと思う…。一日何回すればいいんだよぉ…。



 洗面台の鏡に映っているのは、眠そうな目をして歯を磨いている黒髪の男だった。それは正真正銘の僕だ。元の世界と一切見た目が変わっていない。ってことは異世界転移?なのかな。

 首には赤い跡が無数に散らばっている。それにしてもすごい跡だ。先生はヤンデレキャラだから独占欲が強い。彼のルートでストーリーを進めると最後は監禁されてしまうんだ。

 実はこのゲーム、出てくるキャラが全員曲者なんだよ。つまり、誰か一人のルートを選ぶと確実に帰れなくなる。
 監禁、嫉妬、束縛、主人公を離すまいと必死なキャラたちに絡め取られてしまう。

 目指すは友情エンド。みんなの好感度を上げながら誰とも付き合わない、適切な距離を保つあれだ。
 ハーレムってやつ?ラブコメの主人公みたいなポジションだ。

 そのためにも先生だけでなく他のキャラとも早く出会わなければならない。2、3人ぐらいキープしつつ仲良くなりすぎないのが友情エンドには必須だ。

 全員と体の関係があるのに誰とも付き合わないってすごいビッチだし最低だと思う。でもそれがご都合主義のエロゲーでは許されるんだ。安全に帰るためだ。しかたない。


 僕は制服に着替えると急いで家を出た。

 主人公が通うのは大学までエスカレート式の7年生の学園。僕は多分高等部3年だと思う。

 今日は最低でも一人攻略キャラクターに会えればいいかな。



 学校に到着すると下駄箱で自分の名前を探した。すると後ろから誰かが声をかけてくる。

「先輩!」

 振り返ると、そこにはもふもふのケモノ耳にしっぽの男子生徒が立っていた。彼はふわふわの茶髪に濃い茶色の瞳の、犬をモチーフにしたキャラだった。
 思い出した!こいつは1個年下の後輩!アルトだ。

「アルトおはよう」

「おはようございます!朝から先輩と出会えるなんて今日はラッキーだなぁ」

 挨拶をしただけなのに彼はニコニコと万遍の笑みを浮かべ、ふさふさの尻尾をブンブン振った。

 まさか早速攻略キャラに会えるなんて!まずは好感度の確認をしないと。
 僕はいきなり彼の手を取り指を絡めた。すると彼はひどく驚いた表情をする。

「え、先輩どうしたんですか…」

 動揺してる動揺してる。僕は上目遣いで彼を見上げた。

「僕もアルトと話せて幸せ!」

 ニコリと笑うと、彼は頬を赤く染めた。

「先輩なんか今日すごく可愛いです…どうしたんですか」
 アルトは手で口元を覆うと数歩後ろに下がる。

「アルトが大好きなだけ」
 直球でそう言ってみた。さぁどうだ…。

 すると、ごくりと彼の喉仏が上下してしばらく沈黙が訪れた。

「…」

「…俺もだい…すきです…」
 そしてとうとう俯いてしまった。耳まで真っ赤になっている。

 本当に主人公無双状態だ。主人公のどこにそんなに魅力があるのか謎だけど。
 もうどうでもいい。とにかく彼にもゲームクリアに協力してもらおう。

 僕は彼のネクタイを強引に引っ張り、口づけをした。
「好きってこういう意味だよ?わかってる?」

 どこかの先生とは違って奥手な彼はこのぐらいしないと気づいてくれないかもしれない。じーっと視線をあわせる。

「せ、先輩…罰ゲームとかでは…」

「ないよ」

 そのとき後ろから生徒たちの声がした。登校ラッシュの時間になったのだろう。

「返事は昼休み聞くね。B棟四階、屋上前の踊り場で待ってるから」
 僕はそれだけ言ってその場を後にした。

 ここはアルトが告白するイベントの場所だ。本来なら告白するのはもっと先、文化祭の後ぐらいだ。でも悠長に待ってられない。朝の反応を見る限り好感度は大丈夫だと思うんだよな…。






 昼休み、約束の場所にアルトはやってきた。ここは屋上へ出るためのドアの前。死角になっている踊り場だ。屋上へは鍵がかかっていて出れないようになっているから、そうそう人が来ることはない。

 彼は少しそわそわしながら話を切り出した。

「あの…実は俺も先輩のこと…ずっと大好きで…つ、付き合いたいと思ってました…」
 まんまるの瞳は少し潤んでいてもふもふの犬耳はぴくぴく動いている。緊張しているのか彼はギュッと服の裾を掴んでいた。

 一見純粋そうで付き合っても問題なさそうだけど実は彼は凄い腹黒キャラ。
 頷いたが最後、ガンガン外堀を埋められて逃げられなくなるのが落ちだ。最後は結婚して家に閉じ込められるエンドが待っている。

「んー?」
 僕は彼にぎゅと抱きつき耳元で囁いた。

「僕もアルトが大好き。だから…」

 そして耳にキスを落とす。

「付き合うよりさ、もっと気持ちいいことしよ?」

「へ?先輩?!」
 僕は告白を流して彼を誘った。
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