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魔王への試練

勇者と魔王の密談

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「……他に質問は?」
四大公を見回す。


『東は賛成にございます。元々、私どもの領地は人間界の商人との取引も好調で、向こうから精気を提供してくるほどですので、さしてこちらに損はございませんゆえ』

「うん、この間はスパイスをありがとう」
『恐悦至極』
ガルムは恭しく礼をした。


『無論、南も賛成です。……血の海と人骨の砂浜は当代魔王様のご趣味ではないご様子ですので。改装させましょう。その際は是非お立ち寄り下さい』

「うん、頼む。リゾート地っぽいのがいいな」
『御心のままに』
『残虐大公の名も返上ですな』
ドラクにからかわれ、リンゼは豪快に笑った。


『こちらは性質上ちと厳しいですが。西も賛成致します。……望むものを眷属にすることは?』

「赦す。その際、魅了は使うな。あくまでも自由意志を尊重するように」
『はっ、』
バルトも腰を折った。


『拙は多数の同族を失いましたが、……魔王様の御為ならば、何もかも受け入れましょう』

「すまない、耐えてくれて。恩にきるぞ、ドラク」
『身に余る光栄です』
ドラクも頭を下げた。


†††


「では、俺は人間界の国王ら、教皇と取引してこよう。お前たちは吉報を待て」
全員、跪いた。

話し合いは無事終わり、議会は解散だ。
次は、計画の実行だ。


ドラクと共に、北へ向かった。

『お疲れではないのですか? 少々ご休息を取られては?』
「精気は充分だ。北の勇者からたっぷり補給した」

ドラクは目を瞠った。
『おお……さすがは魔王様……! あの勇者を篭絡されましたか!』

「んー、交渉が終わったら、魔界につれてくるから紹介する」
篭絡したというか。されたっていうか。


『無事のお帰り、お待ちしております』
ドラクは恭しく礼をした。

皆から見送られ。
それに鷹揚に手を振って、北の通路へ向かった。


†††


北の町リンデンに着いた。
ナイはもう辞めたようで、居なかったが。

リオンは宿屋で待っていた。リオンの馬が、宿屋の厩で草を食んでいた。

宿屋の周囲にあれほどたむろしていたゴロツキが消えてたのは、リオンが追っ払ったのか?
さすがだ。


「どうぞ、ごゆっくり!」

リオンの連れだと言ったら。宿屋のおかみが、上機嫌で一番良い部屋に案内してくれた。
ゴロツキを追っ払っただけでなく、随分と前金を弾んだようである。


部屋に入って、姿替えの術を解き。
リオンに魔界での会議の内容を話すと。リオンは、きらりと目を光らせた。

「なるほど。ゆくゆくは経済的にも人間界を乗っ取り、世界征服を狙う計画か……」


「ちーがーうー! 平和的に解決してえんだよ!」
もう、リオンの方が魔王向いてんじゃね? 経済的に乗っ取るとか、そんなの考えもしなかったっつーの。

リオンは、微妙な微笑みを浮かべて。
「ならば、やはり最初の交渉相手は、北の国王シロエが向いていると思う。……あれは平和主義者な、甘い男だからな」

……あれ? 何だよその、奥歯に物が挟まったような言い方。
もしかして。

「……知り合い?」

「ああ、幼馴染だ。あいつが王になる前は、町で育ったのでな。騎士団に誘われたが。断って、勇者になった」
リオンは頷いた。

へえ、王国騎士団か。


†††


「でも、鎧は王様から貰ったんだな。”聖騎士の鎧”レベル10かー」

騎士っぽい鎧だと思ってたら、本物の騎士の鎧だった。マントもそうだ。”聖騎士のマント”って表示されてる。
剣は……うわぁ、”聖騎士の剣”だったのが呪われて、”血塗られた魔剣”になってるんだけど……。

魔族の血を吸いすぎて、呪われたアイテムになるとか。どれだけ殺したんだ? こわっ。


「おや、君は鑑定のスキルも持っていたのかい?」
リオンは首を傾げた。

へえ、スキルにも鑑定ってあるんだ。俺には必要ないけど。

「いや、ステータスを見ただけだ」

「……ステータス?」
リオンは不思議そうに、眉根を寄せた。


……え?
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