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1 ここは夢の中
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目が覚めるとそこは真っ白な部屋だった。家具もドアも窓もない正方形の真っ白な空間。
「何だここ」
起き上がってあたりを見回すが全くどこかわからない。その白い空間には一つだけキングのベッドが置いてあって僕はそこに寝ていた。
夢かな…。そう思った。
「双葉 茜」
誰かが僕の名前を呼ぶ。聞き覚えのある声だった。だって、低く透き通るようなこの声は間違いなく…。
顔をあげると僕が通うオータム魔法学園の生徒会長、桐谷 翔先輩がすぐ側にいた。
「え、桐谷生徒会長?!」
危ないとっさに大声を上げてしまった。彼は成績優秀、スポーツ万能、かっこよくて学園中の皆が憧れる生徒会長なんだ。
僕も、中等部の頃に貧血で倒れたところを親切にも保健室まで連れて行ってくれてから、ずっと彼のファンだ。
「あの…ここはどこですか…?」
僕は生徒会長が大好きだった。必要最低限のことしか話さない無口なところも目つきが悪いと言われることがある切れ長の目も、細身なのにしっかり筋肉がついている体も全部が好き。
こんなよくわからない場所でも彼といられるなら天国に思えてきた。
「ここは…おそらく夢なのかもしれないな」
会長は真っ白な天井を見ながらそう呟いた。
「夢…」
「だっておかしいだろ?ドアも窓もない空間に人が入れるわけない。お前はこの部屋に来た記憶があるか?」
「いえ…全く」
「なら夢だな」
夢…か。毎日会長のこと考えているから多分こんな夢を見たんだろう。
彼の様子がいつもより心做しかご機嫌そうなのも全部僕の妄想なら頷ける。
「そっか夢か…」
せっかく彼と一緒の部屋にいられるのにいつかは目が覚めてしまうのか。隣を見ると会長もまたベッドに仰向けに横たわっていた。
横顔も美しい。思わず見とれていると、会長はこちらをちらりと見た。
そしてニコリと微笑む。
「なーにみてんだ」
ドキッ。そ、それは反則…。夢が完全に僕を殺しにきている…。
その場にうずくまり悶えたい衝動をなんとか殺して彼の笑顔を目に焼き付けた。
会長と同じベッドで寝れる。こんなの夢でしか味わえない非現実的なことだ。
彼はゆっくりと目を閉じた。まつ毛長い…。
会長と一緒に添い寝…それだけでも幸せだけど、でもなんか勿体ない気がする。
こんな素敵な夢を見れる機会なんて今後ないかもしれない。
そう思ったら自然と僕の手は彼の髪に触れていた。
桐谷先輩の髪は真っ黒でストレートでサラサラしていた。うわぁ…。
「双葉?」
会長。会長…。
次は頬に触れた。毛穴一つない肌は美しくて人形のようだった。
唇は…柔らかい。
「おい」
会長がふと、体をこちらに倒して僕の頬に手を添えた。ベットで二人、向き合うようにして寝そべる。
ち、近い…。
彼は色白で長い指を使って、僕の輪郭をなぞった。頬から顎…顎から耳元に。
くすぐったくて片目を瞑るとクスクスと笑われた。
「会長…?」
「お前も触っただろ?だからお返し」
カップルのようなやり取りに思わず頬が熱くなる。
真っ赤に染まった顔を見られたくなくて僕はベットにうつ伏せになった。
「双葉?どうかしたか?」
「い、いえ!」
やばいやばい早くおさまれ…。
すると会長は僕の耳を引っ張った。
「真っ赤だ」
「…っ」
「は、恥ずかしくて…」
だって憧れの会長がこんなにそばに…。夢だとしても恥ずかしくて仕方ない。
そう伝えると彼はくすくす笑った。
「なんだそれ…可愛すぎるな」
か、かわいい?!
