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智紀
妄想と現実
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性的な衝動はわかないし、そういった自覚もないが。相当溜まっているのかもしれない。
一応、抜いておくべきだろう。
これ以上、おかしな夢を見てしまうと、ヴァルラムの顔をまともに見られなくなる。
いや、今までも眩しすぎて直視はできていないのだけれども。
股間に手を伸ばして。
萎えている性器を掴む。……全くやる気を見せない状態である。
身体は十代に若返ってるというのに、枯れすぎではなかろうか。
「……ん、」
乳首を自分で弄ってみると。
何かいけそうな気がしてきた。
よし。
*****
「ん、」
お湯の中で、自慰をする。
なかなかいけないので。
何か、オカズになりそうなものは、と妄想してみる。
おっぱいの大きな女の子。……駄目だ。怖くて萎える。
ちっぱいもいけない。
幼女から熟女、どれを妄想しても、全くぴんとこない。
そもそも女体で自家発電したことがあっただろうか。無かった。
……こうなったら、仕方ない。
男に行くしかないのか。ものは試しだ。
マッチョな男……。駄目だ、気持ち悪くて萎える。
あの人達、いつも肌がテカテカしてるのは何故だろう。油でも塗っているのか?
細いのも、太いのも駄目。
毛深いのとか、もはや論外である。ぞわっとする。
僕はこんなにストライクゾーンの狭い人間だったのか。
死して新たな発見をしたものだ。
しかし、ゲイの人だって、男なら誰でもいいという訳ではないだろう。
相手に好意が無いと駄目なのかもしれない。
……じゃあ、ヴァルラムは?
「はぅ、」
何故か、背筋がぞくぞくした。
気持ち悪いのではなく。
マジか。嘘だろう?
しおしおだったのが、元気になってきてしまったではないか。
ヴァルラムに、挿れたいんじゃなくて。
むしろ、触って欲しい?
何で。
妄想の中で。
あの口が、身体に触れて。
大きな手が、僕の股間に触れるのを想像して。
*****
……気持ちよかった。
しかし、実在の人物で自家発電をすると罪悪感が半端ない、ということを知った。
ご利用は計画的に。
その上、弊害もあった。
夢は夢、現実は現実、と割り切ろうと思っても。
ヴァルラムの姿を見ると、つい身体が逃げてしまうのである。
咄嗟にレナートの後ろに隠れたら、腕から赤茶色の毛がわさわさ生えだしたので慌てて離れたり。
庇護欲を感じるとつい変身してしまうとか、子供とか生まれたら大変そうだな。
大きな熊は、目隠しにはいいかもしれないが。
本人が獣性を抑えられないのを恥ずかしく思っているそうなので、盾にするのは申し訳ない。
困ったことに。
僕がヴァルラムから逃げていることを、早速本人に気付かれてしまったようである。
ヴァルラムは、あえて寄ってくるようなことはなく。
怪訝そうな顔をして距離を置き、こちらの様子を伺っている。
あからさまに避けすぎたか。
しかし、スマートに避けるような対人テクニックを身に着けているようなら、43歳まで童貞、という悲しい人生は送っていないのである。
皆も、何かを察したらしい。
レナートとパーヴェルがヴァルラムの足止めをしてくれている間に、ユリアーンとイリヤに詰め寄られた。
「王の姿を二度と見たくない、というのなら、神殿内出入り禁止にしましょうか?」
イリヤが満面の笑顔で訊いてきた。
何故嬉しそうなのか。
それは私のセリフではないのか、とユリアーンが柳眉を寄せ、困惑している。
神殿の責任者はユリアーンである。
「残念ながら、王を神殿内出入り禁止にするのは役目上難しく。しかし、心配ご無用。この”繭”に、王の出入りを禁ず、と命じれば魔法の防護膜が発生し、近寄れなくなるので」
ユリアーンは、僕が寝泊りしている部屋を示して言った。
このドーム型の部屋、”繭”は僕専用なので、自由にできるという。
そんな便利機能もあったのか。
いったい、どういった仕組みなのだろうか?
