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智紀

愛される才能

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ヴァルラムも、酒の力を借りてイタズラするのはよくない、という当たり前の事実に、さすがに気が付いたらしく。
昨夜は僕に酒を飲ませず、夜這いに行ったという。

抵抗もされず、自分だと認識しているようなのに、普通に受け入れられたので嬉しかったそうだ。


そうか。
ここは、酒を使って寝ている人間にイタズラするのはアウトで、夜這いはセーフ、という謎な倫理観の国なのか……。

王様だから、俺様がルールでも仕方ないのかもしれない。


「今まで、夢だと思ってた……」
「寝ている振りでもしているのかと思ったが。……それでは、私に触れられても嫌ではなかった、ということだな?」

てっきり千手観音とナメクジの夢だと思っていました、とは言えない。


まあ、気持ち良かったのと、嫌でなかったのは確かなので。
こくりと頷いてみせた。

「……ああ、愛しい智紀、」
嬉しそうに抱きつかれて、頬ずりされる。

愛情表現が激しいが。
まるで、大きな犬が懐いてきてるようなので、不思議と不快感はなかった。


*****


考えてみれば。

自分が死んで、魂だけ異世界に召喚されたなんて言われて。
あなたは今から我々の聖神です。精神が荒れると世界が危ないので心安らかに過ごしてください、とかいう無茶振りをされても。
この世界の人間が、普通の人間ではなく獣人だったことを目の当たりにしても。
それほどショックではなかったような気がする。

普通、あなたは死にました、もう二度と元の世界には戻れません、などと言われたら、大変なショックを受けるものではなかろうか?
効果に雷トーンを使う感じの。


現実離れした容姿のコスプレイケメン達に囲まれて。
まるで夢の中にいるような、この実感のなさが理由だろうか?

しかし、〆切に追われず、身体も若返ったのでどこもしんどくなくて。
税金とか将来の不安とかも考えなくていい、好きな時に眠れてご飯も美味しい。

そんな天国みたいな環境で、文句の出よう筈がない。


もし僕がもっと若かったとしたら、それなりにショックだったかもしれない。
親しい人もいない、もう残りの人生を諦めたような中年だったから、特に元の世界に未練も無いのであった。

唯一、どうしてエッチな夢を見てしまうのだろうか、ということだけが難点だったような気がする。


エッチな夢の犯人はもうわかったし。
僕にエッチな妄想癖があった訳ではなく、現実だったので。

ヴァルラムに対して、もう罪悪感を覚えなくてもいいのである。
めでたしめでたし。


……我ながら、それはどうなのかと思うが。

こうしてヴァルラムの腕の中に納まっていても、嫌だとも気持ち悪いとも思えないので、セーフなのではなかろうか。

きっと、知らない内にヴァルラムに一目惚れでもしていたのだろう。
そういうことにしておこう。

世の中、平和が一番である。


*****


僕は元々、女性に奉仕するより、受身になるほうが向いている性質だったのかもしれない。

腕立て伏せもできないようなヘタレでは、相手を満足させることなど不可能だろう。
腰を振るのも大変そうだ。

腕枕は、手が痺れそうなのでしたくないが。される側なら問題ない。

……こんな情けない男が、女性にもてる筈もなかった。
もてたいとも思わなかったのだが。


勝手に犯された、いわば被害者である僕が言うのもどうかと思うが。
僕を選んだヴァルラムは、はっきり言って、趣味が悪いのではないか?

あれか。とんでもない美女がブサイクな男、イケメンがブサイクな女を選ぶのもよくある話で。
美形は、顔で人を選ばないのかもしれない。

外国人には日本人は全員ベビーフェイスに見えるというし。
庇護欲とか、そんな感じでも抱いているのだろう。レナートもそうだったし。


しかし。
出逢ってすぐに恋に落ちて結婚して。

共に行動することで相手の粗が見えて幻滅しても、人間なら成田離婚とか、紙一枚で済む話だが。

狼族は生涯一人だけなのに。
こんなに簡単に伴侶を決めてしまって大丈夫なのだろうか?

相手の欠点を知って、結婚してしまったことを後悔しても、別れられないのでは?


*****


「……ひゃっ!?」
完全に油断していたところに、指が入ってきた。

「そのように、愛らしく私を見るものではない。めちゃくちゃにしたくなるではないか」

どうやら、僕はぼーっとヴェルラムの顔を眺めてたようだ。
だって、見てて飽きないし。


ヴァルラムの瞳が、ギラギラと輝きを増して、股間のご立派なお宝が大変なことになっている。
ただ見ていただけで、そんなに興奮するのか。

すぐ獣化しそうになってしまうレナートといい、獣人の心理は、いまいち理解できない。


……改めてじっくり見てみれば、かなり大きい。

こんなのが、僕の中に入ったというのか。
不思議だ。これが人体の神秘というやつだろうか。

平均的な直腸の長さが20cmくらいだとしても、突き破りそう……。


「怯えなくて良い。無理には挿れぬ。獣のやり方がよいか? 人のやり方か? そなたの好きなほうを選ぶがよい」
中に入れた指を、ずぽずぽと抜き差ししながら問われる。

獣? 人? また、何のなぞなぞだ。


「私は上に乗せるのも悦かったが。あれはそなたの身体がきつそうだった。もう少し慣れるまではやめておこう」

ああ、体位の話か。
そちらの世界の符丁で話されても困るんだが。


いや、突然発情されて、いきなりどの体位で犯されたいか、などと訊かれても。
真面目に困るんだが。

しかし、今更やめて欲しいとは言えない雰囲気である。


僕の身体は、ヴァルラムにすっかり慣らされてしまったのだ。


*****


「は、ぁう、」

ヴァルラムの肩にしがみついて。
腕に股間を擦り付けてしまう。

「ふふ、……反応があるのはよいことだ。ここも、可愛がって欲しいのか?」
性器を掴まれて。


ああ、もう。
いい加減、やっちゃってくれないか。

しかし、自分から入れて欲しいと言うのは、何だか癪である。
あからさまに言わせようとしているのがちょっとな。
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