「俺もこうしてお前が近くにいるだけですごいドキドキする」
「え」
「双葉」
会長は僕の上に覆いかぶさって、耳元で囁いた。
「好きだ」
その低い声で囁かれると腰にくる。
え…?今好きって…。夢にしても都合良すぎないだろうか。
びっくりして顔を横に向けると、思ったよりも彼の瞳が近くにあって驚いた。キスできそうな距離に美しい顔がある。
「わっ」
「お前は俺のこと嫌いか…?」
嫌い…?むしろ
「…すき」
思わず本音が漏れてしまった。
すると彼は心底嬉しそうに微笑む。
「なら両思いだ」
「か、会長…」
「翔でいい。双葉のことも茜って呼んでいいか?」
「え、いやどうぞお好きに呼んください!」
翔…。両思い…?幸せすぎて頭がくらくらしてきた。
「茜」
「か、翔…?」
「んー?」
「…っ」
夢なら覚めないでほしい。もう二度と覚めなくていい。
「茜、キスしてもいいか?」
「何だここ」
起き上がってあたりを見回すが全くどこかわからない。その白い空間には一つだけキングのベッドが置いてあって僕はそこに寝ていた。
夢かな…。そう思った。
「双葉 茜」
誰かが僕の名前を呼ぶ。聞き覚えのある声だった。だって、低く透き通るようなこの声は間違いなく…。
顔をあげると僕が通うオータム魔法学園の生徒会長、桐谷 翔先輩がすぐ側にいた。
「え、桐谷生徒会長?!」
危ないとっさに大声を上げてしまった。彼は成績優秀、スポーツ万能、かっこよくて学園中の皆が憧れる生徒会長なんだ。
僕も、中等部の頃に貧血で倒れたところを親切にも保健室まで連れて行ってくれてから、ずっと彼のファンだ。
「あの…ここはどこですか…?」
僕は生徒会長が大好きだった。必要最低限のことしか話さない無口なところも目つきが悪いと言われることがある切れ長の目も、細身なのにしっかり筋肉がついている体も全部が好き。
こんなよくわからない場所でも彼といられるなら天国に思えてきた。
「ここは…おそらく夢なのかもしれないな」
会長は真っ白な天井を見ながらそう呟いた。
「夢…」
「だっておかしいだろ?ドアも窓もない空間に人が入れるわけない。お前はこの部屋に来た記憶があるか?」
「いえ…全く」
「なら夢だな」
夢…か。毎日会長のこと考えているから多分こんな夢を見たんだろう。
彼の様子がいつもより心做しかご機嫌そうなのも全部僕の妄想なら頷ける。
「そっか夢か…」
せっかく彼と一緒の部屋にいられるのにいつかは目が覚めてしまうのか。隣を見ると会長もまたベッドに仰向けに横たわっていた。
横顔も美しい。思わず見とれていると、会長はこちらをちらりと見た。
そしてニコリと微笑む。
「なーにみてんだ」
ドキッ。そ、それは反則…。夢が完全に僕を殺しにきている…。
その場にうずくまり悶えたい衝動をなんとか殺して彼の笑顔を目に焼き付けた。
会長と同じベッドで寝れる。こんなの夢でしか味わえない非現実的なことだ。
彼はゆっくりと目を閉じた。まつ毛長い…。
会長と一緒に添い寝…それだけでも幸せだけど、でもなんか勿体ない気がする。
こんな素敵な夢を見れる機会なんて今後ないかもしれない。
そう思ったら自然と僕の手は彼の髪に触れていた。
桐谷先輩の髪は真っ黒でストレートでサラサラしていた。うわぁ…。
「双葉?」
会長。会長…。
次は頬に触れた。毛穴一つない肌は美しくて人形のようだった。
唇は…柔らかい。
「おい」
会長がふと、体をこちらに倒して僕の頬に手を添えた。ベットで二人、向き合うようにして寝そべる。
ち、近い…。
彼は色白で長い指を使って、僕の輪郭をなぞった。頬から顎…顎から耳元に。
くすぐったくて片目を瞑るとクスクスと笑われた。
「会長…?」
「お前も触っただろ?だからお返し」
カップルのようなやり取りに思わず頬が熱くなる。
真っ赤に染まった顔を見られたくなくて僕はベットにうつ伏せになった。
「双葉?どうかしたか?」
「い、いえ!」
やばいやばい早くおさまれ…。
すると会長は僕の耳を引っ張った。
「真っ赤だ」
「…っ」
「は、恥ずかしくて…」
だって憧れの会長がこんなにそばに…。夢だとしても恥ずかしくて仕方ない。
そう伝えると彼はくすくす笑った。
「なんだそれ…可愛すぎるな」
か、かわいい?!
「俺もこうしてお前が近くにいるだけですごいドキドキする」
「え」
「双葉」
会長は僕の上に覆いかぶさって、耳元で囁いた。
「好きだ」
その低い声で囁かれると腰にくる。
え…?今好きって…。夢にしても都合良すぎないだろうか。
びっくりして顔を横に向けると、思ったよりも彼の瞳が近くにあって驚いた。キスできそうな距離に美しい顔がある。
「わっ」
「お前は俺のこと嫌いか…?」
嫌い…?むしろ
「…すき」
思わず本音が漏れてしまった。
すると彼は心底嬉しそうに微笑む。
「なら両思いだ」
「か、会長…」
「翔でいい。双葉のことも茜って呼んでいいか?」
「え、いやどうぞお好きに呼んください!」
翔…。両思い…?幸せすぎて頭がくらくらしてきた。
「茜」
「か、翔…?」
「んー?」
「…っ」
夢なら覚めないでほしい。もう二度と覚めなくていい。
「茜、キスしてもいいか?」
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