魔王転生~勇者と魔族と人間と神、男の精気でレベルアップ!?

篠崎笙

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エンディング/BADEND

再び、ゼロの世界・Ⅰ

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人間界の四王と、中央教会の教皇の精を得る、というめちゃくちゃ困難なミッションをコンプリートして。

晴れて魔族に成ったリオンを抱き締めて、俺は魔王城へ飛んだ。
……はずだ。それなのに。





何故か俺の身体は、大魔神の腕の中にすっぽりと収まっていて。
何で俺は、ここに。


まだ、”ゼロの空間”に、いるんだ?


†††


周囲は真っ暗だ。

スポットライトを浴びたような空間に、大きなベッドがあって。
そこに座っている大魔神の腕の中に、俺がいる。


視界に入る、白い、二の腕まである長い手袋。
細かいレースがふんだんに使われた、これは。……ドレス、だよな?

俺は何故か、真っ白い、ウエディングドレスを着せられてるようだ。

いつの間に、着替えさせられたんだ?

大魔神はタキシード姿だ。
それは最初に会ったときと同じ格好だが。まるで、をしているような印象を抱いた。


大魔神は、意外に優しい手つきで俺の頬を撫でた。
「安心していいよ? リオン君はちゃんと、”魔王ユウキ”と一緒に、魔界に戻ってるから」

「……でも。は。ここに」


ここに……いるよな?
あれ? 魔王ユウキと、って。

だったんじゃねえの?


「ほら、ご覧」
大魔神が空中に手をかざすと。

そこに、画面が現れた。


魔王城が映し出されている。
そこには、誰かを抱いて、何か叫んでいるリオンの姿があった。

リオン……だよな? なんか髪が、黒くなってるけど。目まで黒くなると、かなり印象が変わるもんだな。

……え?
あっちにも、俺?


リオンの腕の中には、がいた。


†††


「彼のレベルは今、9999。君の持っていた経験値が、全てリオン君に与えられたかたちになってるんだ。……かわりに、あっちの君のレベルはゼロ。HPもMPも、ゼロになっちゃったけどね」

……何言ってんだ?
ゼロは、あんたの名前だろ?

鋭い、犬歯のような牙が見える。
魔神は、楽しそうに、愉しそうに。笑っている。


「リオン君には、魔王ユウキは、人間界から精気を奪い、それをたっぷり注いでやれば復活するかもね、ってメールを送っておいてあげたよ。僅かでも希望を与えてあげないと、生きる気力なくしちゃうでしょ? あの子」

何のために、そんなことを。
人間界から精気を奪え、なんて。


……そうだ。
は。こいつはなんだ。

善の神から、悪意を切り離した。悪意だけの塊。
そういう存在で。


「優しい魔王、ユウキ君と違って。彼なら、一切の躊躇無く、奪えるだろうね。……が愛し、育む生命の全てを」


そうだ。
リオンは、何でもやるだろう。

俺のためなら、魔族にも成る、とまで言った男だ。


†††


俺は。
選択を、間違ったのか?

俺が魔王らしく、しなかったから?


大魔神は、いかにも心外だ、というような顔をした。
「違うよ。君は別に、ルートを間違えたわけじゃない。別に、そういう魔王がいてもいいんじゃない? 最初に言ったじゃないか。『ブラック企業じゃあるまいし、ノルマなんて存在しない。好きなように生きたまえ』ってさ」

……じゃあ、なんで?

大魔神の唇が、弧を描いた。
何で、そんな風に。愉しそうに、笑えるんだ?


「正直言ってさあ。惜しくなっちゃったんだよね。あいつの世界の人間なんかに、わたしの可愛いコレキヨ君をあげてしまうのが」


だって? ……元々お前のモンじゃねえっての。
俺は俺だ。


「いいや、君はわたしのものだよ? だって、わたしがこうして君を蘇生させてやらなければ、今、君はここにいないし。リオン君にも出逢えなかったんだからね?」
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