思わず部屋を見回していたら。
「むしろ、面と向かって大嫌いだと言って差し上げれば、さすがの王も己を恥じて近寄って来なくなるかと思いますが」
「そうそう。ガツンと言ってやればよろしい」
イリヤとユリアーンは、王を呼ぶから、今すぐ引導を渡してやれ、などと言い出した。
*****
「え、いや、そういうのと違、」
決して、大嫌いなので避けている訳ではない、と。
必死に弁解した。
しかし、オカズに使ってしまって気まずい、などという恥ずかしい理由は死んでも言えない。
一度死んでいるが。それとはまた別の話である。
なので、何となく、逃げてしまったのだと言い訳をした。
イリヤは何故か、残念そうだった。
「何もないのに避けてしまったのですか? 避けられるとつい追いたくなってしまう獣の狩猟本能を刺激したいので?」
ひいぃ。
なんて恐ろしい世界なんだ。
「そんな駆け引きをしなくとも、王は智紀様にとうにмурлыкатьでしょうに」
ユリアーンは不思議そうに首を傾げている。
ムリュカーチとは。何だろう?
「王はヴォルクですし、ムリュカーチではなくгав гавではありませんか?」
イリアが言った。
ガフガフ? とういうのもまた意味不明である。
どうやら獣人あるあるらしいが。
元の世界にない言葉は、翻訳されずにそのまま聞こえるようだ。
どんな意味だろう、と考えていたら。
ユリアーンは、以前僕に背中に乗ってもらったときにムリュカーチになった、と言う。
ああ、ムリュカーチって、猫がゴロゴロ喉を鳴らすことだったのか。
真顔で何を言っているのかと思ったら。
そういえば、二人とも猫族だったか。ライオンと豹。
猫じゃらしとかを振ったら、釣られてじゃれつくのだろうか。
猛獣相手にそんなことをする勇気はないが。
興奮して猫パンチを食らったら、サイズは猫じゃないので死ぬ。
……つまり。
ヴァルラムは僕に懐いてると?
最初から親しげに寄ってきていたような気がするが。
あれは彼の通常の態度ではなかったのか。
狼だから、人懐こい犬とは違って孤高の存在だったりするのだろうか?
一応、抜いておくべきだろう。
これ以上、おかしな夢を見てしまうと、ヴァルラムの顔をまともに見られなくなる。
いや、今までも眩しすぎて直視はできていないのだけれども。
股間に手を伸ばして。
萎えている性器を掴む。……全くやる気を見せない状態である。
身体は十代に若返ってるというのに、枯れすぎではなかろうか。
「……ん、」
乳首を自分で弄ってみると。
何かいけそうな気がしてきた。
よし。
*****
「ん、」
お湯の中で、自慰をする。
なかなかいけないので。
何か、オカズになりそうなものは、と妄想してみる。
おっぱいの大きな女の子。……駄目だ。怖くて萎える。
ちっぱいもいけない。
幼女から熟女、どれを妄想しても、全くぴんとこない。
そもそも女体で自家発電したことがあっただろうか。無かった。
……こうなったら、仕方ない。
男に行くしかないのか。ものは試しだ。
マッチョな男……。駄目だ、気持ち悪くて萎える。
あの人達、いつも肌がテカテカしてるのは何故だろう。油でも塗っているのか?
細いのも、太いのも駄目。
毛深いのとか、もはや論外である。ぞわっとする。
僕はこんなにストライクゾーンの狭い人間だったのか。
死して新たな発見をしたものだ。
しかし、ゲイの人だって、男なら誰でもいいという訳ではないだろう。
相手に好意が無いと駄目なのかもしれない。
……じゃあ、ヴァルラムは?
「はぅ、」
何故か、背筋がぞくぞくした。
気持ち悪いのではなく。
マジか。嘘だろう?
しおしおだったのが、元気になってきてしまったではないか。
ヴァルラムに、挿れたいんじゃなくて。
むしろ、触って欲しい?
何で。
妄想の中で。
あの口が、身体に触れて。
大きな手が、僕の股間に触れるのを想像して。
*****
……気持ちよかった。
しかし、実在の人物で自家発電をすると罪悪感が半端ない、ということを知った。
ご利用は計画的に。
その上、弊害もあった。
夢は夢、現実は現実、と割り切ろうと思っても。
ヴァルラムの姿を見ると、つい身体が逃げてしまうのである。
咄嗟にレナートの後ろに隠れたら、腕から赤茶色の毛がわさわさ生えだしたので慌てて離れたり。
庇護欲を感じるとつい変身してしまうとか、子供とか生まれたら大変そうだな。
大きな熊は、目隠しにはいいかもしれないが。
本人が獣性を抑えられないのを恥ずかしく思っているそうなので、盾にするのは申し訳ない。
困ったことに。
僕がヴァルラムから逃げていることを、早速本人に気付かれてしまったようである。
ヴァルラムは、あえて寄ってくるようなことはなく。
怪訝そうな顔をして距離を置き、こちらの様子を伺っている。
あからさまに避けすぎたか。
しかし、スマートに避けるような対人テクニックを身に着けているようなら、43歳まで童貞、という悲しい人生は送っていないのである。
皆も、何かを察したらしい。
レナートとパーヴェルがヴァルラムの足止めをしてくれている間に、ユリアーンとイリヤに詰め寄られた。
「王の姿を二度と見たくない、というのなら、神殿内出入り禁止にしましょうか?」
イリヤが満面の笑顔で訊いてきた。
何故嬉しそうなのか。
それは私のセリフではないのか、とユリアーンが柳眉を寄せ、困惑している。
神殿の責任者はユリアーンである。
「残念ながら、王を神殿内出入り禁止にするのは役目上難しく。しかし、心配ご無用。この”繭”に、王の出入りを禁ず、と命じれば魔法の防護膜が発生し、近寄れなくなるので」
ユリアーンは、僕が寝泊りしている部屋を示して言った。
このドーム型の部屋、”繭”は僕専用なので、自由にできるという。
そんな便利機能もあったのか。
いったい、どういった仕組みなのだろうか?
思わず部屋を見回していたら。
「むしろ、面と向かって大嫌いだと言って差し上げれば、さすがの王も己を恥じて近寄って来なくなるかと思いますが」
「そうそう。ガツンと言ってやればよろしい」
イリヤとユリアーンは、王を呼ぶから、今すぐ引導を渡してやれ、などと言い出した。
*****
「え、いや、そういうのと違、」
決して、大嫌いなので避けている訳ではない、と。
必死に弁解した。
しかし、オカズに使ってしまって気まずい、などという恥ずかしい理由は死んでも言えない。
一度死んでいるが。それとはまた別の話である。
なので、何となく、逃げてしまったのだと言い訳をした。
イリヤは何故か、残念そうだった。
「何もないのに避けてしまったのですか? 避けられるとつい追いたくなってしまう獣の狩猟本能を刺激したいので?」
ひいぃ。
なんて恐ろしい世界なんだ。
「そんな駆け引きをしなくとも、王は智紀様にとうにмурлыкатьでしょうに」
ユリアーンは不思議そうに首を傾げている。
ムリュカーチとは。何だろう?
「王はヴォルクですし、ムリュカーチではなくгав гавではありませんか?」
イリアが言った。
ガフガフ? とういうのもまた意味不明である。
どうやら獣人あるあるらしいが。
元の世界にない言葉は、翻訳されずにそのまま聞こえるようだ。
どんな意味だろう、と考えていたら。
ユリアーンは、以前僕に背中に乗ってもらったときにムリュカーチになった、と言う。
ああ、ムリュカーチって、猫がゴロゴロ喉を鳴らすことだったのか。
真顔で何を言っているのかと思ったら。
そういえば、二人とも猫族だったか。ライオンと豹。
猫じゃらしとかを振ったら、釣られてじゃれつくのだろうか。
猛獣相手にそんなことをする勇気はないが。
興奮して猫パンチを食らったら、サイズは猫じゃないので死ぬ。
……つまり。
ヴァルラムは僕に懐いてると?
最初から親しげに寄ってきていたような気がするが。
あれは彼の通常の態度ではなかったのか。
狼だから、人懐こい犬とは違って孤高の存在だったりするのだろうか?
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